ムズムズするからおさわり禁止!














あ〜、なんだか体がだるい。
というか、あれ?頭がぼーっとする?


「絶対昨日のせいだ」


昨日の夜は本当散々だった。
あの後、前かがみになってる馬鹿を放置して、脱兎の如く服を着ると全力で部屋まで逃げかえったのだ。
みな追いかけてこようとしていたが、思いきり走れず(前かがみだし)なんとか、無事に帰還。
だけど、私自身のダメージも大きかったようだ。


「にゃっっきし!」


ずる、と鼻水をすすり、忍び服へ着替える。
先生たちの計らいで朝食は部屋で取っていいことになっていたので、それを食べるとそのまま友達と一緒に授業へ向かった。
くのたまの授業中は、クラスメートの目しかないので、少し恥ずかしかったが私も普段通りに授業を受けることができた。


「はい!今日の授業はここまで」
「「「「ありがとうございました〜」」」」」


今日の授業は午前中だけだったが、もうその時には限界が来ていた。
ぼやぼやする頭に、上昇した体温。
く、苦しいかも・・・。


「ごめん、私ちょっと部屋戻って寝てるね……」
「あ、うん。、無理しないようにね?」
「ふぁーい」


よしよしと頭をなでて、みんなは教室を出て行った。
私は、一人で体を引きずるようにして自室へと戻る。
あー、昨日はあんなにうねうねしていたしっぽも元気なさそうにだらんと垂れていた。



























「だめだ〜、なんかだめ〜」


戸を閉めると、そのままごろりと畳にねっ転がった。
ついでに窮屈だった頭巾もぽいっと取ってしまい、ようやく自由になった耳をぴくぴくと動かした。
それにしても、なんでこんなに体が熱いんだろう。
眠いのでもなくて、頭が痛いわけでもなくて、ぼーっとする。


「にゃ〜……」


猫の啼き真似をしてみるけど、なんだか気恥かしいだけだし。
ああ、一人でよかった。
ごろごろと部屋の中を転がりまわる。


トントン


ちょうど部屋の真中に転がりついたときに、控え目に戸を叩く音がした。


「はーい」
?……私だ」
「……ごめんなさーい、私、わたしださんなんて知らないので」
「なっ!?わ、私だ!田村三木エ門だ!!」
「はいはい、大きな声出さなくても知ってますよー。どうぞ入っていいよ」


だるいから、行儀悪いけどそのままの姿で三木エ門を迎え入れた。
三木は、そんな私の姿をみてちょっと眉間にしわを寄せたけど、何も言わずに戸を閉めた。


「で、三木なにか用?」
「あ、ああ。そのな、」
「ん〜?」


なかなか用件を言えないでいる三木を待ちながら、自分のしっぽを自分の意思で動かしてみていた。
みーぎ。
ひだりー。
うえー、したー。
うねうね〜〜〜。


「そ、そのな……私は、まだの耳としっぽ触ってない」
「……・ああ」


心なしか、三木の顔は赤い。
そういえば、考えて見れば昨日三木エ門は私の耳としっぽに一度も触れなかったんだ。


「いいよ」
「そうか、やっぱり駄目だよな……」
「いや、いいよ。触って」
「ええ!?」


自分から言ってきたくせに、よく人の話を聞かないやつだ。
だるいから、早く触って、早く帰ってもらおう。
おずおずと、隣に座って覚悟を決めたように私の頭の上に手を伸ばした。


さわさわ


「ん、」
?嫌か?」
「大丈夫、ただ、ちょっと触られるとくすぐったいだけ」
「……」


あー、耳くすぐったいけど、それよりも頭がぼーっとしてる方がなんだか気になる。
うつぶせの状態で、隣の三木を見上げてみる。
しっかりと手入れをしておいたおかげで、どうやら耳の手ざわりは最高らしい。
頬を赤く染めて、恥ずかしそうに微笑んでる。


