彼につける薬はない


































「滝夜叉丸の悪い所ってやっぱり自信過剰なところだと思わない」
「は?」


隣で火縄銃を磨いていた三木ヱ門に疑問を投げかけて、その答えも待たずに次の言葉を口にする。


「だからさ、あの自信過剰の自意識過剰を直せば、少しはかわいげのあるやつだと思うわけ」
「あいつがかわいい〜!?」
「そう、かわいいの。黙ってればカッコいいし?サラリストだし?」


サラリストの言葉を聞いた瞬間三木ヱ門は、苦虫をかみつぶしたような顔をしたがあえて気にせずは続ける。


「だから、私あいつに勝負を挑んでくるわ。行ってきまーす!」
「あ、ああ………勝負?勝負って!!?おい!!!」


少し興奮気味に出て行ったの後を三木ヱ門があわてて追いかけて行った。
嬉々と目を輝かせてはあたりをきょろきょろと見まわして走り回る。その後ろを、三木ヱ門が火縄銃片手に追いかける。そんな二人の姿を見かけた上級生は、またあいつらかとため息をつき、下級生たちは何か面白いことがあるのかとさらに二人に続くのだがその速さについていけずにその場にへたり込む子ばかりだった。


「あ!滝めーっけ!!!」


滝夜叉丸がいたのは裏山にほどちかい戦輪の練習場。
そんなこんなしているうちに、空は雰囲気もちょうどいい茜色。
滝夜叉丸は背後から大声で呼ばれて振り返った。


「なんだ、か!私を探していたのか!はは〜ん、私も罪つくりな男だ。こんなにも美しく戦輪を投げているだけでを呼び寄せてしまうなんて!」
「ちがうよ」


三木ヱ門の突っ込みにはっと我にかえり、滝夜叉丸は三木ヱ門を睨みつけた。


「うるさーい!三木ヱ門なんぞに言っているわけではない!私はに言っているのだっ!!」
「なんだと!が一切聞いてないでとんぼ追いかけていこうとし始めたからわざわざこの私が教えてやったんだろう!!!」
「なに〜!」
「やるか〜!!?」

「「ぶっっ!!」」

「うるさい!」


二人の頭にの炸裂チョップが炸裂した。地味に痛い攻撃に二人ともさすがに黙り込んで頭を抱えた。


「もう!三木ってば!私が滝と話すんだってば!」
「う…うう…」
が、私とっっ!?」
「そう!滝……」
「な、なんだ?私は…ならばいつだって準備はいいぞ……」
「本当!?」
「ああ!!さあ!言ってくれ!」


にこりと、は微笑んで滝に右手を差し出した。
思わず滝も顔をデレデレさせながらその手を握った。


「滝……始めましょう!というか、ヤリましょう!!」
「ブッッ!!!!!なんて情熱的というか、直接的なのだ!?だ、だが…そんなも嫌いじゃな……わっーーー!!!?な、何をするのだ!


思わず顔を赤らめた滝の顔面にの右こぶしが突き出された。
それを、寸前で顔をそらしてよけた滝夜叉丸。


「チッ…だが……まだまだ〜〜!!!」
「のわっ!!?ちょ、ま、な〜〜!!なんなのだぁぁぁあ!!!」


次から次へと繰り出されるの体術。
女であることの特性を生かした柔らかい攻撃は、一気に爆発する伸びがあった。
蹴りを後方に飛んで避けたと思っても、その足は予想を超えて伸びてきて、的確に脛をとらえてくる。
わけも分からずに、ともかく防戦一方の滝夜叉丸をがどんどんと追い詰めていく。


「さあ、滝!私とちゃんと勝負しなさい!しっかり負かしてあげるから!」
「はぁ!!?ちょ、!お、落ち着け!!いだっ!!」
「さっさと攻めるかしっかり守るかしないと滝の綺麗な顔が台無しになるわよ〜!」


思いきり突き出されたの掌が滝夜叉丸の鼻柱を砕こうと迫ってくるのを、なんとか片手でしのいだが、その手を受けた手がびんと痺れた。
本気でつぶしにかかってる。
と、その瞬間、の顔がにまぁっと歪んだ。
普段見慣れているはずののその顔をみて、滝夜叉丸はぞっと背筋を嫌な予感が走り抜けたがそれに対応することが残念ながらできなかった。


「かかったわね」


の手が触れていた滝夜叉丸の手首をがっちりと掴んだ刹那、ぐるりと体を反転させた。
どこからそんな力が出たのか、滝夜叉丸はくるりと円を描いて宙を舞った。
綺麗な背負い投げだ。
はがっちりと滝夜叉丸の体に自分の体を押しつけた。


「ぐぁ」
「ふふふ〜……覚悟!」


滝夜叉丸の背中にぴったりとくっついたの両足が滝夜叉丸の足に絡みついて動きを封じる。
そして、両腕がしゅるりと蛇の様に滝夜叉丸の首に巻きついた。


「さあ、滝〜早く降参しなさい……このまま落とすわよ〜」
「う、あっ……」
「ほれほれ〜?早くしないと本当に意識飛んじゃうわよ〜?」
ッ……ぁ、う」
「ん?」


どうも、様子がおかしい。
ようやくは気付いて後ろから滝夜叉丸の顔を覗き込んだ。


「なっ!!?た、滝鼻血出てるよ!!?」
、も、もっと!もっと絞めてくれ!!」
「え!?な、何言ってんのよ!キモ」


そう言いながらも、滝夜叉丸を倒すという当初の目的を忘れていないは腕を放しはしなかった。
しかし、わずかに腕の力は抜いていた。


〜!も、もっと……しめ、て!!」


すると今度は、滝夜叉丸が自ら後ろに体を仰け反らせての体に体を押し付けた。
そこでようやくは分かった。


「あっ!!……滝」
〜〜!!」


頬を赤く染めて、目をうっとりと細める滝夜叉丸は苦痛とか負けるとかを一切感じさせず、むしろ至福の喜びで満ち足りていた。
はそのままの体勢で、退屈そうにこちらを見ていた三木を見上げた。


「三木〜、どうしよう。もう一個ダメなところあったわ」
「ん?気づいてなかったのか?」
「うん……三木もだけど滝も馬鹿だった」


はぁ、とため息をつくに三木ヱ門は「私は馬鹿なんかじゃない!」と顔を赤くさせて叫んでいた。


「あ〜、もう、なんだ。私の計画台無しじゃん」


するりと、腕も脚もといて、は手足を投げだした。
ごろごろと、胸元に擦りついている滝夜叉丸をみて思わず苦笑してしまった。


「じゃあ、みんなでお汁粉でも食べに行きましょっか」


にっこりと顔を見合わせて笑った三人の顔は茜色に染まっていた。















































ほっこりしたかったのです。
あと、こう格闘的な部分を書くのが好きです。
下手だけど^^
ごろにゃんする滝かわいいなぁ。