祝福
私だけの秘密の場所で、この両手いっぱいの花を摘んだ。
白い花、黄色い花、赤い花、桃色、水色。
色とりどりの花びらを着物を広げて、抱えるように運ぶ。
そっと落とさないように、走った。
走ると、微かに香ってくる花の匂い。
ああ、この匂いが消えないうちに走らないと。
「………?」
「……や、べ」
お願いだから。
泣かないで?
泣いたら嫌だよ。
「どうしたの?」
首を振らないで。
まだ、諦めないで。
私、ずっと一緒にいたいんだよ。
ねぇ、。
泣かないで。
走って走って。
ようやく見つけた。
ああ、木の下でうずくまってやっぱりまだ泣いている。
息が苦しいけど、私はの方が自分なんかよりもよっぽど大事だから。
走った。
「」
涙でぐずぐずになった顔だって、私は大好きなんだ。
でも、やっぱり君には笑っていてほしい。
私は、この両手を空へと昇らせた。
はっとは目を見開いた。
空から幾千幾万もの花びらが、へ降り注ぐ。
はらはらはらと、色とりどりな花びらが、瞬いてゆったりとへと降り注ぐ。
ほら、風も突然やんだ。
かぐわしい香りが、君へと降り注ぐ。
「、大丈夫」
「あや、べ」
目にいっぱいに涙をためたにほほ笑んだ。
「ぅ、あ、や…べ」
「、よしよし」
後から後から降り注ぐ花びらの中、私たちはお互いを抱きしめあった。
優しい匂いが私たちを包み込んだ。
明日なんて分からない。
君にたくさんの花を降らせよう。
空いっぱいの花びらがを祝福するから。
終
辛いことなんて、私がなくしてあげたい。
でも、できないから、代わりに花びらにしてあげたかった。
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