メリークリスマス!!


















「それでは、これより大かくれんぼ大会を始める!!!」



高らかに響いた仙蔵の声に、ごくりと咽喉を鳴らして意気込む気持ちを何とか抑え込んだものが数名。
その中でも、うっすらと顔を青ざめさせてぎゅっと自分の袴を掴んだは、皆の前に仙蔵と共に立っていた。少しの緊張と、覚悟を決めた瞳が目の前に立ちはだかる者どもをしっかり捉えていた。



「では、ここにいる者が鬼だ。そして、が隠れる」



無言のまま、皆が頷く。


「では、皆が五十数える間には好きなように隠れてくれ」
「う、ん」


目を細めた仙蔵はの方を向いたまま鋭い声を発した。


「食満!!!貴様、そのわきに抱えているのは何だ」
「!!!!」


食満はしっかりとしんべヱを小脇に抱えていた。
無邪気にしんべヱは笑っているが、抱えている方の食満は顔をひきつらせていた。


「しんべヱ、厳禁」
「く、くそおおおお!」


あくまでも、このかくれんぼ大会は公平の上に公平を重ねて行うことと先日決めたばかり。
犬並みの嗅覚を持ちだされたら、勝ち目がないことなど明白だ。
食満はよく分かっていないしんべヱに懐から菓子の包みを出すとそれを手渡して、泣く泣くしんべヱを帰した。


「さて、これで他に問題はあるまい」
「早くして下さーい。立花先輩、滝みたいになってしまいますよー」


恐れ知らずの綾部が飄々と手を上げて仙蔵を促す。
皆、仙蔵の雷を恐れたがたいして怒るわけでもなく、綾部の意見に頷くと、の背を押した。
そして、ここにかくれんぼ大会の始まりの号令がかけられたのであった。


「メリークリスマス!!!!!」


なんでも、南蛮のお祝い事らしい。

は一目散に、わき目もふらず学園の門から飛び出していった。
目指すは裏山。
賑やかにそれぞれが数を数える声がの背中を追いかけていった。