最期
茜色。
灰色の光景。
体が、重くて仕方がない。
最近はついていないことばかりだった。
けど、ここまでついていないだなんて。
これもそれも、食満のせいだ。
食満の不運が私にも感染したんだ。
こんなことならキスするんじゃなかった。
きっと、食満菌が私の口から入ってこの体の隅々まで犯していったに違いない。
「は、はは……馬鹿みたい」
皮肉な笑みを浮かべて重い足をまた一歩、進めた。
なんのことのないはずの実習だったはずなのに、私の体にはいく筋もの切り傷が刻まれていた。
思った以上に深いその傷からだらだらと血が流れていく。
自分で処置するには深すぎるし、数も多すぎた。
冷えた体から流れているくせに、その血ばかりは温かい。
「お風呂、はいらなきゃ」
血が流れる感触は気持ち悪く、ぞくりと肌が粟立つ。
はは、お風呂一緒に入りたいな〜なんて…って食満が言ってくる顔が不意に思い浮かんできて、私も一緒に苦笑いした。
思いっきりあんたのせいだって言って、ビンタしてやるんだから。
それにしても、寒い、な。
「む……り」
ばたりと、灰を巻き上げては地に倒れ込んだ。
歩けないもう歩けない。寒いんだ。寒くて仕方がない。
ああ、こんなところで倒れて私馬鹿みたい。
馬鹿みたい。
こんなことなら食満にちゃんと「愛してるよ」って言ってやればよかった。
どうしてこんなに寒いんだろう。
嫌だな。
ねえ、食満のせいだよ。
食満……食満……どうしてここにいてくれないの。
「とめ…さぶ、ろぉ……あいた……い」
きっと、最後に願った願い事が叶うのは夢の中だけで、ここは無情にも現実で、私の願いはどこにも届かない。
「」
都合のいいこの脳が都合のいい幻聴を聞かせてくる。
だけど、私にはそれで丁度いいのかもしれない。
だって、私はただの女の子だし。
「とめ……」
「」
だから、それで丁度いい。
目を閉じると、食満が泣いているのが見えた気がした。
「 」
終
胸が苦しくってしょうがなかった。
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