一緒に


















ただ単純に、墓穴のようだと思った。
ぼんやりと穴の中から空を見上げる。
ああ晴天なり。
手を見ると、泥がついていた。
爪の隙間にも泥が入ってる。


「おやまぁ」


泥が入ってるついでに、素手で目の前の泥を掻いた。
しばらくすると、柔らかい土はどんどん崩れていき、もう一人くらいは入れるほどの大きさの穴になった。
邪魔な土はうまく外に出して、誰かが穴を掘ったことが分からないように隠した。
もう一度、穴の底に腰をおろした。
空が、見える。
私は墓穴の底で、膝を抱えた。
もし、私が死ぬのなら、こうやって膝を抱えて埋められたい。
そうしたら、自分の体がどこにあるのか忘れずにいられる気がするから。
すうっと、息を吸うと強い土の香り。
なんだか、とてもさみしい。
なんてさみしいんだろう。


「綾部?」


空を見上げると、が私を見下ろしていた。
そうだ、それなら寂しくない。


「綾部、こんなところでなにやってるの?」
「ねえ
「ん?」
「ちゃぁんと私のことを看取ってね?」
「はあ?」
「私はここにいるからね」
「……ここって、この穴はなんて名前なの?」
「これは、墓穴でーす」


急に困った顔をする
ちいさく、ばかと云った。
私には聞こえてるよ?


「馬鹿ではありませーん」
「はいはい、分かってるわよ」


でも、そんな悲しいこと言わないでよと、困った顔のまま笑った。
そうか、それなら。
腕をのばして、を穴の中に引きずり込んだ。
声を上げて落ちてきたを後ろから抱き締める。
やっぱり、二人じゃ少し窮屈な私の墓穴。


「も〜!綾部、ドロドロになっちゃったじゃない!」
「ん〜……」


ぎゅうぎゅうと顔をに押し付けた。
さっきとは打って変わって土の匂いよりも、の香りが私の肺いっぱいに広がる。
安心する。
そうだ二人で入れば寂しくない。


、やっぱり看取るよりも、私と一緒に墓穴にはいって?」
「……ばか」


そう言って、は私の腕に手を重ねると、強く握った。
ひどく、幸せな気持ちになった。


「一緒に入ってくれる?」
「…いいけど、その前に他のことしようよ」
「いいよ」


を抱きしめたまま、まず何をしようか考えた。


「じゃあ、まず、お風呂に入りまーす」
「うん、そうだね」


くすくす笑うがかわいくて、後ろから頬に口付けた。


「もちろん、も一緒に」
「ええ!!?」

































綾部はただ、思ったことをそのまま口にする。
特に、深い意味はない。