マニア(熱狂的な恋愛)

















戦場に夜の帳が下りると、一斉に篝火が両陣営に焚かれた。
遠いながらもその火が燃え上がる瞬間にはごうっと音が聞こえる気がし、そっと耳をそばだてるのだが、やはり気のせいであるようだった。
数を増やし終わると、ただその灯は赤々とした光を並べて陣を飾り立てていた。
は息をこらしてその様子を見届けると、手慣れた様子で懐から帳面を出し、陣営の篝火の数やその形を書き写す。
あらかた書き終わらせてしまうと、ようやくふう、と息を吐いて口許を覆っていた闇色の覆面を取った。



只今、実習の真っ直中。
課題は、闇に紛れて両陣の戦力を調べて来ること。
他の忍たまたちも各々の方法で課題をこなしているであろう。
も課題を終わらせて一息ついた所だった。


と、その時。
がさりと、背後に気配が生まれる。
肌が一瞬粟だった。
しかし、その気配が誰であるか分かると、すぐにの緊張はとけて口をひらいた。


「なによ、文次郎」
「探したぜ
「当たり前じゃない、あんたが邪魔するから撒いたんだから」
「何言ってる!ばかたれ!邪魔じゃねぇ、愛がゆえだ!」
「…キモいよ」


盛大な溜め息をつくと今度は俺への恋煩いだな!
と、ハァハァ息を荒くしているこの男。
ないわー。


「ない!ないない!勝手に脳内変換しないで!」


ぎゃあぎゃあ大木の上で言い争いをする私達。
もっぱら私の成績が上昇線をたどらずに行ったり来たりを繰り返しているのは文次郎のせいだ。
私のどこを好いてくれたのかは不明だが、(だって、それを聞いてもまともな返事が返ってきたためしはない)
文次郎が私を追いかけまわすようになってからはまともに実習や勉強ができやしない。


「そんなことより、文次郎!あんた課題は終わったの!?」
「ああ?終ったに決まってんだろう!俺を誰だと思ってる!」
「はいはい、学園一忍者して「の将来の旦那様だぞ!!」
「……」


最高の笑顔。そうですね、歯が白いのがまぶしいですね。
ちょっと、いらっとした。
これ以上あの笑顔は本当に、目に毒だと判断したは視線を篝火が灯った陣営に戻した。
ほう、と息をつく。
遠目に見えるその明りはとても綺麗だった。
まさか、あそこで幾多の血が流されているなど嘘のように、黙々と明かりが揺らめく。
やっぱり夜まで待っての方法を選んだかいがあった。
まるで狐火や祭りの提灯が集団になって灯るようなその様子は、幻想的なのだ。
切なくなるような、美しさを持つその光景はのお気に入りだった。


「綺麗だな」
「え?」


不意に真横で声が聞こえて振り向くと、驚くほど近くに文次郎がいた。
しかし、が本当に驚いたのは文次郎の言葉だった。
まさか、鍛練とギンギンしか頭にないと思っていた文次郎から「綺麗」だなんて言葉が出てくるとは思いもしなかった。


「プッ、文次郎どうしたの?」
「ん?綺麗だから、綺麗だって言ったんだよ」
「似合わない〜」


笑ってしまったが、それでも同じことを思ってくれたと思うと嬉しい。
それが、たとえ文次郎であっても。
顔をほころばせては視線を遠くに戻した。
黒々とした闇と、煌々と目を射る光。
なんだか、くすぐったいような気がした。
いや、実際にくすぐったい。


「ちょ、ちょっと!文次郎なにやってんのよ!!」
「ハァハァ、、いい匂いだな」


くすぐったいと思ったら、文次郎が私の首筋に顔をうずめてた!
耳元で文次郎の荒い息が聞こえ、調子に乗った文次郎がべろりと首筋を舐め上げた。


「ひぃっ!?」
うめぇ」
「わ、や、やめてよ!お、落ちるし、気持ち悪い!」


ぺちゃぺちゃと私を食べようとしているように、何度も何度も舌を這わせてくる文次郎。
今までしつこく迫ってきたこともあるけど、こんなことをされるの初めてで、戸惑った。
暴れるにしても、こんな場所で暴れたら自分まで落ちてしまう可能性がある。
ぞくぞくと、込みあげてくる感触を殺そうと必死になっているその時、するりと文次郎の手が懐に入り込んできた。


がかわいいのが悪い」
「っは、あ?」


やわやわと、胸の柔らかさを楽しむように胸を揉み始める文次郎。
その感触に再びひくりとは体を震わせた。
甘い刺激が脳髄をとろかしてしまいそうだった。
も、文次郎なんて好きじゃな、いのに。
じわりと、篝火が涙で滲んだ。
はあはあと荒い息は自分のものなのか、文次郎の息なのか。
れろりと涙ごと頬を舐められた。


「なあ、。嫌なら抵抗しろよ、でないと抑えがきかねぇ」
「ふぅ、あっ!」
「俺、お前が好きでしょうがねーんだよ」


真剣な、熱すぎる眼差しが私だけを映していた。
じんっと、何かが痺れたのは文次郎から絶え間なく与えられる刺激のせいだけじゃない。
怖くなって、視線をそらすと、篝火が涙に滲んで余計にゆらゆらと揺らめいた。


、全部好きなんだよ」


再び首筋に顔を埋めた文次郎がチュウっと、首筋に吸いついた。
ふるりと、が揺らめいた。








































俺、お前マニア的な感じでw
熱狂的にさんのことが好きだって。


き?