(ことわざことわざ) 「せ、先輩!やめてください!!」 私の腕に必死に抱きついてくる三木ヱ門には悪いけど、もうこれ以上我慢できない。 握った拳にさらに力がこもる。 「へー、ほー、お前が私に敵うかなー?」 「…三郎……そんな余裕な笑顔、いつまでも浮かべていられるとでも思ってるわけ?」 「ああ、思ってるとも」 いけしゃあしゃあと言い放つ三郎を、ギンッと睨みつける。 「まあ、ともかく学級委員の予算は増やしてもらうから」 「出来るわけないでしょ!!!」 今にも、掴みかかってやりたいほどに頭に血が上ってる。 必死で少ない予算をみんなに行きわたる様に、日夜鍛錬鍛錬鍛錬…違った、これは潮江先輩の趣味だ。 ギンギンに徹夜して頑張っているって言うのに! 「これでもか?」 「はえ?」 さっと、三郎が私に向かって突き出してきた紙にでかでかと達筆な字で書かれた五文字。 『学園長命令』 「従わせていただきます!!」 「え!?ちょ、せ、先輩!!?」 「三木ヱ門止めないで!」 「なんでですかぁ!潮江先輩勝手に帳簿改ざんすると、あとがひどいじゃないですか!!」 瞳をうるうるさせて、今度は必死にすがりついてくる三木ヱ門を私は振り払った。 ごめんね……三木、だって…… 「硬いモノには貫かれろって言うでしょ!!!」 「「…………」」 「もう、貫かれなくてどうするのよ!」 不意にぽんと、肩へ置かれた手。 振り返ると、三郎の笑顔。 「よし、お前……ちょっと袴脱ごっか?」 「は?なんでよ?」 「貫かれたいんだろ?」 「え?」 「私の硬くて太くて熱くてたまらないモノに貫かれたいんだろ?」 「え?ちょ!?何腰帯解き始めてんの!?三郎どうしたの!!」 「せ、せ、せ、せ、」 「ん?」 今度は三木ヱ門を振り返ると、三木ヱ門は三木ヱ門で顔が真っ赤になってる。 「先輩のどすけべ!イーンラーン!うわぁああああん!!!」 「と、泣きわめきながら、なぜ抱きつく!!?」 「淫乱なお前も好きだああああああ!!」 「ぎぃああああ!?ちょ、ちょっと!生温か…いつの間に脱いだぁああ!!?」 「三郎先輩のがいいって言うんですか!!?私に貫かれてくれたっていいじゃないですかああああ!!!」 「貴様ら、 す り つ け る な ッ !!!!!」 (長いものには巻かれろ) 空き教室で机を並べて勉強し始めたはいいが、 「飽きた」 「あぁ?」 「……はぁ」 置いた筆が、硯に入った墨を跳ね返して手の甲が汚れたけど、それを拭う気にすらなれない。 「だから、お前と勉強するの嫌だって言ったんだよ」 眉間にしわを寄せてため息をつく文次郎に、わざとらしくため息をついて寄りかかる。 かったい肩だなぁ。寄りかかった私が痛いじゃないか。 「そんなこと言うなよー、文次郎の宿題うつさせろよ―」 「バカタレ!」 「わっ!?耳元で叫ばないでよ!」 そのまま、今度は逆方向へ倒れる。 「留ー、文次郎の馬鹿が怒鳴るー」 「文次郎、うるせぇぞ」 すぐ味方してくれる留が好き。 「ほら、もうちょっとだから頑張れよ」 「うー……」 「お前がさっさとやらねぇから、いつまでたっても鍛錬いけないだろ」 ぐいっと、乱暴に拭われる手の甲の墨。 不器用に、優しい文次郎が好き。 「……うっしっ!!頑張ろうかな!!」 「お?やる気になったか?」 「なんだよ、急に」 だってさ 「だって、」 「喉元過ぎれば苦さわするるでしょ!!!」 「「…………」」 「ね?ね?そうだよね?」 ん?急に俯いてしまった二人。 交互に顔を覗き込んでも、ピクリとも動かない。 「どうし……た」 突然すっくと立ち上がった二人。 キョトンとしていると、二人ともさわやかな笑顔。うわ、きもい。 「よし、お前ちょっと四つん這いになろうか?」 「は?文次郎何言って」 「むしろ、胸元あけながら舐めようか?」 「食満、舐めるって何を」 「「ナニをだよ!!!!!!!!!」」 よくわからずぽかんとしていると、二人が息も荒々しく言い放った。 「「俺の苦いのたっぷり飲ませてやるから!!!!!!!!」」 「……よし、お前ら。そこに座ろうか?」 「うっ、あ、そ、そんなプレイが好きとは……」 「さすがだぜ、さすがすぎるぜ」 「黙れ、万年発情期!!!」 「「は、つ、じょ、う、き!!!!」」 やばい、手がつけられねぇ。 (喉元過ぎれば、熱さを忘れる) 「仙蔵」 「ん?」 部屋には仙蔵がたった一人だとわかると、途端に嬉しくなった。 戸を閉めてしまえば、もう二人きり! 「ね、ね、仙蔵、今この状況がどういう状況かわかる?」 「……まあ、二人きりだな」 興味なさそうに、仙蔵の視線は手元の本に注がれっぱなし。 もはや、本にすら嫉妬してしまいそうな自分の熱に浮かされたまま、口を開く。 「そうなの、潮江がいないってことだよ?」 「で?」 「……う」 言葉に詰まる。 まさか、そこまで自分から言わないといけないのか。 いや、言わないと、ダメなんだ。 「お、鬼の居ぬ間に洗濯!!!!!!」 「……」 ぱたりと、本が閉じられる。 仙蔵の背中で揺れる長い髪。 ぞくぞくと、腹の底からこみあげてくるモノ。 悠然と振り返った仙蔵はつれなさそうな表情を浮かべている。 そんな顔をされると途端に不安になってしまい、どうしていいのか分からなくなってしまった。 「命の洗濯、か」 「はぇ?」 頬杖をついた仙蔵がぽつりとこぼす。 「いいかもしれないな」 唇がつうっと吊りあがり、最早私の中の期待は喜びは、興奮は爆発寸前。 目の前の仙蔵を見上げながら、その手に操られるままに眼を閉じた。 「鬼に見せつけてやるか」 「え……んんんっ!!?」 「ギンギンギンギンギンギン!!!」 やっべぇ!天井裏にいた!! 知ってる癖に翻弄されてしまう愚かな自分! (鬼の居ぬ間にせっくす) 終 拍手ありがとうございますv |