守る事






























穏やかな日差しの中、指先でペンペン草をくるくると回す。
ウサギ小屋の中で、ウサギたちはみんなで立ちあがって鼻先をひくひくさせて狂おしいほどに日差しの中を満たしている花の香りが一体どんな花なのかを嗅ぎとっていた。
赤いつつじをちぎり取って差出してやると、一羽のウサギがすぐさま駆け寄ってきて花の端を食み始めた。愛らしい様子に、思わず頬が緩む。
ああ、そういえばもうすぐ誕生日だったな。春は、だから好きだ。


「竹谷ー」


後ろから呼ばれたって、すぐに誰だかわかる声。
しかも、丁度お前のことを考えてたんだ。なんて以心伝心だ、だなんて一人で嬉しくなってしまう。


「なんだよ、
「何してるのかなー?」
「うさぎのうーちゃんといちゃいちゃしてんのー」


ひくひくと、鼻先を揺らしてあっという間につつじの花はウサギの口の中に消えていった。
丁度、それに合わせたかのようにずしりと背中にの体重が乗っかった。


「へー、彼女の私も差し置いてうーちゃんといちゃいちゃねー…」
「そうそう」
「だけど、今はクソ忙しい時間だって分かってる?」
「わーってるよ」


そりゃ、キミコがまた嫉妬に駆られて逃げ出しちゃったんです!って春先お決まりのセリフを言いながら俺の部屋に走り込んできた後輩がかわいそうだとは思うよ。
だけど、こんなにも今日は気持ちがいいんだぜ?


「でも、ともいちゃいちゃしたいなぁーって」


にかっと歯を見せて笑ってみせると、は機嫌悪そうに眉間にしわを寄せる。
だけど、柔らかいのほっぺたはうっすらと赤く染まってるのを俺は知ってる。
大好きなのことならなんだって分かってるんだ。


「竹谷の髪の毛ぼさぼさ」
「ん?そうか?」


いつだって、恥ずかしい時はこうして俺の髪の毛を指先でいじりながら話を逸らそうとしているって俺が気付かないとでも思ってたのか?


「うん、すごいぼさぼさだよ」
「そっかー、じゃあ、今度が梳かしてくれよ」
「えー…どうしようかな」


話がそれたと、ほっとした顔をした瞬間を狙い定めての体を押し倒した。
柔らかい草がの体を受け止めてくれる。


「だけど、髪の毛は今度でいいよ」
「わ、た、竹谷」
「違うだろ?」
「………はち」
「そ」


のほっぺたに手を添えて、顔を寄せると狂おしいほどに花の香りが鼻先をくすぐる。
まるで、ウサギたちみたいに俺も鼻をスンスンさせてに口付けを落した。
柔らかい唇が自分の唇と触れ合うだけで、胸がいっぱいになるくらいに喜びが満ち溢れる。
どきどきと、うるさいくらいに心臓が叫ぶ。
キミコも大事だけど、の方がよっぽど大事な俺は、これからどうしようかとほんのちょっとの間悩んだ。
すると、くすくすと声を殺しては笑いながら、俺の真似をして俺の頬に手をあてた。


「キミコでしょ?」
「あ〜……うん」
「キミコすぐに探してから、はちの言ういちゃいちゃすればいいじゃん」
「だって」
「私だって、今すぐはちとぎゅうってしたいけど、気になっちゃうんでしょ?」


自分から仕掛けたのに、なんだか申し訳なくって思わず眉が八の字に下がってしまう。
はそんな俺に、下からぎゅうっと抱きついてきてほっぺたにちゅ。


「さ、一緒に探せばすぐだよ」
「おう!」


俺の下から抜けだしたが差し伸べた手を取った。
手を繋ぎながらキミコの名前を呼んで、時々辺りを窺って悪戯するみたいに唇を重ねて。
ああ、なんて俺は幸せなんだろう。


「あ、キミコ!」
「わ!?ちょ、ちょっと!キミコ逃げないでぇ!!」




























あなたのためなら、どんなことだって!