たしっ…たしっ…


尻尾がむずむずした。
なんだ、これ。
頭が、ぼーっと……


「ぅわっ!?」
「三木」


体が勝手に動いていた。
三木の体を押さえつけて、馬乗りになってる私。
なんか、体が熱いの。


「み、き」
「う、あ、!ど、どうしたんだ!?」
「三木、しっぽも触りたいんでしょ?」
「え?」


私の意識と直結した尻尾が自由自在に動かせる。
うねうねと、しっぽは私と三木の間を意味ありげにゆらめく。


「ね、触りたいんでしょ?」
?」


恥ずかしいのか、おびえてるのか、顔を赤らめてる三木にほほ笑む私。


「じゃあ、たくさん触らせてあげる」
「え?ひぃぁ!!!?」


私の黒い尻尾がするりと三木の懐へと入りこむ。
予想外の感覚にびくりと体を震わせる三木が、かわいく見える。
ああ、頭がぼうっとする。
ぴくぴく二つの黒い耳は三木の声を聞き洩らさないように彼の方を見つめてる。
わざと、毛並みをこすりつけて尻尾が三木の胸元を動き回る。


「ほら、いっぱい触って」
「あっ!や、やめ、!!」
「ね、もっと?」
「ひぅっ、あ」


のどが、渇く。
三木の眼もとにじんわりと涙がにじんできた。
でも、触りたいって言ったのは三木だもんね?


「ね?どこがいい?」


こしこしと、乳首のあたりをこすり上げると、普段の三木からは想像もできないような声が上がるのが楽しくって。
もっと、もっとってしっぽも言い始める。
まっすぐ伸ばしていた腕を曲げて、三木との距離をぐっと縮める。


……」
「三木、かわいい」


ちゅうっと思わず三木のほっぺたに口付けを落としてしまった。
本当、今日の私はどうしてしまったんだろう。
ねえ、三木。体が熱いの。


トントン


その時、急に戸が叩かれた。
体をこわばらせる三木。
私はそんなのお構いなしで、しっぽを動かし続けたまま返事をした。


「はーい」
?……私だ」
「……ごめんなさーい、私、わたしださんなんて知りません」
「なっ!?わ、私だ!学園ナンバーワンッ!の滝夜叉丸だ!!」
「はいはい、大きな声出さなくてもわかってるわよ。どうぞ入っていいよ」

(えっ!?)
「なに?三木、ここ私の部屋だもん」


からりと戸が開き、滝夜叉丸が一瞬固まった。
しかし、それも一瞬ですごい速さで滝は中に入って戸を閉めた。


「ななななななな!なにやってるんだ!」
「え?三木が私のしっぽ触りたいって言うから、触らせてあげてるの」
!!た、確かに触りたいっていったが」
「なぁに?」


顔を真っ赤にさせて三木が抗議の声を上げる。
だから、ちょっと強めにしっぽをぐいっとこすりつけると、息をのんで口を閉じた三木。
そうそう、泣かないで三木。
れろっと、にじむ涙を舐めとってあげた。


!ず、ずるいぞ!わ、私だって昨日触ってないからに触りたいのに!」
「ん〜・・・・耳でいいならどうぞ」
「え?」


ほらほら、と耳をぴくぴく動かす。
滝夜叉丸が私の耳に手をのばす。


さわ、さわさわさわ・・・・・


「ふ、ん。気持ちいいさわり心地だな……」


さわさわさわ


「あ」
「ん?なんだ


滝の顔がへにゃんとだらしなくゆるんでる。


「何か……なんかムズムズするからおさわり禁止!」
「ええ!!?」


しゅるりと三木からもしっぽを抜き取ると、私はごろりと再び畳に身を転がした。
呆然とこちらを見ている二人に背中で返事をした。


「もう、おさわり禁止だから出てって〜」
「「えええええ!!?」」


たしたしと、しっぽがうごめく。
なんだか、今日は頭がぼーっとする。





















続く


















どこまでやっていいのか模索中。