不器用
久々のデート。
二人っきりのデート。
いつもなら、委員会だからとか、戦輪の特訓だからと言って一緒に出かけることは少ない。
だから、いつも以上に身支度にも、おしゃれにも力が入ってしまう。
滝がくれた組み紐で髪を結いあげて、にっこりと鏡に映った自分にほほ笑みかけた。
「よし!」
自室を慌てて飛び出す。
待たせてしまうとか、滝は待つの嫌いだろうな、とかよりも早く会いたかった。
「、町に行くと言っても、町で何をするのだ」
「ん〜、なにしよっかぁ」
私のほほは緩みっぱなしなのとは対照的に、滝は少し不機嫌そうだった。
ただ、二人きりでどこかに出かけられるだけでうれしくて、特に何がしたいというのはなかったのだ。
だから、町に行って「何」をするかと、滝に問われてようやく何をしようかと考え始めたくらいだった。
「あ、この間先輩から聞いたおいしいうどん屋さんに行きたいかな?」
「……私は嫌だ」
「えー、じゃあ、しんべえから聞いた甘味処で甘いもの食べたい!」
「嫌だ」
はたと立ち止まる。
滝も立ち止まる。
なんだこいつ。
「な、なによ!嫌だって!?」
「私は嫌だから、嫌だと言ったまでだ!」
「じゃあ、滝はどっかいきたい所でもあるの!?」
「ない!」
胸を張って言われても。
ぐっと、怒りがこみあげてくる。
それなのに、滝はつづけてぐだぐだとしゃべりだした。
「そもそもだな、私は今日は町に出かけたいとは言っていないだろう。がどうしても町に行きたいから付き合ってくれと言うから、この学園一優秀な滝夜叉丸がしょうがなく、付き合ってやってるのだろう!私は学園の人気者だからなかなか時間などとれないのに、来てやったのだ!それなのに、まさかお前用事がないのか?」
「っっ!?こ、こ、こ」
「なんだ?こ?」
「このぉアホ滝ぃいいいいいいいいい!!!!!!!」
もう、後ろを振り返ることもなく、私は闇雲に全力で走った。
鼻の奥がツンと痛く、じわじわと視界がにじんでいった。
というか、そもそもあの学園一性格がカスな滝夜叉丸と付き合おうというのが間違いだったのかもしれない。
町をとぼとぼと一人で歩いていた。
もう、泣きやんではいたが、まだ目は赤いし、ひどい顔をしているに違いない。
「ばか、滝夜叉丸の、ばか」
ぶつぶつと呟きながら、目的もなく歩いていく。
「あっれ〜?先輩?」
「ん?本当だ!先輩だ!」
「せんぱ〜い!!」
しんべえに教えてもらった甘味処の近くを通った時だった。
らんきりしんの声が私のことを呼びとめた。
私は、また滲みだしていた涙をぬぐって、三人に手をふる。
三人とも笑顔全開でこちらに走ってきた。
「せんぱーい!先輩も町に来てたんですか?」
「うん、ちょっと気晴らしにね」
「あれ?滝夜叉丸先輩とは一緒じゃないんすね」
「う、うん」
「せんぱーい、それよりも一緒にあんみつたべましょー?」
しんべえが手を上げて提案。
「うん、いいよ。せっかくだから私が三人にあんみつ御馳走してあげるv」
「「「やったぁあ〜〜!」」」
本当は、胸の中がもやもやしてて本当にどうしようもなかった。
だけど、無邪気にあんみつを頬ぼる三人にすごく癒される。
「おいしい?」
「とってもおいしいです!」
「もう、先輩と一緒に食べれるだけでもおいしいでーすっ!」
「きり丸、おせいじはいいから、ゆっくり食べなさい」
「ふぁーい」
「せ、せんぱーい」
「あ、しんべえいいわよ。すいませーん!あんみつもうひとつ!」
「わぁい!ありがとうございまーす!先輩大好き!」
まっすぐぶつかってきてくれるこの子たちと一緒にいるとホッとする。
……滝と一緒に食べに来たかったなぁ。
思わず、涙がこぼれてしまった。
「、せんぱい?」
「ど、どうしたの先輩!?」
「お、お腹でも痛いんですか!?」
「あ、や、ち、違うの!!ご、ごめんね!」
