獣のしつけ方



























事は、下級生たちが寝静まった夜半に行われる。
間近で交わされる視線同士が熱っぽく絡み合うのなんて、普段の私たちから考えたら全く予想もつかない。
ごくりと、食満の咽喉仏が上下するのを見ると、まるでそれが合図だったかのように、自然と唇と唇の間が狭まった。





安っぽい言葉なんて必要ない。
名を呼び合うことで、全てが肯定される。
そう思った瞬間だった。
どさりと、天井から落ちてきた気配に体が強張った。
食満も同じように固まる。
私たちの状況なんて気にもせずに、彼は大声で叫んでくれた。


「嫌だーーーーーーーー!!!」


ああ、頭痛がする。


「留三郎!!ちゃんの上からどけよ!!!」
「うおっ!?小平太ふざけんなよ!あっぶねぇ!」


小平太の拳が夜気をなぎ払う音はそれだけで凶器に近いことを食満に知らせる。
間一髪で私の上から飛びのいた留三郎を、威嚇するように鼻息荒々しく小平太が睨みつけていた。
依然布団の中にいた私は、盛大にため息をつく。


「小平太!だから言ったでしょ!授業なんだからしょうがないでしょ!」
「う、〜!なんで私じゃだめなんだよー!」
「だーかーら!それも何回も言ったでしょ!先生が決めたんだから私にはどうしようもないって!」
「うううう!浮気だ!私があんなに毎晩満足させてあげてるのにー!」
「だー!小平太そんなこと大声で叫ばないで!」
の馬鹿ーーー!」


私の色の授業はこれで通算四度目の失敗を迎えた。
毎度毎度、どうしてもやらなくちゃいけないって言ってるのに、小平太はどんなに秘密にしても、言い聞かせても、説き伏せてもどっかから嗅ぎつけて必ず邪魔しに来ていた。
もう、呆れるしかない。
大騒ぎしている小平太の声を聞きつけて山本シナ先生が駈けつけてくれたのは、ほどなくしてだった。
またかという顔で、苦笑するシナ先生に申し訳ないと思っている私を尻目に、まだ食満を威嚇している小平太は、人の形をした獣見たいだと思う。それが、実はちょっと嬉しいと思っている私はよっぽど小平太にいれ込んでいるってことだけど…さすがにこのままじゃ不味いだろう。
シナ先生からの目配せに、私はため息をついた。
ごめんね?小平太。

































「小平太、あのね」
「うん!なんだ?」
「今度、私の色の授業に付き合って」
「え!!!!」
「いい?」
「いい!ちゃん大好き!!!」


ごめんね、小平太。
本当に!ごめん!









































夜まで待てないという小平太を何とか落ちつけて、いよいよ、またいつものように夜の帳が下された。
月も星も見えない、肌寒さの残る夜。
覚悟を決めた私は、どんな小さな明かりでも部屋の中が手に取る様に分かる気がした。


「さあ、小平太。始めよう?」
「うん!」


いつまでそんな楽しそうにしてられるか楽しみだ。
ぞくぞくと、背筋を這いあがっていくのは背徳の快感。
大人しく胡坐をかいて座っている小平太の正面に膝をつき、頬に手を寄せた。


「授業だから…大人しくしててね?」
「いいぞ、ちゃんの役に立てるなら私は大人しくしてるー」


まるで、無邪気に楽しんでいるだけの小平太のほっぺたに口付けを落した。
懐から取り出したのは、強くて太い縄。


「小平太、じっとしててね?両手、出して?」
「うん!」


大人しく差し出された手首に縄をかける。
一つに縛りあげて、手近な柱にくくりあげればはい出来上がり。
足にも縄を着せるか悩んだが、きっと小平太は私に攻撃なんてできない。
卑怯に愛情を逆手にとって、さあ始めましょう。


「小平太、好きよ?」
「私もだ!」







































続きは、お嫌いな方は要注意。