すねないで
本当は、ずっと二人でいたい。
分かるだろ?
まだ付き合ったばっかりなんだから。
もう、好きでしょうがないんだよ!!
「」
「ん?なに?」
「あ、あの、そのだなぁ……」
「なに?三木」
「そ、その!」
「おお〜い!!」
「あ、はぁい!今いきます〜!」
「う」
せっかく二人きりになって二人で手をつないだり、抱きしめあったりできると思ったのに、
私の儚い夢はあっさりと潮江先輩の声で握りつぶされてしまったのだ。
ごめんね、三木って申し訳なさそうに走って先輩のもとに行ってしまう私の!
私は一人ぼっちでその場に立ち尽くした。
しょぼん。
少し離れた所に先輩とが肩を並べて和気あいあいと話している様子がばっちり見えるし。
ああ、先輩は顔が悪いけど、学園一忍者してるし、6年も忍術学んでて強いし、年上だし、頼りになるし。
私なんかよりも、は潮江先輩のことが好きなのではないか?
そ、そんなことはない!
私だって学園のアイドルだ!
火器を使わせればNO、1!
スタイルだって、いけてる!
なのに、なのに……はどうして潮江先輩に笑いかけてるんだ。
あの愛らしい笑顔を私じゃなくて、どうして潮江先輩に向けてるんだ。
うううう!
「じゃあ、そういうことで潮江先輩、よろしくお願いしますねv」
「ああ、分かってるよ」
「三木〜〜〜!……って、どうしたのよ。そんな座りこんじゃって」
ようやく三木の所に戻って見ればなぜか彼は座り込んで鬱々となにかを呟いていた。
さっき潮江先輩と話す前まではいつも通りの三木エ門だったのに。
私は、三木のつやつやの髪の毛に指をからませて三木の隣にしゃがみ込んだ。
「ねぇ、三木、どうしたの?」
「、は潮江先輩みたいな頼りがいのある男の方が好きか?」
こちらを見ずに、三木はぼそぼそと小さい声でそういった。
ああ、なるほど、合点がいった。
すねてんのね。
三木の頭をなでなでしながらなるたけ甘い声を出した。
「ううん、私は三木みたいな人が好き」
「嘘だ。さっきまで潮江先輩とあんなに話していただろう」
「私、三木の方が先輩よりよっぽど好きなの」
「ほ、本当か?」
ようやく視線を上げてくれた素敵な恋人。
ああ、そんなに涙をためた目で私を見ないで。
胸が苦しくってしょうがなくなるの。
「っ、」
三木が私の体に甘えるようにすり寄ってきて、急に二人の距離が縮まる。
「ね、」
なんてずるい人。
彼が何を望んでいるかなんて手に取るように分かる。
恥ずかしいけど、私はそれに逆らえない。
私は、目を伏せて三木の赤らんだ頬を包み込む。
「三木」
優しく添えられた彼女の体温が愛おしい。
こうやって包み込まれると私はに愛されてるんだって実感できる。
恥じらって顔をあからめながらは私に口付けをした。
何度も何度も、啄ばむような柔らかな口付け。
そう、何度も飽きることない甘い蜜の味。
「ん」
「はぁ、三木」
唇を離そうとした私に、足りないと言わんばかりに三木は覆いかぶさるように唇を重ねてきた。
さっきまでは私からしていたのに、立場が逆転してしまって、
狂おしいほどに甘美な刺激が二人の間で交わされる。
――ちゅ
ようやく唇が離れた時にはお互いに乱れた息をしていて、我慢なんて必要なのかと動きが鈍った頭で考えてしまった。
それでも、こんなところではいつ誰かに見られてしまうのかわからないからなんとか我慢する。
潮江先輩にでも見られたらことは重大だ!
「ふぁ、三木」
「大好きだよ」
ぎゅうっと抱きしめられ、幸福感がこの体に余すところなくいきわたる。
「部屋、いこっか?」
「うん……でも、委員会が」
しょぼんとする三木に、最高の贈り物を。
もう一度、柔らかく彼に口付けをして、
「大丈夫、今日の三木は私が貰ったから」
「ふぇ?」
「さっき潮江先輩に交渉してきたの」
「じゃ、じゃあ!」
「うん、今日は二人っきりでいられるね」
「〜〜〜!!」
「あはは、ほら、それより早くいこ?」
耳元に「我慢できない」って囁くと、より一層顔を赤くさせた三木が私の手をつかんで走り出した。
かわいい人、本当は我慢できないのは三木、貴方でしょ。
苦笑して、前を走る彼を見る。
今度この埋め合わせに潮江先輩の自主練に付き合うことは彼に内緒だ。
また、すねちゃうから。
「三木」
「な、なんだ」
「大好き!」
「わ、私もだ!!!」
早く、二人でいっぱい愛し合いましょう。
貴方の熱いのを頂戴?
私の全部をあげるから。
終
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