心配そうに私を気遣ってくれる三人。
あんまり優しくされるから、涙がなかなか止まらない。
背中をさすってくれる乱太郎くんの小さな手があったかい。
「!!!」
「あ!滝夜叉丸!!」
「先輩を泣かせたのはお前だなっ!?」
「あ〜!うるさーい!こい!」
ぐいっと、引っ張られる腕。
私はどうしていいのかわからなくて、ぽかんとしてた。
まるで小説のなかみたいに、滝は私を奪い去って甘味処から駆けだした。
ただ、私は先にお金払っといてよかったと、こぼれる涙と一緒に考えていた。
きっと、乱太郎は察しのいい子だから、気付いているだろう。
それよりも、
滝に握りしめられた右手が痛い。
町はずれの、大きな木の下でようやく滝は走るのをやめた。
私も、滝もだいぶ息が荒くなっていた。
「な、に…するのよ、滝」
「この、ばかもの!なぜ勝手に走って行った!?」
「な、た、滝がひどいこと言うから……」
一年生のおかげで柔らかくなりつつあった心がまたくじけそうで、再び頬を涙がつたった。
「わ、私がひどいことをいつ言った!」
そんなことを言うために追いかけてきたのか。
失意しか湧いてこない。
私、本当に滝のこと……
「私、楽しみにしてたの」
「は??」
「滝と二人きりになれるときなんてほとんどないから」
「っ、」
「だから、ただ二人でデートできるだけでよかったのに」
「」
ぼろぼろと涙がこぼれおちる。
歪む滝の顔。
せっかくこの日のためにと、準備しておいた着物はもう涙でぐちゃぐちゃだった。
「私たちさ、一緒にいる意味ないよ。」
一番言いたくない言葉を口にした。
「私たち別れた方がいい」
胸が張り裂けた。
「だから、滝。手、放して」
うつむいていた滝が、突然顔をあげた。
握りしめられてる腕が痛い。
「、私のことが嫌いか?」
「嫌いじゃない。大好き。でも、滝は私のことどうでもいいみたいだから」
だから、悲しいの。
と、言った。
ずっと言えなかった。怖いから。
嫌いよりも、興味ないって言われたら辛いから。
すると、滝のつりあがった目からぽろりと、涙が一粒。
「ば、ばかもの…わ、私がいつのこと嫌いだって言った」
「言ってないけど、私といても楽しくないんでしょ」
「そんなことはない!!」
ぐっと引き寄せられる体。
痛いほど抱きしめられる。
「私は、と一緒にいたい!」
「だって、町にも行きたくないって!」
「そうだ!町に行ったら他のやつらにと一緒にいるのを邪魔されるのが分かっているのにどうして行きたいと思う!」
「え?」
「うどん屋に七松先輩たちがいたら、は先輩たちのお気に入りだから盗られてしまうし、甘味処になど行けば、一年は組の三人がいたじゃないか!そうしたらにかまわれたくて、私がいたってあいつらは寄ってきてしまうじゃないか!」
ぎゅうっと、滝の腕に力が入る。
「私は、を独り占めしたいんだ」
「た、き」
「今日だって、私が贈った組み紐をつけてくれててすごい、う、嬉しかった」
また、涙がこぼれた。
手を、滝の背に回した。
「私は、が好きすぎるのだ」
「私だって、滝が好きすぎて、困る」
私の大好きな、不器用な人。
私たちはお互いに甘えるように、体を摺り寄せた。
「すまなかった」
「滝大好き」
「私は愛してる」
終
おがわ芯さん!
1000ヒットおめでとうございます!
そして、微妙な夢でごめんなさい!
orz
押しつけて逃げる!
お持ち帰りは芯さんのみおkですv
(おけま)
「ん?滝何か…・」
「っ、好きだ!」
「当たってるけど…」
「〜」
「あっ!や!た、滝!!」
「愛を確認しあわなければっ!」
「ここ外だから!」
「への私の愛はおっきいのだ!」
「意味わかんないし、押しつけないでぇ!」
「〜!!」
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