プラグマ(実利的な恋愛)
「たっくぅ〜!本当にない!ないわ、ない!!」
隣に座っている長次に寄りかかりながら喚き散らす。
長次が何も言わないことをいいことに、一人で何かと騒ぎながら、時折長次に相槌を求める。
そして、長次がそのたびにこっくりとうなづくのを見て、満足そうに「そうよね?」と、ほほ笑む。
「それでね、もう、仙蔵ったらなんで私と付き合ってくれたか全くの謎だし」
「いや、私から何も言ってないけどね!あ、あっちから言ってきたんだけどさ」
「その理由の部分がないわけなのよ!だから、友達に聞かれたって私答えられないし!」
そう、彼女が先ほどからわめいているのは付き合っているはずの仙蔵のことであった。
付き合ってだいぶ経つのだが、仙蔵がどうして自分と付き合ってくれたのかが全くの謎であると、
わめいている内容から推測するとそんな内容を騒いでいるようだった。
「ああ〜、だって、聞いても仙蔵全く答えてくれないんだよ?」
「(ぼそぼそぼそぼそ・・・・・)」
「え?なぁに?」
珍しく長次が口を開いた。
まさか、仙蔵がふだん私のことをみんなに自慢しちゃったり、どこが好きとか言っちゃってるの!?
は目をキラキラさせて長次の言葉に耳を傾けた。
「……仙蔵が、お前のこと好きだと言っているのを聞いたことがない」
「え・・・・」
どえらくショッキングな内容だった。
え?私のこと好きで付き合ってんじゃないんだー・・・。
むしろ、あれか?嫌いか?私のこといじめるために付き合ってんのか?
はちょっと考えを巡らせただけで、なんだか思い当たる節が山ほど見つかってしまった。
そうよね…
私、何かといやがらせを受けてる気がするな。
この前だって、委員会の後に二人っきりで会いたいって言うから、嬉しくて飛んで行ったらいきなり足元に罠はられてて、逆さづりにされた。
その上、S法委員会の面子に囲まれて笑われて、でも、最後に二人っきりになったら仙蔵口付けしてくれたし
…ああ、あの時の仙蔵は激しかったなぁvvv
って、違う違う。
仙蔵が私を嫌いかってことだった。
ええっと、他にもおいしいって言うからおまんじゅう食べたのに、なぜかものすごい辛くて、そのあとくれたお茶はものすごい熱くて火傷したし・・・
あと、なんか、6年のあいつらに私とのことを色々ばらしてるらしくて、みんなの私をみる目つきや言動が時々
変だし。(なんというか、何ばらしてるんだろうと、心配になるんだよ。主に文次郎と食満に)
一応、ね?「付き合ってる」からその・・・・そういうことはもちろんあるじゃない?
だけど、やっぱりよく痛い目を見てるし。
目隠しとかさ、やっぱりされてると怖いしさ…。嫌だって言ってるのに、勝手につけられちゃうし。
え?いじめ?いじめなのか?
そういえば、この前は頭巾隠されたし、筆持ってかれたし、おやつに取っておいたかりんとう持ってかれたし……
トントン
「うん?」
ちょっと、自分の世界に入って仙蔵に受けてる数々の嫌がらせを思い出していたの肩を長次がつついた。
長次が指さす方を見てみると、ちょうど仙蔵が同室の文次郎と一緒にこちらに歩いてくるところだった。
「げっ!ちょ、長次、隠れさせて!」
は慌てて、長次の後ろに隠れた。
ほどなくして、仙蔵と文次郎が2人の所へやってきた。
そして、仙蔵が隠れてるのがばればれのへ冷たい視線を投げつけた。
「長次、お前の後ろに隠れてるその馬鹿はなんだ?」
びくりと、体を震わせた。
「ほほう、私が来るからそこに隠れたのだな」
「そ、そんなことないよ」
「……では、出てこい。」
「は、はい」
おずおずと、長次の後ろから出てくる。
ぐいっと、腕をとられて仙蔵に抱きとめられた。
「う、わっ!ちょ、やめてよ!」
「さあ、なぜ長次の後ろに隠れていたか言え」
「や、べ、別に!ていうか命令!?」
「そうだ」
嫌だと、もがいて仙蔵の腕から抜け出そうとするのだが、細うでのくせにがっちりとの体を捕まえてしまっている。
「そうか、私に話せないことか」
「ま、まあね!ね、長次!」
その場にいた誰もが、ぶちりと仙蔵が切れる音を聞いたらしい。
「長次には話せて、私には話せないことか」
「え?せ、仙蔵?」
「では、言わなくてもいい」
「んん!!?」
突然、長次と文次郎がいるのに、仙蔵はに荒々しく口付けた。
息を吸う暇も与えず、の口を犯していく仙蔵の舌。
ここが弱いのだろう?と、ばかりに歯列を幾度もなぞられる。
さらには、唾液を送られ、無理やり喉へと流しこまれる。
飲み込み切れない分が、口の端からこぼれていく。
「ふぁぁっ、や、せんぞぉ」
「どうした?嬉しいのだろう?」
「やぁ、も、やだぁ」
二人の視線が気になるのだが、もう手綱を取られた体は、仙蔵の思うがままになっていた。
「別に、私はこのままここでしてもいいんだぞ?」
「い、言うから!おねがい!」
じいっと、間近で射抜かれるように見つめられる。
「せ、仙蔵が……私のこと嫌い、で」
「ほう、それで?」
「……笑い者にするためにで付き合ってるんだって」
盛大な溜息が一つ。
呆れたような表情をした仙蔵。
「お前は、本当馬鹿だな」
「う…」
「嫌いな者とわざわざ口付けをするほど、私は酔狂ではない」
「で、でも!すぐいじわるするし!」
「いじわる?私は、はそういうのが好きなのかと思っていたが?」
「え!?」
「今だって、嬉しいんだろ?」
耳元で囁いて、の耳にねっとりと舌を這わせると、甲高い声がこぼれてしまった。
「私は、お前のためにやってやるんだぞ?」
「う、うそ!!そんなことないもん!」
顔を真っ赤にさせて、一瞬緩んだ仙蔵の腕の中から全速力では逃げ出した。
「「………」」
「ふふ、かわいいだろう?」
2人を振り返り仙蔵は意地わるい笑みを浮かべた。
「お前らにはやらないからな」
そして、懐から縄を取り出すと逃げて行ったの後を追いかけて行った。
「ありゃ、どっちも好きなんだろうな」
「……ああ」
終
ドSと無自覚ドM。
お互いの関係はとっても実益的。
そして、ここまで反応を返してくれるを仙蔵は手放せない。
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