お菓子がない!? 学園長の突然の思いつきだか、南蛮の伝統行事だか知らないけど「はろうぃん」とかいうお祭りを学園でやるっていうポスターを小松田さんが私の部屋の天井に一生懸命貼ろうとしているのを見つけた。 「こ、小松田さん……そのはろうぃんってどんなお祭りなんですか?」 「ん〜ッとねぇ……吉野先生は君はたくさんお菓子をもらえるように何かの仮装をしなさいって言ってたよ?」 「へー、お菓子もらえるんですか!いいなぁ」 「ちゃんも、お菓子もらえばいいじゃない〜」 若干首が痛くなってきたが、見守っていなければ小松田さんが私の部屋をいつ崩壊へと導くのかわかったもんじゃないから大人しく天井とポスターと格闘を続ける小松田さんとの会話を続ける。 「だって、そのポスター見る限りではお菓子をもらえるのは仮装してる人だけじゃないですかー」 「あ、う〜んっと、そうだね。あはは〜、ちゃんざんねーん」 「まあ、小松田さんが仮装するの楽しみにしてますよ」 「ふぇ、じゃあちゃんにお菓子もらいに行くからね!」 「え?」 「あ、でも…お菓子なくてもちゃんに悪戯できるならそっちでもいいかなぁ?あははは〜」 「ちょ、ちょっとどういうことですか!?」 思わず語気が荒くなる。 ぽえっとした表情でこちらを振り返り、顔を崩した小松田さんの口から恐ろしい一言が。 「ほぇ〜?えっとね、ここにお化けにお菓子を渡さなければ悪戯されるって書いてあるのー。だから、ちゃんがお菓子くれなかったら僕、ちゃんに悪戯してもいいんだよね?」 「さ、させませんから!!も、ちょっと小松田さん!!そこに貼るの私がやりますからそのポスター私に頂戴!!」 「え〜!だめだよぉ!これは事務員の僕のお仕事なのぉ!」 「だ〜!そんなこと言ってたらいつまでたっても私そのポスターの内容読めないじゃないですかぁ!!」 「だめぇえ!!これは僕がここにはるのぉお!!」 マニュアル小僧との格闘の末、なんとか小松田さんの手からむしり取ったポスターの残骸をよくよくつなぎ合わせて見ればどうにもこれは私のピンチ中のピンチの匂いがすると冷や汗が出てきた。 もう、ちゃんのばかぁああ!!って泣きながら走り去った小松田さんのことを考えている余裕なんてない。 むしろ、あんな場所に貼ろうとした小松田さんは何かおかしいに決まってる。 ちゃんの部屋が最後なんだぁ!お楽しみにとっておいたの!とか言っていたから、私以外のみんなはこのお知らせをとうに読み終わっているはずだ。 「しかも…明日…だとぉ!!小松田さんの馬鹿ぁああ!!」 やばい!やばすぎる! 日頃から変態活動にいそしむ忍たまたちの顔が頭をよぎる。 私は、もう夜も更け出したというのに慌ててお菓子というお菓子をかき集めに走った。 もちろん、いつもお菓子を部屋中に隠しておいたおかげですぐさま小さなお菓子の山ができた。 「よ……よし、これだけあれば大丈夫でしょう」 枕もとだなんて見え見えの場所に置くだなんて凡ミスはせずに、私はそのおかしの山を押入れにこっそりと押し込んだ。 「さてと、ドーンとこい!どーんと!対策もばっちりよ!!」 そして、は眠りに落ちた。一抹の不安を消しきれずに。 朝っぱらから特に着替えもせずにいられるのは今日の授業が全部お休みだからだろう。 しかし、が夜着のまま動けずにいるのは目の前の空っぽの押入れのせいだった。 おかしい。 おかしいぞ。 昨日ここに確かに入れてあったはずなのに。 何度思考を回してみても、結局同じ場所を回ってしまい、お菓子がなくなった理由が見当たらない。 たらりと、冷たい汗が頬を滑ったその時だった。 「〜〜!!!!!!!!」 だーん!と、音をたてて戸が開いたと思った瞬間、危惧していた言葉がそいつから発せられた。 「トリックオアトリート!トリートでなければ豆腐!!!!!!!!」 「ひっ!!!」 振り返ると、三度笠を頭にかぶり、丁稚の小僧扮装で身を固めた久々知がいた。 手には何も載っていないお盆を持っている。 「じ、時代錯誤!!久々知!その恰好するのまだ数百年早いから!!」 「ええい!豆腐が好きだからいいんだよ!それよりも、!トリックオアトリート!!」 ずいずいっとお盆を久々知が突きつけてくるが、何分私の用意したお菓子がどこかに行ってしまったのだ! 渡せるわけがない。 「ご、ごめん、ね!お菓子用意してあったんだけど、なくなっちゃって…」 久々知にばれないようにじりじりと後ろに後退する。 このまま押入れの中に入ってしまえば、天井板を外して天井裏から逃げれるはずだ。 「ごめん!!って、ぅ、わっ!!!?」 思い切って飛び上った瞬間、足に縄がかかって、私は無様に床の上に倒れ込んでしまった。 「い、たっい!!!」 「〜〜、どこに逃げる気だぁ?」 「お、八!」 痛む鼻を押さえながら縄の先を視線で辿ると、そこにはにやにやと笑みを浮かべている竹谷の姿が。 ばっちり、案山子の格好を決め込んでいる。 「ま、まさか……」 「へへ、!俺もトリックオアトリート!!!!」 「〜、私にも早くトリックオアトリート!」 「い、いやぁああ!!や、やだってばああ!!!」 私の叫びも無駄に響き、竹谷の手が思いっきり縄を引いた。 一瞬の浮遊感を感じた後、私のからだはそのまま久々知に抱えられていた。 「それじゃあ…、お菓子も豆腐もないようだし?」 「「トリック!!!!!」」 「ふぁ、や、やだぁああああああ!!」 思わず大きく開いたの口にすぐさま竹谷が何かを押しこんだ。 突然放り込まれたそれは、硬い歯ごたえの後、ばりばりいって口の中でとろける。 「ん、ふぇ、あ、甘い!」 「せっかくだからまずお菓子から」 竹谷がにっと笑うのだが、それに反して急に体が熱くなる。 「うえ、な、何これ!?」 「ふふふふ〜」 久々知と顔を見合せて意味深な笑みを浮かべる二人にぞっとした。 それなのに、想いと反して体は熱くなっていく一方。 「や、さ、最悪!!!」 続 とりあえず、まずはここまで。 続きは…ね?^^ 瑠逸さんのコメント「主人公が前日から(色々と)危惧して用意していたお菓子が当日起きたらなくなっていた!」からでした。 コメントありがとうございました!! ぶっちゃけ、まだまだ物足りない悪戯ですね^^ ちなみに、人選はあみだで「久々知・竹谷・○○」に決まりました。 五年のくじ運の良さに嫉妬。 では、どうぞ↓ 続 |