罠の中へ






































音も立てずに入った部屋の中で私を待ちうけていた光景はまさに、絶景。
完全に、私のことを誘っていた。



























朝食の時間だと言うのに、食堂に三木ヱ門がいつまでたってもやってこず、痺れを切らせた私は三人仲良く食事をしていた滝夜叉丸、綾部、タカ丸に彼の所在を尋ねに行った。
すると、帰ってきた答えは「昨日の夜三木ヱ門は帰って来るのが遅かった」という答えだった。


「は?」
「あ、いやいや!勘違いするなよ!?」
「そうだよ〜?別に女の子の所に行ってなかなか帰ってこないってことじゃないから」
「た、タカ丸さん!あんたは黙っててください!!」
「三木ヱ門は昨日の夜は、蛍で遊んでましたー」


綾部がもくもくとひじきの煮物の中の大豆だけを摘まみ上げては食べながら答えた。
だけど、それで分かった。
なるほど、三木ヱ門はどうやら練習のために蛍でも夜通し撃っていたんだろう。
一瞬私たちの間に漂った不穏な空気が一気に消え去った。


「なんだ、そうならそうって言ってよ。それで、三木はまだ部屋なのね?」
「そうだよー。僕が頑張って起こしたのに、先言っててって言ってさー」
「二度寝二度寝〜」


節をつけて二度寝と繰り返す綾部は小鉢の中に残ったひじきを一気に掻きこんでしまった。


「あー…喜八郎、その食べ方をするなと何度言っている」
「ふぁむふぁまま」


ぼろぼろと机の上に落ちたひじきを、ため息をつきながら眺めている滝をおいて、私はさっさと食堂を後にした。
三木ヱ門が部屋にいるなら、私が行くのはそこしかない!
待っててね三木!

















皆が食堂やら鍛錬やらに出払ってしまった長屋は、ひどく閑散としていた。
つまりはだ……三木ヱ門と私の二人きりということだ。
意味もなく、緊張してしまい手のひらにうっすらと汗をかいてしまった。
ごしごしと袴で手を拭ってから、目の前に立ちはだかっていた戸に手をかけた。
分かっていたが、なんの手ごたえもなく戸がするりと開いた。


「っっ!!!」


な、なんて絶景だ。
心臓が、人生最大のとび跳ねを見せた。


「みき…えもん…さんー?」
「ぅ…ん」


よっぽど熟睡しているのか、頭から布団をかぶって寝入っている三木ヱ門。
ずりあげられている掛け布団から……


真っ白な素足がすらりと伸びていた。


それは完全に三木ヱ門のおみ足だった。
ごくりと、思わず喉が鳴るほどの白さだった。
私の足よりも綺麗なんじゃないでしょうか。


「三木ー?」


小さな声で呼びかけてみても、反応もなく規則正しく上下する布団のそばへとにじり寄る。
きゅっと、つま先に力が入って微かに曲がっている足の指。
むくむくとわき上がって来る悪戯心を止められなかった。


「三木みきみきー」


人差し指を出来る限りぴんと伸ばして、三木の足に触れる。
予想通りにすべすべの肌。
くるぶしを通過して、そっとふくらはぎへと辿り着く。柔らかな弾力がそこに乗った筋肉が、しなやかだと伝えてくる。


「みきすーべすべ」


膝小僧を通り、太ももへ。


「柔らかい…」


その柔らかさをいっぱいに味わいたくなった私は、指に飽き足らず手のひらで太ももを撫で上げた。
ぴくりと反応を返すも、起きる気配のない三木ヱ門。


「お、起きないよね……」


太ももの限界ぎりぎりまで、三木ヱ門にかかっている布団をめくり上げた。
なんていう、白さに柔らかさに、美しさ!
誰もいないということが分かっているが、思わず誰か見ていないか気配を探ってみた。
もちろん、誰もいない。


「い、いただきます」


両手を合わせて、そっとおみ足にお辞儀。
柔らかいその太ももに、頬を寄せた。
自分が、とんでもないことをしているとわかっているのに、我慢できない。
それもこれも、三木が私のことを誘ったから悪いんだ!


「うっ……んぅー」
「ひゃ!?」


迫りくる太もも。
なんと、私の顔は三木の太ももに挟まれてしまった。
心臓はもう爆発寸前。
これは、死んでしまうとばかりに三木の太ももに手をかけて外そうとしたが……


「あ……れ?」


取れない。
取れないのです。


「もしかして……やばい?」


つうっと、冷たい汗が背筋を走った。
その瞬間。





不意に顔に影が落ちたと思うと、上から三木ヱ門の顔がひどく楽しそうにこちらを見ていた。


「み、三木」
「朝から、どうしたんだ
「あ、あいや、その……こ、これは」


ぎゅうっと力が入れられる太もも。
がっちりと捕まった私の顔。
そこに降りてきた三木ヱ門の指先が、頬をなぞりきゅうっと鼻をつまんできた。


……一緒に遊ぼうか?」


にいっと、弧を描いた唇にめまいを感じた。
触れられた唇ばっかりが、熱を持ってしまう。






























フトモモフトモモフットモモ