不思議な感覚
遠くの空が光った。
次第に強くなる風と、徐々に暗く濁っていく空を見て、予感がした。
今夜は荒れるだろう、と。
走る。
走る!
全力で!!
いてもたってもいられない!
雷鳴は強く鳴り響き、空を閃光が切り裂く。
風が髪を舞い上げて、雨が頬に吸いつく。
こんな夜には誰も出歩いていない。
どの部屋の扉も固く閉ざされて、灯りも落とされている。
そう、こんな夜にはさっさと寝るのが一番。
こんな夜に出歩くのはよっぽどの変わりものだけだ。
ある部屋の前にたどり着いた。
平滝夜叉丸 綾部喜八郎
名札には二人の名前。
乱れる息を整えて、静かに戸をあけた。
部屋の中には、膨らんだ布団がひと組だけ。
それはもぞもぞと動くと、頭だけ出して、ひどく狼狽した顔をした。
「っ、!?」
なぜここにという言葉は言わなくても、分かった。
少し、乱れた息。
私も、滝も、乱れた息。
ただ、違うのは私の体は雨で冷え切っていて、滝の体は熱を持っているようだった。
「た、き・・・・」
「な、なぜここにきた!?」
「滝に、逢いたくて」
知ってる。
綾部はいつも別の部屋で寝てるのよね?
荒々しい、雨音を遮るようにそっと扉を閉めた。
こんな夜は、一緒に、いて?
滝へとそっと近づいていく。
「わ、や、やめろ!こっちに来るな!、自分の部屋に帰るのだ!」
「やーよ」
「わわわわわわ!!!」
それでも、絶対布団から出ようとしない理由なんて分かってる。
だから、来たのよ。
「滝、大丈夫」
「わっ!?」
暗いからそこまで見えないだろうと思って、そのまま夜着をその場に脱ぎ捨てて、彼の隣へと体を滑り込ませた。
ああ、濡れていた体が、熱を持った滝に触れると、じわりとほぐれていく。
背中にぴたりと体を添わせる。
身じろぎすらしない滝夜叉丸。
「滝……あったかい」
「……、離れろ」
「やだ」
背中から、両手を滝の前にずらしていく。
腰のあたりに来た時に、滝が突然体を反転させて、私の両手をつかんだ。
「!何をする!!」
ようやく、間近で滝の目を見た。
焦りといらだちと、羞恥、興奮。
「滝が、一人じゃさみしいと思って」
「……」
「一人でしてたんでしょ?」
「」
「私が」
「!」
「私がしてあげる」
大きなため息。
でも、すぐに挑戦的な目。
ああ、その眼が好きなの。
私をとらえて離さない瞳。
ごくりと、喉が鳴った。
くぐもった音が下から聞こえてくる。
目に入るのは、もぞもぞと動く布団の塊。
――できるものならやってみろ
言った後に少し後悔した。
もう少し恥じらいとか感じてくれて、出て言ってくれればと思ったのだが、恥じらいなど感じているようであれば、まずここには来ないのではないかという結論にいきついた。
こくりとうなずくと、は無言のまま布団の中へと潜っていった。
そして、触れられる私の熱。
興奮しているのか、握りこまれただけで一瞬腰が引けてしまった。
だが、すぐにやわやわと始まる刺激に身をゆだねた。
すでに自らの手淫によって高ぶっていたソコをの手がさらに刺激していく。
先走りでヌラついたモノを手でこすり上げられると、おのずと声が漏れてしまった。
「く、」
全身の神経がと自分の熱に集中するのに、私の目にはの姿が見えない。
そして、高められていく快感に奇妙な背徳感を感じていた。
一人で、イケナイことをしているはずなのに、その姿を知らずのうちに誰かに見られているような感覚。
実際には、本当にがいて、私に奉仕しているのだが。
なにか、その感覚がより私の快感を敏感にさせていた。
「ん、滝」
「なんだ?」
「舐めてもいい?」
くぐもった声が布団の中からする。
すでに手だけで腹の底がくすぐったいような、じわじわするような快感でもどかしくなっていた。
肯定の意味を手で示した。
私は布団の中のの頭を両手でつかんで自分の腰へと引き寄せる。
ちゅ
濡れる音とともに今までとは別の快感がこの身を震わせた。
の体はまだ雨水のせいで幾分か冷たいというのに、その口の中は温かい。
んっ・・・ふ、んん
じゅくじゅくと、私の先走りとの唾液が混ざりあい音を立てる。
柔らかい舌で根元から舐め上げられたり、割れ目を固くした舌でこすられるとどんどん質量を増していくのを感じてしまう。
「ぅあ・・・・ひ・・・・」
まるで、猫のようだ。
飢えているようだ。
「くぅあ、ふ、ふふ、」
「?なぁに?滝?」
ちゅぱちゅぱと、音を立てる合間にが声を立てる。
「まるで、お前が猫のようだと思ってな」
「ん、あ。猫?」
「、私のが欲しいか?」
答えはないまま、また、根元まで一気に咥えこまれてしまった。
「ん……」
滝に顔が見えなくて良かった。
顔に熱が集まってきてしまっている。
まるで、猫のようだというから、欲しいのかと聞いてくるから。
無我夢中で、滝の雄にしゃぶりついた。
たくさん欲しいとばかりに、口をすぼめてそこを吸うと、気持ち良かったのか、滝は声を漏らして身悶えてくれた。
徐々に、私の口の中も苦い味が広がってきて、そろそろ限界が近いのかと呆け始めた頭で考えた。
思いきり吸い上げるのと同時に、両手で押さえていた滝の根元を解放する。
こみあげてくる熱全部こぼさないようにそのまま吸いついた。
苦くて、熱い滝の精液が喉を通っていく。
途中に残ってる分まで全部吸い出して飲み込んだ。
まだ固さを残した滝のソコがかわいくて、最後にちゅうっと口付けてからもぞもぞと布団から顔を出した。
「ばかもの」
「なんで?」
「飲んだな?」
「だって、猫だから」
「ばかもの」
とても不思議な感覚だった。
さっきまで吸いついていたあそこも今、目の前にいるのもタキ。
なのに、目の前の滝にばかものといわれているほうがあそこを舐めるよりも恥ずかしい感じがした。
私がなんだか滝の顔を見れずにちょっとうつ向いたら。
また反転。
滝が私の上にいた。
「お前から誘ったんだからな」
ぐりっと、押しつけられた滝の雄は再び熱をはらんで、早く私の中に入りたいと訴えていた。
終
なにがエロいのか分かりません。
だけど、なんだか切ないエロ?
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