<かき氷>








(こへ)



赤いシロップ。

キラキラと光る氷の山にどっぷどっぷこれほどでもか!ってくらいかけられていく。

「こへ〜、そんなにかけてどうするの〜?」
「いけいけどんどーん!」

もう、私の声なんて耳に入ってない。
あーあ、氷溶けちゃってる。
なのに、ほとんどまっかな氷水になったそれを

「はい!」

笑顔で差し出すから、しょうがなく受け取る。
甘ったるくて、冷たくて、喉が焼ける。

「ほらほら!見てみろ!」

べーっとこへの口から出たのは真っ赤に染まったべろ。
同じようにべろを出して、二人で笑った。

その後した口付けは、かき氷に負けないくらい甘かった。


「な〜!シロップかけたい!」
「だめっ!べたべたするから!」
「いいじゃん〜!私舐めたいんだよ〜!」
「も、もっとだめ!!」













(三木)




黄色いシロップ。

檸檬の味だと言われても、やっぱり甘い。
並んで、同じ色のシロップがかかった氷の山を掻き崩す。
しゃりしゃりと、耳には涼しい音が響いて、思わず笑みがこぼれた。

「ん?なんだ?」
「べっつにー。三木、早く食べないととけちゃうよ?」

お前こそ早く食べろと、反対にせかされてしまった。
悔しいから、器を三木の首筋にあててやった。

「うわっ!な、なにするんだっ!」
「三木が生意気だから〜」
「このぉ!」

お互いの熱い肌に冷たい器をくっつけ合う。
こぼれたシロップが三木の首筋を滑って行くのをみつけて、
舌でその跡を追いかけた。
三木は、シロップみたいに甘くなってた。


「もっと食べたい」
「ひっ!や、やめろ!」
「えー三木のけちー」









(仙蔵)




青いシロップ。

「ねえ、仙蔵。これ、何の味?」
「知るか、黙って食べろ」

手渡された器を見て、一言言っただけなのに、もう怒られた。
しょうがないから、黙って青いシロップのかかった氷の山を一口食べる。

「あまーい」
「ほほが緩んでるぞ」
「だって、おいしいんだもん」

おいしくて、しゃくしゃく食べていた。

「……仙蔵、そんなに見られてると食べにくいんだけど」

こちらをじっくりとみている仙蔵の視線が痛い。
不敵に笑うその笑顔は、機嫌のいい証拠。
なにかあったっけな?
かき氷美味しいとか?

「どうしたの?かき氷おいしい?」
「いや、甘すぎるな」
「そう?」

また、一口。

「そんなにあわてて食べると、腹を下すぞ」
「え……」

固まる私に仙蔵は言い放った。

「安心しろ、暑いくらいに私が温めてやろう」

急に近付いた彼の唇は私と同じように、少し青く染まっていた。













(綾部)






七色シロップ。


「あ、綾部さん」
「ふぁい?」

動かしていた手を止めて私を見る綾部。
見事な七色をしていた氷の山は見る影もなく、黒ずんだ色になっていた。

「色、混ざっちゃってますよ?」
「あまーい」

見当はずれの答えをいただいて、再び手を動かし始めた綾部の隣に座った。
半分くらい削られてしまった氷の山はどんどん色を濃くしてシロップが混ざり合う。

「はい、あーん」

突然差し出された匙。
ぱたぱたと、こぼれるのも気にせずにこちらに差し出してくる。
口元に突きつけられてしまったので、しょうがなく口にした。

「んぅ」
「おいしい?」

こくりと頷くと、あ、綾部がほほ笑んだ!
呆然としていると、また器から黒いシロップと氷の破片が掬われて差し出される。
あの微笑みがみられるなら!と、どんどん食べていくと、すぐに器は空になってしまった。

「おやまあ」

空っぽの器と、呆然としている私を見比べてから、綾部は器を横に置いた。

「こっちにまだあった」

ちゅうっと、唇を吸われた。
れろりと、私の唇を舌でなぞって味わう綾部。
身動き一つ取れないでいる私の肩をそっと、綾部は押し倒した。

「もっと食べていい?」




















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