汚す事


































みんなの前で、馬鹿にしてやるよ。


「お前の顔って本当…個性的だよな」


私が一言口にしただけで、食堂中の目はこちらへと注がれる。
そして、私の前に座っているの顔をみな確認する。
ひそひそと一体何を話しているかまでは分からない程度の話声があっという間に広がっていった。


「まあ、よくて個性的ってことかな…。ほら、私の変装もお前の顔にしようとすると…」


ささっと、顔の変装を取り換える。


「あっー…こうさ、どうしても似ないんだよな」


幾度も思い描いて、鏡の中に映し出したの顔よりも、いわゆる一般的に見て「美人」とか「かわいい」って言われるような顔にすると、途端にさわさわと響いていた囁き声はクスクスという笑い声へと変わる。


「どうしたって、かわいくなっちゃうんだよなー」


意地悪く笑みを浮かべて、小首をかしげてみせるとゆっくりとは口にほおばっていたものを飲み込んだ。
白い咽喉がゆっくりと動く。
緩慢に見開かれた瞳いっぱいに、私の顔が映り込んでいる。
ぞぞぞっと背筋を走りあがってくる快感。
あと、ひと押し。


「ま、私の腕もまだまだってことだな」


ひらりと、手を振ってその場を後にした。







































「三郎」
「はいはい、どーぞ」


戸を叩かれて、適当に返事を返すとそいつは部屋の中に入ってきた。
確か、雷蔵は委員会だっけな。


「さっきの……どういうこと?」


読みかけの本にしおりを挟んで振り返ればそこに立っているのは
軽く両肩を上げて、どうかなと首をかしげて見せる。


「わ、私のこと、馬鹿にしてるつもり?」


うわずった言葉づかいは、始めて聞く声。


「私、そんな可愛いとか、自分で思ってないけどさ、みんなの前であんな風に言って……」
「事実なんだもん。私は別に馬鹿にしてるつもりなんてないけど?」
「……この、うそつき」


固く握りしめられた拳が白く震えているのは、どうしてだろうね。


「いやいや、本当のことだよ。私の腕が未熟なんだ」
「違う」
「あー……それか、のことあんまりよく見たことないから上手くできないのかも」
「……うそ」
「嘘じゃないよ。ほら」


また、変装してみせると、ぐっと唇をかみしめてしまった
似ても似つかぬ顔へとわざと変装して見せて、傷つけていく。


「じゃあさ、そんなに嘘だなんて言うんだったら……」


膝に手をやって、よっこいしょと立ちあがれば、立場は逆転私のことを見上げると、を見降ろす私。


「私の練習に付き合ってよ」


負けん気で睨みつけてくる瞳が口よりも先に言っていた。
いいと。


、よろしく頼むよ」


静かに戸を閉めた。












































終わらせない。
気が向けば続き×