ひそむのが得意です きゅっと三木ヱ門の腕に力が入って、体が彼の体にぴたりと密着してしまう。 普段そんなに意識してなかったが、なんだかたくましく感じる三木の胸板にどきりとしてしまった。 でも、当の本人はがうっすら頬をそれで染めているとは気づいていなかった。 ぎりぎりと余裕の笑みを浮かべている竹谷を睨みつけることで必死だったのだ。 どんなに自分が火器を扱わせればナンバーワン!と自負していても、一年間の違いがある。 どうしたらこの状況を打破できるのか三木ヱ門は必死に考えていた。 「さあ、そのくぁいいにゃんこをこっちに渡してもらおうか〜?」 「ぜ、絶対に嫌です!」 「あ〜?お前に生き物のいろはが分かるのか?」 「うっ」 「お前にを満足させられるのか!!!?」 どーんと、団扇でこちらをさしてくる竹谷にうっと言葉が詰まってしまう三木ヱ門。 た、確かにがこの状況になった今、最大限にの生態を理解しているのは目の前の生物委員長かもしれない…… だがしかし! 「フフフフフ……竹谷先輩」 「うっ…な、なんだ」 三木ヱ門はすりすりとの頭に頬ずりをした。 「私には愛があります!!!!!!!」 「な、なにぃいいいい!!!?」 ちゅ、との髪に口付けを落して、先ほどと一転自信に満ちた目をしていた。 それを見た竹谷はガーンとショックを受けて、がっくりと膝をついてしまった。 「あ、愛……だと」 「そうです!竹谷先輩はの体のことを知りつくしていたとしても、のことは知らないじゃないですか!私は…私にはと過ごした濃密な時間がある!!」 下をうつ向いていた竹谷が顔をあげると、目じりに光が。 「フッ…田村、俺は大切なことを忘れていたようだ」 「竹谷、せんぱい」 「俺はぁ、完敗だ。俺はにゃん子属性に我を忘れていたようだが、そうだ……生き物を飼うのに大切なのは愛だ!!!!!」 「うっ……せ、せんぱい!」 「田村ぁ!!」 一方、がしっと、熱く握手を交わす二人を退屈そうにみているだった。 完全においてけぼりをくらっている。 「ねー、三木ぃ、私行ってもいい〜?」 「田村ぁああ」 「先輩〜〜!!!」 さっき一瞬でもドキッとした自分が悔しい。 なんだこの二人。 なんだよ。 何よりも…… 「私猫じゃないからね?私人間だからね?そして、三木ヱ門と過ごした濃密な時間ってなによ!」 そんな一人突っ込みも、青春まっただ中の二人には届かずさみしく響くだけだった。 「だ〜〜!!!もういいよ!私行くから!」 ぷいっとそっぽを向いてはまた歩き出した。 「も〜、タカ丸も綾部もいないし……変態ばっかり集まってくる、ん?」 不意に気配を感じて、遠くに目を向けると人影が見えた。 まためんどくさいことになると、は慌てて近くの茂みに身を隠した。 「って、んぎぃぃにゃぁあんむぐ!?」 茂みに身を滑り込ませたのはいいが、なにか柔らかいものの上に乗っかってしまった。 驚いて下を見た瞬間更に驚いた。 見知らぬ人の上に乗っかっていたのだ。 大声を上げようとした口をその男の大きな手でふさがれてしまった。 「ふぁんむぐぅぐぐむ〜!!」 「おっとと……これまた珍しい生き物が」 怖かったし、暴れようと思っても下から体を押さえつけられてどうしようにもない。 ていうか!恥ずかしいんですけど! なんで、私知らない人のおなかの上に馬乗りになってるの!? そして、この人包帯ぐるぐる巻きで…… さっと、嫌な予感がの背筋を走った。 「怖がらせてしまったみたいだね」 あれだ。前に学園にきた曲者だ! 怖いと思ったけど、片方だけ見えてる目で困ったように微笑んだその人を見てなんだか本能的にあ、大丈夫と変に安心してしまった。 暴れるのもやめると、その人の手がわしわしと頭の上の耳の辺りをなでてくれる。 なんだかあったかくて気持ちよくて、思わず目を細めた。 「ん〜むぐ〜」 「はは、これはかわいい猫ちゃんだね」 しっぽがたしたしと、右へ左へと揺れる様をみて嬉しそうに声を上げてくれるこの男。 「手を離すが声は上げないね?」 こくこくと頷くと、笑みを浮かべてその人は私の口も解放してくれた。 「ふぁうっ、わ、私はね、猫じゃ…ん、ないです」 「ほう、じゃあ君の名前は?」 私は両手をその曲者の胸について思わずもっと撫でてほしいと頭上の手にすり寄ろうと、体が動いてしまう。 なんでだ!こんなこと猫じゃないからしないのに! な…なんでか体が勝手に動いてしまう。 「で、す」 「私は雑渡だよ」 なんて、気持いい手だろう。 「よろしくね、ちゃん」 にこぉっと、おとなの癖に屈託なく笑う人だなぁと、細めた眼で見ていた。 「とりあえず、ちゃん。私はこの状態はとっても嬉しいんだけど、ずっとこのままのわけにもいかないからどいてくれるかな?」 「え?……あっ!は、はい!!すみません!」 はっと我に返って、雑渡さんの上からどいた。 くつくつと咽喉を鳴らしながらそんな私の様子を見て雑渡さんは笑っている。 恥ずかしくて、気まずい。 「あ、雑渡さんって……忍者ですか?」 「ほーらほら」 「わっ!うっ、はっ!!」 「あっはっは〜、本当猫だねぇ」 ぶちりと雑草をとって私の目の前でちらちらとされると、思わず手が伸びてしまう。 「って、ちょっとやめてください!私猫違いますからね!!」 カッときて、思わず雑渡さんの頭をチョップした! ったく……私は猫じゃないんですよ! 「もう、どっからどう見ても雑渡さんが忍者なのは分かりましたが、こんなところで何してるんですか?」 「え?尻尾触らせてくれたら教えてもいいよ」 「……」 無言のまま、尻尾を雑渡さんの方に伸ばすと、わーいと声を上げてその尻尾を興味深々に触って、その触り心地を楽しんでから、彼は茶目っ気たっぷりに質問に答えてくれた。 「偵察だよ」 「え?」 驚いて体が硬直したの頭をもう一度くしゃりとなでると、さっと雑渡さんは背後の壁に飛び上がった。 「ははは〜、かわいい猫ちゃんまたね〜」 「う、あ、え!ね、猫じゃないですからぁ!!!!」 ひらひらと手を振りながら姿を消した雑渡をぷりぷりと怒りながらは見送った。 「あ、曲者逃しちゃった」 続 どこに行きたいか全く不明 誰を出すかも不明 どうしようこれ^^ ただ、雑渡さんはきっと動物に無条件で好かれるといい。 |