混ぜるな危険!































それにしても、たかだかタカ丸と綾部に会おうとしているだけでこんなに苦労するなんて。
全く持って、心外だ。
曲者には会うは、ちょっと変になってる先輩たちに捕まるわ…。
私ってばこんなに運悪かったけな?


「ねえ、ちゃん」


そもそも、こんなみみとしっぽが生えてくる時点で運が悪いのかもしれない。
いや、運がいいの?どっちなの?
でも、確実にこの異常事態のせいで、学園入学以来初めての大騒動に巻き込まれてしまっている。
助けてください、誰でもいいから。


ちゃーん、かわいいなぁ。猫さんにゃんにゃん」
「ん?」


はたと、自分の世界から戻って来ると、耳が引っ張られてる。
座ったまま上を見上げると、太陽の光を受けてきらきら光る髪の毛が見えた。


「あ」
「ブラッシングしちゃおー」
「た、タカ丸!?」
「んー?」


驚く私を他所に、タカ丸は勝手に私の髪をすいたりみみをなでたりしはじめた。
抵抗するきっかけを失った私は、とりあえず大人しくしていることにした。
あんなにも探していた筈のタカ丸だったけれど、いざ目の前にしてみるとどう話を切り出せばいいのかわからない。
うんうんと、悩んでいると、いつの間にか首もとで微かな鈴の音。


「あ」
「わーい、ちゃんはやっぱり赤が似合うね」
「って!!タカ丸!!!なにつけた!!?」
「首輪だよ〜」


すっかり忘れていた。
タカ丸が最近常備していた赤い首輪。
無理矢理でもつけてこようとするから、気をつけていたのに気付かなかった。
これが…押してダメなら引いてみろ!ってことなの!?


ちゅ


「ぎゃ!?」


急に、後ろから顔を寄せてきたかと思うと、ほ、ほ、ほっぺたにちゅうしてきた!!?


「ふふ、ちゃんかーわい。真赤だよ?」
「だだだ、だって!タカ丸がきゅ、急にちゅうなんてしてくるから!!」
「えー……だめだった?」
「だ、駄目に決まってるでしょ!」


顔が死ぬほど熱いのに、タカ丸は全然気にした様子もなくへらへらと笑っている。
ごしごしと、患部をぬぐっていると不思議そうな顔をしてタカ丸がこちらを見つめてくる。


「えー、ちゃん変なのー」
「いやいや、変なのはタカ丸の方だからね!」


すると、タカ丸は私の髪を手で梳きながら頭上の耳に顔を寄せた。
タカ丸の胸元で視界がいっぱいに埋まる。
あ、鎖骨きれいだなあ。だなんて、見当外れのことを考えていると小さな声ながらも獣耳力により、はっきりとタカ丸がなにを言ったのか聞き取れてしまった。


「あんなに僕の咥えて離さなかったのにー」
「え……離さない?咥える?は?なにを?」
「ナニを」
「ナニを」
「うん、ナニを」


首もとの鈴がけたたましく音を立てる!
だがしかし!そんなことを気にしている余裕もなく、私の体はガクガクと震えていた。
例えるならば、ボルケーノ寸前の活火山だ。
裏山噴火と見せかけて、大噴火だ!


「ぎゃー!言っちゃったー!僕恥ずかしい〜」


ぎゅうっと、抱きついてくるタカ丸を防ぐのすら忘れて私はガクガクしている。


「た、タカ丸?」
「なに?ちゃん?また、僕のち…」
「どぉおおりゃあああああ!!」


その瞬間、美しい曲線を描きながらバナナが宙に舞った。
私の、炸裂右アッパーがタカ丸の顎にお見舞いされたのだ。


「そういうこと!嘘でも言ったら怒るんだからね!!!!」


タカ丸が聞いていても、聞いてなくてもいいでしょう。
タカ丸の異常行動は、どうやら妄想と現実をごちゃまぜにした結果だったようだ。
私は、ふるふる震えながらも、足元で完全沈黙したタカ丸に堂々と宣言した。


「オカズにしててもまだ許せるけど!現実と妄想を混ぜるな危険!」




































危ない所でした。
もう少しでばれてしまう所だった。
危機回避。