見えてるけれど、ない 揃いの制服を着て、初めて背を並べたのはもうずっと前のことだ。 こうして三人で寝ころんでいると、あの頃のことばかり思いだしてしまう。 笑顔でよろしくなと手を結んだ日も、今は懐かしい。 「文次郎ー、何笑ってるんだよ。気持ち悪いぞー」 「うるせー」 「うわぁ、文次郎にうるせえって言われちゃった。留ー、今度の授業二人っきりでチーム組んで文次郎のことぼこぼこにしてやろう?」 「ああ、いいかもな」 俺と食満の間で寝ころんでいたは、留三郎の方へと首をひねると二人で声を立てて笑いだした。 なんだか、それが悔しくての頭巾を掴んで引っ張った。 「うわっ!?」 「そんなことしてみろ?お前ら二人とも相内覚悟でぼっこぼこにしてやるからな」 「はっ!お前なんかに俺とがやられるとでも思ってんのか!?」 「ばかたれ、おまえらの実力ぐらい……手に取る様に分かるってんだよ。な?」 すると、途端に慌ててこちらを振り返る。 切羽つまった瞳で俺のことを見つめてくる。 そんなに余裕たっぷりに意地悪く笑みを送った。 「お前、この前食満の大事な金槌、池に落としただろ?」 「だあああああああああああ!!!」 「な、なんだとおおおお!?」 「も、も、も、文次郎!!い、言わないって言っただろ!?」 「しらねぇなぁ。敵の戦力を事前に削っておくのは当たり前だろ?」 転がったまま、俺の胸倉を掴んで必死に泣きついてきたの背後で、怒りに満ち満ちてひきつった表情の食満がゆっくりとの頭へと手を伸ばしていた。 分かっていながら、あえて黙っている俺。 「〜〜〜〜〜〜!!!!」 「ひぎぃああああ!?ぶっ!!」 の顔面が俺の胸に激突した。鼻がつぶれたのか、痛そうな声を上げる。 「おうおう、どうした?お前ら仲間割れか?」 「お前だったのか!通りで富松のやつが知らないって青い顔するわけだ!どうしてくれんだ!錆びちまったんだぞ!?あの金槌!」 「ご、ごめんーーー!!」 ぎゃあぎゃあと騒ぎ出して、のことをとっちめようとする食満の手から何とか逃げようと、身の軽さを生かし、ころころ転がって身をかわしていく。 そのうち、それだけではかわせないと判断したのか、上体を起こしたはごめんと叫ぶように繰り返しながら攻撃をかわし続ける。 食満の声も段々と笑いを含んだような声になっていき、次第にそれは手合わせの様になっていた。 ちっと、思わず舌打ちをしている自分に驚いた。 どうしてだ? 二人に嫉妬? 「………ありえねぇ」 ぶるりと、頭をふる。世界が一瞬にしてぶれて、再び視線を二人へと戻すとまだ二人は、喚きながらまだ、ぐるぐるとまわっていた。 くそ、なんでだよ。 「ーー!!」 すると、忍術学園の方から丘を登って伊作が手を振っている。 その瞬間、食満もも動きを一斉に止めた。 伊作だと分かるとは弾かれた様に飛び上がって、伊作の方へと走りだした。 の背中しか、もう見えなかった。 「おい、食満」 「あ?」 「なんで、に一発入れないんだよ」 「………入れるわけねぇだろ?お前、馬鹿だろ?」 なんとも、不思議そうな顔をしてこちらを見てくる食満に、無性にいら立った。 「だぁー!!!」 「あ?文次郎どうしたんだよ」 「うるせぇ、バカタレ!」 目を閉じると、瞼の裏に太陽が当たって暗いんだか、白いんだか訳がわからねぇ。 「食満、仕方がない。そいつは鍛錬のしすぎで頭の中まで手裏剣が詰まっている」 するりと、忍びこんできた声に胸糞悪くなって目を空けると、案の定仙蔵が悠々と近付いて来るところだった。 仙蔵は、さも楽しいと言わんばかりに笑みを浮かべている。 「文次郎、貴様まだ分からんのか?」 「あ?」 「仙蔵、なんのことだよ」 食満へと目配せをする仙蔵だが、食満は不思議そうに首をかしげるばかりだった。 「よもや、貴様も変な所は気付いていなかったのか」 「はぁ?」 やけに機嫌がいい仙蔵は、普段より饒舌だ。 俺のことなんて、てんで無視して仙蔵は食満に言い放った。 「こいつはな、が女だってことにまだ気づいていないってだけだ」 「「は?」」 終 まさかの男装。 にぶもんじ。 |