まだ、誰にも見つかっていない。
走り続けていくと、寒さが切りつけるように胸の中に入り込んでくるせいで、すぐに息が上がってくる。
普段、こんなに寒い日に好き好んで走ってるわけがないんだから当たり前だ。
ともかく、既にだるさを覚えた両足に鞭打ってなるべく見つからない様な茂みを見つけて飛び込んだ。


「おわっ!!?」


飛び込んだ先にまっていると思っていた筈の、地面がない。
宙に飛んだ自分の体。
次の瞬間目に飛び込んできたのは、下に見える地面。
盛大に音をたてて地面に落っこちた。


「いっ……たっう、ぐ……」


かろうじて叫ぶことだけは我慢して痛みに呻く。
まさか、段差になっているとは思いもしなかった。
なんで、私がこんな痛い目に会わなきゃいけないんだ…あ、いた、い。
じりじりと痛い。
ごろごろと、痛みを逃がすために背を丸めて軽く転がってみても、痛い。
なんだこれ、痛い。
かくれんぼとか、どうでもいいのに、なんで付き合わされたんだ。
打ったのは背中だけだったから、悲惨な状況は免れた。
懐に手を突っ込むと…懐紙の乾いた感触が手に触れる。


「よか、た」
「なにがよかったの?」
「ひっ!!!?」


突如として現れた逆さまの綾部の顔。
体が硬直した。


「ねえ、なにがよかったの?」
「……あ、や…べ」
「ほらほら、早く言いなよー」
「むぅ」


顔を覗き込むようにしゃがみこんだ綾部は待ち切れずにの顔を両手で挟んでむにむにと、ほっぺたを押しつぶす。
そんな状況で、が喋れるわけがないのに、綾部は早く早くと繰り返していた。
身動きするのすら痛いが、は綾部の手首を掴んで離させると、ようやく喋れるようになった。


「あ、やべ!やめてよ!」
「なんで?気持ちいいのに」
「喋れないでしょ!」
「ああ、そうか」


そうだねと、真顔で言われてしまうと呆れてそれ以上何も言えなくなってしまった。


「はぁ……」
「それで、なにがよかったの?」
「ん?ああ、懐に入れてたケー…」
「甘い匂いがする」


の言葉なんてお構いなしで、綾部は突然の胸に顔を押しつけた。


「なっ!!!?」
「あ、そうだ。みーつけた」
「あっ!?」


鼻先を胸にぐいぐいと押し付けられたせいで、中で柔らかいものがぐしゃりとつぶれる感覚がした。
より、強く香る甘い匂い。


、ここにおいしいもの隠してるよね?……ちょーだい」


布の上から胸をべろりと舐められる。
目の前で上下する綾部の喉元に、眩暈すら覚えて、は観念して唇を開いた。


「どうぞ」
「ん、いただきまーす」


最初に見つかった人に、プレゼントをあげるのが決まり。


「ふぁっ!ちょ、ちょっと!綾部!くすぐったい!!」
「おいしーね。すっごい甘い―」
「うううううう!」


だから、我慢してね。


「おやまあ、。真っ赤だよ?」


どんなことがあっても。

























メリクリ3