月の輪 月の光が煌々と光り輝いているのをぼうっとは見ていた。 あの光っている丸い玉は脈打つようにどくりどくりと身動きする。 うっすらと赤みを帯びているのは気のせいだろうか。 絶え間なくしゃらりしゃらりと、か弱いながらも毒々しい音が心地よい。 「、、大好きだよ」 その音の合間にうわごとのように挟まれるのは、の好きな人の声。 田村三木ヱ門が、何度も何度も繰り返すこの言葉を、幾千受け入れても慣れることはないと、は思う。 耳に触れ、脳に言葉の意味がたっする時には沸騰し、曖昧な心というものが苦しいくらいに満たされてしまう。 つっと、三木ヱ門の人差し指が、つま先から足の甲をたどり、足首までたどりくとくるぶしまでそっと降りて行く。 小さな声一つもらさず、ぐっと我慢していると恍惚とした三木ヱ門は嬉しそうに目を細めていた。 「」 足首から上に彼の指は上がってくることが出来ない。 三木ヱ門自身が、にとりつけた足かせが邪魔をしている。 こんなことをしなくても、は逃げやしない。 逃げる理由など見当たらないほどに、田村三木ヱ門に溺れきっているというのに。 彼は、枷をした。 華奢な鎖が繋いだ枷を。 鎖の先がどこにつながっているのか、闇に呑まれていてには分からない。 薄い光を燈した瞳で、三木ヱ門はそっとの方を見上げた。 台の上で大人しく座っているはぼうっと月の光を見上げていた。 不意に、あの焦燥感が三木ヱ門を襲う。 は、私を置いて行ってしまう。 ごく簡単な鉄の輪をつけたの足は大人しく自分の両手に収まっているのに、置いて行かれてしまう。 いや、だ。 「」 今までの呼びかけとは色が違うことには気付かなかった。 はただ、いつもの通りだと月を見ていたのだから。 枷をはめてから、初めて簡単な鉄の輪の上へと手を伸ばした。 ふくらはぎを掴むとそのまま立ち上がる勢いで、持ち上げた。 驚いたは小さな声を上げながら、仰向けに倒れていく。 「あ、やっ…」 「、私を見ろ」 両足をそろえて胸に押し付けられ、まるで赤子のようにされた自分の姿に、は顔を真っ赤にした。 夜着の裾はめくれ上がり、真っ白な太ももの裏も、その付け根も三木ヱ門の目に曝された。 の女の部分に、ごくりと三木ヱ門の喉が鳴った。 女の人を見るのも、するのも初めてではないが、大切に大切にしてきて、今まで何もしてないの体は眩暈がするほど芳しかった。 抵抗の声もむなしく、三木ヱ門はの秘部に顔を近づけると唇をたて、舌を這わせた。 たっぷりとねめつけ、唾液を付けることに夢中になる。 しゃらしゃらとした音に、湿り気を帯びた音が部屋の中を満たしていった。 嫌がる声が、次第に収まり違った声になるにはそう時間はかからず、三木ヱ門は満足気に顔を上げると袖口でグイッと自身の唇を拭った。 「私は…に、ずっとずっと私を見てほしい」 「あ、み、き」 絞り出すような、『好き』以外の、言葉。 は田村三木ヱ門の本音に、胸が苦しくて鼻の奥がジンッと痛んだ。 「三木、私、好きだよ」 見上げていた筈の月が、三木ヱ門の背後に重なり煌々と光っている。 月明かりを受けた三木ヱ門の色素の薄い髪が、淡く輝く。 ゆっくりと、は髪に指を絡めた。 しゃらりと、鎖がなった。 終 |