よーん (荒れている唇) (伊作) 「あ、」 「ん?なんですか?」 にっこり笑って、棚から伊作先輩は小さな小瓶を取り出して中へと 薬指を入れた。 そして、キョトンとしている私の唇を、その指で柔らかくなぞった。 「っ!?え!?」 「ふふ、ほら、唇荒れてたから。これ、保湿になるんだよ」 ふわりと、甘い香り。 ほんの少しだけ、舌でふちをなめると甘い。 「はちみつ?」 「そうだよ」 「ありがとうございます」 へにゃっと笑うと、不意に顔に影がかかった。 −−ちゅう 「なっ!!?」 「本当、甘いね」 あ、とれちゃったかな?と言って、伊作先輩は平然と再び私の唇をなぞった。 → (長次) からりと、図書室に入った瞬間、目の前を縄標が横切った。 「わっ!!?」 「・・・・・・・」 そちらを見ると、やはり縄の一端を持った長次先輩。 無言のまま、こちらを鋭く睨んでいる。 「な、なんですか!?」 「ん」 先輩の指差した方向に貼ってあるのは「飲食禁止!」。 「わ、私何にも食べてませんけど・・・・・」 すると、長次先輩は私にすたすたと近寄ってきた。 そして、数回鼻をひくつかせると突然。 ――べろり 唇を寄せて、私の唇を舐めると、そのまま深く口付けてきた。 「んん!!?」 息が苦しくなって、私が長次先輩の胸をたたくと、ようやく唇を離してくれた。 そして、間近で先輩の声。 「甘い」 べろりと、自分の唇を舐める長次先輩に私は思わず声を荒げてしまった。 「く、唇が荒れてたんですよ!!」 → (文次郎) 歩いていると、突然後ろから肩を掴まれた。 「え!?」 ぐいっと強い力で体が反転させられる。 「あ、も、文次郎先輩?」 私よりも背の高い文次郎先輩のことを見上げると、無表情に先輩は私を見下ろした。 「おい」 「は、はい」 そして、突然の口付け。 かみつくように口付けされて、文次郎先輩の舌と一緒にじわりと口の中に甘さが広がった。 文次郎先輩の舌がその甘さを求めているかのように、私の口の中を蹂躙していく。 ――くちゅ れろっと舌を引き抜かれた瞬間、渾身の力をこめて文次郎先輩の頬をひっぱたいた! 「な、何してんですかぁああああ!!」 「お、俺は蜜を求めるミツバチなんだぁああ!!」 「意味のわからない言い訳するなぁあああ!!」 「お前という名の花に吸いつきたくなったんだよっ!!」 「ないから!!!」 もう一発蹴りをぶちかました。 → (食満) 「あ、おい」 池の周りを一人で歩いていると、用具委員長の食満先輩に呼び止められた。 「はい、なんですか?」 「ちょっとこっちに来て、手伝ってもらっていいか?」 よく見ると、食満先輩は両手いっぱいに縄梯子を持っていた。 私は、快く手伝ってあげようと先輩に近づいて行った。 「いいですよ。半分持ちます」 そう言って、食満先輩から半分縄梯子を受け取った瞬間。 「あ」 「ん?」 目の前に食満先輩の顔が近づいた。 ――んちゅぅ 啄ばむように、食満先輩が私の唇に口付けしてきた。 驚いて少し開いた私の口へ、食満先輩の舌が入ってきた。 くちゅりと、口の中で音がする。 かすかに、甘かった。 しかし、唇が離れた瞬間、渾身の力をこめて食満先輩の頬を殴った! 「な、何してんですかぁああああ!!」 「お、俺は蜜を吸うクマンバチなんだ!!」 「文次郎先輩と同じ言い訳でけまちわるいいいいいいい!!!」 「花みたいにかわいいのに、蜜まで付けてたから我慢できなかったんだよぉおお!!」 「しらねーよ!!」 平謝りし始めた食満先輩に、蹴りを入れた。 終 拍手ありがとうございましたv |