逸らした視線がわざとだと、一人で笑った。
こんなにも、辛いだなんて。君のことをまともに見れない瞬間が、あるなんて。


「別れよう」


その一言を口にすると、もう後戻りはできなかった。
味で例えるならこれは、苦みだ。
喉の奥はやたらとイガイガするし、空気なんてうまく吸いこめない。
そのくせに、この口はまるで止めを刺すかのように残酷な一言を紡ぎだす。


「もうさ、別れよう」


この身を切り刻んだ言葉は、のことをどうしてしまったのかも考えられずに部屋を出た。
もう、一緒にいられない。体が勝手に動いていた。
後ろ手に閉めた戸に背を預けて、呆然とつぶやいた。


「嘘だろ」


馬鹿みたいに青すぎる空が、今にも何かの拍子に堕ちてきそうなほどに視界を埋め尽くしていた。俺はになにをした。
なにに変えても大事にしたいと誓ったのはいつだった。
あいつのことが欲しくてしょうがないと、夜も眠れなかったのはいつだ。
いつだって、俺はが……


「……くそ」


行き場のない想いは留三郎の中をぐるりと回転してからとどまった。
留三郎は忌々しく己の腹へと拳を叩きつけてから、歩きだした。

















抱きしめてやりたい手を、遠ざけて閉ざしたのは他でもない俺自身だった。