酒宴(5年の場合)
























ようやく委員会も終わり、疲れがじんわりと身体に溜まっている雷蔵は、早く部屋に帰りたいと廊下を足早に歩いていた。
ああ、今日も一日頑張ったな!自分で自分をほめてあげたい。そして、さっさと寝てしまいたい。明日が休みでよかった。などと、取りとめのないことを考えているうちに、部屋の前についてしまった。
戸を開ければ、三郎と自分との部屋なのに……
耳を澄ませると、どうにもさわさわと中から賑やかな声が聞こえてくる。
嫌な予感がするが、覚悟を決めて戸をあけた。


「あっ!」


驚いた雷蔵はさっと中に入り込むと、すごい勢いで戸を閉めた。
そして、中にいる4人を無言で睨みつけた。


「あ!雷蔵きた〜!」
「あ!雷蔵きた〜!」
「あ!雷蔵きた〜!」
「あ、雷蔵」


くるりとこちらを振り返ったのは全部の顔。
正直気持ち悪い。
それが、みなにこにこと笑みを浮かべてこちらを見てくるのだからなおさらだ。


「三郎〜、何やってるんだよ」


呆れて笑いしか出てこない。
雷蔵は、4人のうちの一人に近づくと、その前で仁王立ちしてそのを睨みつけた。
すると、他の三人はあっけにとられていたのだが、そのは依然ニコニコと笑いながら雷蔵にはかなわないなぁなどと言いながら頭を掻いた。


「え!?な、なんですぐ三郎が分かったの!?雷蔵って、変装を見破る天才か!?」
「もう、竹谷、まず体つきで大体分かるでしょ…」
「あ……」


三人のが一斉に自分の体つきを見た。
ばっちり顔はでも、三人のの体は男のまま。


「まあ、私はすぐばれちゃうと思ってたけどね」


けらけら笑いながら久々知はようやく自分の顔に張り付いていたの顔をべリっとはがしてしまった。
は、で、興味津々で自分の顔をつけている竹谷をまじまじと見つめていた。
そんなに気づいた竹谷は首をかしげた。


「なんだよ。なんか変か?」
「うん……変…」
「う…なんでだよ」


は手をのばして、そっと竹谷の胸板に手をつけた。


「私が男だったらこんな胸か……」


何とも言えない光景だった。
まじまじと二人に視線が集まる中、思わず久々知は素直な感想を口にしてしまった。


「なんか、の百合みたい」
「はぁ!!?」
「わ、馬鹿!兵助!!」


三郎が慌てて久々知の口を押さえて黙らせたが、にはもうばっちり聞こえていた。


「自分と自分とか、すごい引くんですけど……」
ちゃん、別にみたいって兵助が言っただけだから!気にしない方がいいよ!」
「だって、雷蔵だってそう思ったでしょ?」
「……お、思ってないよ!」
「嘘だ」


雷蔵の顔は真っ赤だった。


「まあ、いいか!それよりも〜」


はくるりと後ろを振り向いて、そこに置いてあった椀を手にとった。


「あ!もしかして4人でお酒飲んでたの?」


そういえば、部屋の中に微かに酒の香りが漂っているし、心なしかの顔はうっすらと赤みがさしていた。
そんな雷蔵の背を三郎がまあまあと、押して輪になるように座らせた。
どんっと、真ん中に一本のかれた酒の瓶に早速手をのばしてがうまそうにぐびりと椀をあおった。


「うわ、お前女なのに豪快だな」
「別に竹谷だって今は私の顔なのにぐびぐび飲むじゃない」
「まあ、それもそうか」


竹谷は何が気に入ったのか、の顔のままで同じように椀をあおった。
久々知もおいしそうに椀をあおった。
三郎はすでに雷蔵の顔に自分の顔を戻して、雷蔵に酒を注いでやっていた。
なんとも、不思議な光景だった。
二組の同じ顔と一人の違う顔。
それが、どれもうまそうに酒を飲み交わしている。
しかし、当の本人たちは全然気にしてもいない様子で、次々と椀をあけて行った。
もうすでに、軽く酒が回っていたのもその理由かもしれない。



「あはははは〜!たのしぃね!私!」
「いや!俺竹谷だし!」
ちゃん顔真っ赤〜!」
「おい、雷蔵だって顔だいぶ赤いぜ」
「ん〜、私は豆腐があれば何でもいいんだぁ」


五者五様に酔いが回っていく。
ぐるぐるぐるり。


「いや〜、私こんなに貧乳じゃないよ〜!」


はまた竹谷の胸に手を当ててさっき思ってしまったことを嘆いた。
竹谷は悪乗りして、着物の上を脱ぎ捨てると、ぺったんこな前掛け姿の胸をに見せつける。
それを見て、また嫌だぁ!!胸がない〜!と嘆いて、はぺしぺしと竹谷の胸を叩いた。
三郎はその辺に転がっていた椀をふたっつ掴むとおもむろに竹谷の後ろに回り込んだ。


「ほら、のおっぱいできたぞ〜v」
「あ」
「あ」


ずぽっと竹谷の前掛けの中にその二つのお椀を突っ込んだ。
丁度、胸があるように……見えなくもない。
しかし、はその見た目に満足したのか、満面の笑みを浮かべた。


「やった〜!胸がある!」


わしっと、再びその胸に手を伸ばしたのの顔が急に曇る。


「か、かちかちおっぱい」


どーんと沈むを見て、4人がゲラゲラ笑う。
すると、突然何を思ったのか久々知が豆腐を掲げた。


「分かった!豆腐を胸に入れれば柔らかさも出るに違いない!」
「「「……却下」」」
「えっ!!?」


落ち込んで三角座りをしてしまった久々知とを、笑いながらも雷蔵が慰めていた。
そんな三人は気づいていない。
にやにやと、悪戯をおもいつた顔を浮かべる三郎と、竹谷に。

















































きっと、5年はおっぱいな学年だと思われます。
これで、終われる5年生じゃないと私は信じています^^

信じる者は救われる