剥きだしの本能で

































思わず横暴だと叫んでやりたくなるほど、今日一日はこき使われた。
だけど、それは委員長とて同じこと。
は同じ委員会の、同じ学年なのに委員長を務めている食満留三郎のことを想った。
体を疲らせた湯船のおかげか、じわりじわりと疲れは湯の中へと溶けていく。
今頃、留も同じように湯船につかっているころだろうか。
それとも、もう少し片づけがと言っていたから、一年生たちを部屋まで送り届けて、それから湯殿への準備をして……。
自分よりも疲れているんだろうと、さっきまで隣にいた留三郎の顔を思い出した。


「留三郎ー」


誰もいないことをいいことには少し大きい声を出したが、返事が返ってくるわけでもない。


「疲れてるんだよね……」


ざぶりと、湯が零れる。
ぶくぶくと、沈んだ口元から溢れだした泡が鼻先はじけた。















































殆ど足を引きずる様に部屋の前まで何とか辿り着いた。
疲れて、それでも汗と埃とを洗い流すために湯につかり、なんとかここまで戻ってこれた。
髪の毛を拭くのすらめんどくさく、ぽつりぽつりと生乾きの髪から雫が肩を濡らす。


「あとは、布団か…めんどくせぇ」


伊作は今夜は保健室で宿直。いつもならば、こんな時は伊作が布団をしいといてくれるが、今日は期待できないな。
かたりと、音を立てて部屋の中へと入ると、目に飛び込んできた白い布団。
ありがたいと、吸いこまれるようにそのまま布団へと倒れ込んだ。
ぼすんと、枕に顔をうずめて大きなため息。
疲れた。
だが、嫌な疲れではない。
最後に聞いた一年生たちの声を思い出して、くすりと笑みがこぼれた。


「はー…あいつら本当、ん?」


顔をひねった先にがいた。
食満が一瞬キョトンとした顔をしたのをはまじまじと見つめている。


「どうしたんだよ、
「ん」


ごろりと、横になりの方へと体を向ける食満。
は食満へとにじり寄る。


「あのね、」


が続きを言う前に突然食満がにたりと笑った。


「なんだ、


全くもって油断していたの上に、留三郎の体がのしかかる。
そして、の上に馬乗りになった食満は至極楽しそうに笑みを深くした。


「セックスしてぇのか」


下から見上げる食満はさっき見たはずのあの疲れ切った顔なんかではなく、ひどく雄臭い顔をしていた。
声を上げるのも忘れて、留の姿に見入ってしまっていた。
むき出しにされた上半身に幾筋かの傷跡。
そのくせに、香ってくる柔らかなせっけんの香り。


〜、自分から誘いに来るなんて溜ってるのか」
「なッ!!?」
「えっろ」


急に顔が近付き、視界には留の顔でいっぱいになる。
濡れた髪が、頬に張り付いている。ぽつり、ぽつりと、留三郎の髪から雫が、零れて


「留、ち、ちがうの」


冷たいのに、かかる吐息は熱っぽい。
にっと笑むと八重歯ばかりに目が行ってしまう。
その唇をなぞる様に、留の舌がいやらしく動く。


「黙って」


鼻先が触れる程の距離で、囁かれた言葉に支配される。


「ん、んん……」
「は、……ん」


普段みたいな、甘ったるい口付けとは違い、荒々しく貪る様な留三郎からの口付けに、の体が翻弄されていく。
言葉も呑み込まれ、何かに急かされているかのように舌を絡め取られる。


「はっ、たまんねぇな
「はぁ、ぁ」


は思わず手を伸ばした。
肩に触れると、先ほど見た留の傷跡をなぞる。他の部分とは違って微かに凹凸のある場所。
たまらなく、愛おしさがこみあげてくる。


「もっ、いいよ」
「ん?なんだよ」
「ばか留。……シヨ?」
「………
「え?」


息がつまるほど、ぎゅうっと抱きしめられた。
鼻をくすぐるのはやっぱり石鹸の匂いでも消せない、留三郎の香り。


「やっべぇ、かわいい」


すり、と擦りつけられた下半身から、留の高ぶる熱が硬くなっているのを嫌でも理解させられた。


のこと、好きすぎてもう、手加減とかなんもできねぇ」
「留、三郎」


普段と違う雄っぽい留三郎だって、いつもの甘ったるい優しい留三郎だって、始まりの言葉はいつものお決まりのこれだった。


、愛してる」


あまりの留三郎らしさに、の胸はきゅうきゅうと泣声を上げた。
絡ませた指先も、視線も、足もなにもかもから愛おしさが溢れだす。


「やりてぇ」







































これこそ、まさに気が向いたら続きのもの