なに これ












朝目が覚めると、みみとしっぽがあった。
あまりにも唐突すぎる状況に、ひきつった笑いしか出てこない。
よかった。
一人部屋で。
って、そうじゃない、両手を恐る恐る頭上にすれば、以前猫をなでた時と同じ肌触りの柔らかな獣の毛に触れた。


「や、やだぁ・・・・うそでしょ」


次いで、自分の腰へ手をのばす。
さっきから視界を黒くてしなやかな「あれ」がぴょこぴょこ動いてるのが見えているんだよ。
腰・・・・には何もない。
そのまま素肌を下に下に降りていくと。


「あ、る」


ちょうど尾てい骨のところ。
まさにそこから尻尾が生えてる。
握って、先っぽまでするりと手を滑らせてもやっぱりこれは


「しっぽだよぉぉ」


なんだか、泣きたくなってきた。
今なら、軽くこの部屋を水没させるくらいは涙が出る気がする。
わけわかんない。
というか、神様仏様、私のこと嫌いでしょう!?
ああ、だめ。
本当、勘弁して。
どうやっても、こんなに目立つの・・・・・・人にばれるじゃん。
あほ。
ばか。
うう、でも、これ本当、どうしたらいいの!?
今日の授業どうしよう!
ていうか、授業なんて恥ずかしくてこんな恰好で出れない!!
うんうん悩んでいると、突然戸を叩く音がした。


〜?どうしたの?」
「えっ!!?あっ!!」


慌てて布団を頭からかぶって、しっぽが外に出ないように、しっかりと胸の前で握りしめた。
からりと、戸の開く音がして、友達の足音が近づく。


「ね、大丈夫?生理痛?」
「う、ううん!違う!!」
「え?じゃあ、風邪?」
「そ、そう!ちょっと、頭痛いし、おなかも痛いから」
「本当?無理しないで今日は休む?」
「うん!休まなきゃだめかも」
「じゃあ、先生には言っておくね」
「ありがとう」


口から心臓が出ちゃうかと思った。
何とかこれで授業にはいかなくていい。
でも、どうする・・・・・・・これ、寝たら消えましたぁvっていかないだろうし。
いつ消えるかわからないし・・・。
ちょ、どうしよう!!
あああ!!
というか、新野先生とか来ちゃったらどうする・・・・。
絶対ごまかせないし。先生ごまかす自信もないし。
しょ、しょうがない。
こうなったら先生のところまで走って行って事情を説明して、それで今後の対策を先生と考えるしかない!
私の平穏な学園生活のために!












とりあえず、ちゃちゃっと身支度を済ませると、無理やり袴の中にしっぽを詰め込み、大きな耳を桃色頭巾に押し込む。いつもよりきつめに頭巾を結んで、準備完了。
絶対に、でてくるなよ!みみとしっぽ!
さすがに授業中だから、廊下に人影はない。
校庭の方から実技の先生の声と生徒の掛け声。
授業中ってこんなだったんだ。
ちょっと不謹慎な感じだったけど、お得意の忍び足で静かな廊下を満喫しつつ保健室へとすばやく移動していく。
それでも、ようやく保健室についた時は地獄のマラソンコースを走ったくらいドキドキしていた。
緊張と疲労の糸がぴぃんと張りつめてるのが自分でもわかる。
だからこそ、保健室の戸に手をかけた時は安心してしまった。


がらり


「新野先生!!!!!!!」


思いきり中に飛び込む。
と、その瞬間目に飛び込んできたのは新野先生の白い忍装束ではなく、

紫!

同じ学年の紫!

緊急警報発令!
ぶわっと汗がふきでる。
い、嫌な四人と新野先生が私を保健室で迎えてくれた。


「お、ではないか」
「た、滝。それに三木にタカに綾部じゃない……」
「おやまぁ、どこか具合でも悪いの?」
「べ、別に……あ、あんたたちこそなんっっっ!!!」


一瞬の気の緩みが命取りとはよく言ったもんだわ。
ここにたどり着けたという気の緩みに、私は命取られた。
あんなにきつく縛っていたのに、頭巾が耳力に負けてほどけてしまった。
するりと、落ちる桃色が私の視界を掠めた。


「「「「「……………」」」」」
「あ、かわい〜vちゃんに猫ちゃんの耳がついてるぅ」


ぎゃ、ぎゃあああああああ!!!
いきなり嫌な奴らにばれたぁああああああああ!
感情がいきなり高ぶったせいで尻尾が自由を求めてうねうねと袴の中で暴れ出すしまつ!


「な、!どうしたんだ!は、は、袴もなんかおかしいぞ!!」
「ひぃあっ!!」


というか、私がくすぐったい!
太ももをしっぽにくすぐられて思わず変な声が出てしまった。
涙目になりながら腰紐を少しゆるめて、しっぽを引っ張り出した。


「わぁ、しっぽもだvかわいいい〜〜vvv黒猫さんだv」
「うぅ……にいのせんせぇ・・・・朝、起きたらこんなことに。わ、私どうしたらいいんですかぁ」


こいつらにこの姿を見られたのが悔しいやら恥ずかしいやら私は涙をこぼしてその場に座り込んでしまった。
ああ!なにこれ!!!




















続く