(なんでここに!?) ろーく (三郎) 「ん……」 息苦しくて眼を覚ますと、首に重みが。 ああ、また雷蔵が寝ぼけてこっちの布団に入ってきたのかな?と、その手をつかんではがそうとした。 でも、予想以上にその雷蔵は頑固で腕をどかそうとしない。 どいてくれるどころか、ぐっと余計に力を加えて余計に息苦しくなってきた。 「お、い……らい、ぞ」 眠たくて重い瞼を上げて隣にあるぬくもりへと目を向けた。 「ん……あ、れ?」 その瞬間一気に眼が覚めた。 ああ、完全に眼が覚めたとも! 隣にいたのは雷蔵なんかじゃない! 「……ん〜」 かすれて、甘えるような声を出して私の肩に頭をすりつけてくる君!!!! ああ、このまま食べてもいいんですか!? 食べちゃってもいいんですか!!? 神様仏様!これは、私へのご褒美ですね!!? 私は決して彼女を起こさないように体をわずかに移動させていく。 そして、お互いが触れ合っている部分へと意識を集中させ、その柔らかさ、体から匂い立つ香りなどなどを余すことなく味わいつくそうとする。 しかし 「んっ……んん」 理性が持ちませんでした。 「ふぁ!?ん!な……あ!?」 眼を覚ました彼女の口を片手でふさいで、ばっちりとウィンクを飛ばした。 「わざわざ夜這いに来てくれたんだから、丁重にお相手してあーげるっ」 「んんん!!?」 (食満) 目を覚ますと、なんでこいつがここに?と、疑問符が頭の中をぐるぐると回った。 私の隣ですやすやと安らかな寝息を立てている、よくよく見知った顔。 同級生の食満留三郎くんではないですか。 仲は良いけど、別に「お付き合い」しているとか、好きとか嫌いとか浮ついた関係でもない。 そう、残念ながらそうではない。 「んん〜〜」 微かに唸っているところをみると、眠りもそこまで深くないらしい。 どうしようかな、起こそうかな。 でも……… 「あったかい……」 最近めっきり寒くなってきたせいで、食満が触れている部分がやたらとあったかい。 うーん……このまま寝ちゃったら絶対朝とか友達が起こしに来た時に大変なことになるだろうし。 とりあえず、この温かさが名残惜しいが体をずらそうとした。 「ん〜」 「あ」 きゅっと食満の眉間にしわが寄ったかと思うと、もぞりと彼の腕が私の腰を捕まえた。 そして、まるで恋人たちが睦言を交わす時のように互いの肩口に顔を寄せ合っている。 「ん……」 「え?あ、う……け、食満?起きてるの?」 確かに、今。 今、私の名前……呼んだよ、ね? 「お、思いあがっちゃうよ?」 「ん〜……」 「…もう」 とりあえず、もうしばらくこうしていても罰は当たらない…かな? 起きたとき、食満はなんて言い訳するのかなんて考えながら、私も目を閉じた。 まだ夜明けまで時間もあるし…ああ、あったかい。 (雷蔵) もぞりと、体を動かすと自分じゃないぬくもりに手が触れて驚いた。 ぱっと、目をあけると目の前によく見知った顔。 そして、いつも思い続けていたい顔。 「あ」 君がいた。 隣で寝ているはずの三郎にばれたら大変だと、用心深く、小さな声で彼女の名前を呼んだけど、全然起きる気配がない。 それどころか 「らい、ぞぉ」 にっこりと笑顔を浮かべてすり寄ってきちゃった。 ああ、もう、どうしよう。 嬉しくて死んじゃうかもしれない。 「ん〜」 自分の息をひそめて、そっと隣の布団の三郎が寝ているか気配を探る。 ね、寝ている……よね? うん、寝てる。 「…ちょ、ちょっとだけなら……いいよ、ね?」 自分にそう言い聞かせるように呟いて、恐る恐る腕を伸ばした。 布団の中で探るように彼女の肩を抱く。腰に腕を回す。 「う、あ」 思った以上に柔らかくて、細い体で、自分の顔があつい。 「……らい、ぞ…だい、す……」 「あ…」 耳元で囁かれたその言葉に、もう一歩も動けなくなって僕の体は固まってしまった。 ああ、彼女が好きでよかった。 もう、どうしたらいいんだろう。 君が好きで、好きでしょうがないんだ。 (文次郎) どすんと、体の上にのしかかってくる感覚。 驚いて目を覚ますと、すぐに聞こえてきたのはすやすやと安らかな寝息。 「ん、だ、誰よ……」 自分の眠りを邪魔されたと、眠い目をこすりこすりのしかかっているそいつの顔を見てみると。 「げ、文次郎」 「んー……」 ギンギンに隈ができてる瞼を閉じて、すっかり熟睡している文次郎だった。 「ちょ、ちょっと、あんた何やってんのよ」 こそこそと小声で言ってみても、まったく起きる気配がない。 もぞもぞと腕を動かして外へと出す。 そして、文次郎の頭に着きっぱなしなっている苦無へと手を伸ばした。 「もう、頭にこんなもんつけたままで…」 苦笑を浮かべて、苦無を外した。 文次郎はよっぽど疲れていたのか、されるがまま。 「ふふ、なんかかわいーかも」 こんな文次郎を見るのは初めてで、なんだかかわいく見えてきた。 ごそごそと、体を動かしてなんとか文次郎を自分の布団の中に入れることに成功した。 すっかり冷えている文次郎の体にぴったりと体を押し付ける。 「まあ、たまにはいいか」 ふう、と息を吐いて文次郎の胸に頭を擦りつけた。 ああ、このまま私も寝ちゃおう……と、思ったその時。 「うわっ!?」 突然寝ていた文次郎の腕が私の体に巻きついてきて、痛いほどに体と体が密着した。 「あ、や、ちょ!」 「ぐ、ぐーぐー」 「文次郎!起きてるんでしょ!?ちょっと!」 「ぐーぐーぐ!」 「あっ!!ん、ちょ、ちょっと!やだ!」 とんだ鬼を自分の褥の中に招き入れてしまったとこのときようやく気付いた。 それでも、見上げた文次郎の顔が真っ赤になっているのを見たら、別にいいかとも思ってしまう自分がいた。 終 拍手ありがとうございますv |