言い訳
































背中から、骨が軋む音がしたのは気のせいじゃない。
どん、と強く無様にも音をたてながらは床に倒れた。


「痛い……仙蔵のばか」
「馬鹿だと? 私が何をした?何もしていないのに、お前に馬鹿呼ばわりされるほど私は馬鹿ではない」


それでも、が倒れ込んだのは確かに仙蔵のせいだった。
仙蔵が手を伸ばした瞬間にはまるで殴られでもしたかのように、倒れ込んだ。
いや、後ろへ避けた。
なんの気なしに伸ばされた、仙蔵の手から逃げるように。
おびえるように。
飛びのいた。


「まあ、貴様に馬鹿と呼ばれた所で痛くもかゆくもないがな」


逆に、そそる。と、聞こえたのは気のせいだったのかもしれない。
その証拠に、仙蔵は普段と変わらない表情での首筋に触れていたのだから。


「ひっ……知ってる?仙蔵のやってること、なんて言うか」
「愛情表現だ」
「違う」


の即答に、ようやく仙蔵の唇に笑みが浮かんだ。


「強姦っていうんだよ」
「……」
「互いが望まない、行為を強要するあんたの行為は強姦だ」


首を掴んだ手には少し力を込めて、たっぷりの愛情を込めて仙蔵はの唇に噛みついた。


「んんん!!!」


頑なに閉ざされた歯列を舐めあげ、なぞり、覚えこまされていた快感にの反抗はあっけなく陥落する。
緩やかに開いた隙間から舌を絡め取られ、酸素を取られ続けくらくらとめまいを覚えた。


「んっ、んん……」


鼻から抜ける吐息に答えるように、仙蔵は唾液をたっぷりとの喉に流し込んだ。
それを、否応もなく飲みくだすとようやく唇を離してもらえた。


「はっ、はぁはぁ、さい、低」
「ふ、最高の間違いだろう?」


ぺろりと、紅い舌が唇を舐めあげるのを下からは眺めていた。


「強引にでもしないと素直にならない癖に」
「ち、違う!」
「それとも、強姦されているという状況に酔いたいのか?」
「違う、」
「ああ、分かった。こう言って欲しいんだな……」


仙蔵の両手がの襟元を掴み、半ば強引に脱がした。
サラシで巻かれた胸が露わになる。隠しきれない膨らみが、曝される。


「愛しているぞ、


めったに聞かない一言だけで、は自分の欲望が潤うのを感じた。


「仙蔵、ほ……しい、よ」


自分よりも長い髪の中でだけ、そう言えた。