(君が彼女!)


































試験の点数がよくなくったって、うだつが上がらないだなんて言わせない!
私は至って平穏無事で楽しい生活を送っている。
あんまり忍術の鍛錬もしないせいで、成績は真ん中より下ぐらい。
私はそれで全然いい。
やればできるなんて言い訳もせずに、友達からは飽きられて「ただ、ここに居たいんでしょ?」と苦笑されてしまう私。
でも、まさにその通り。
私は忍術学園が大好きなんだ。
毎日ドタバタ上へ下への大騒ぎをしたり、級友たちと枕を並べて眠ったり……忍術なんてそっちのけで学園生活を満喫していた。
今日もまた、授業をさぼる為に昼寝しやすそうな場所を求めてうろついていた。
そもそも、色の術だなんてまっぴらごめんだ!




































(仙蔵)



そんな私の目の前に突如として現れたのは、立花仙蔵先輩だった。
こちらをじっと見つめているので、先輩の前で立ち止まった。


「こんにちは、仙蔵先輩」
「………」
「ど、どうしたんですか?」


じぃっと瞬きすらせずにこっちを見つめてくる先輩。
一体どうしたのだろうと、小首をかしげていると……


「貴様が私の彼女か……」
「……は?」


どうしたんだろう、今一瞬よくわからない言葉が…。
すると、親切にも先輩は私の頬に手を添えてそっと耳元へと口を寄せてもう一度囁いてくれた。


「私の、彼女だ」


ぞっくぅと、背筋をなにやらうすら寒いものが走り抜けた。
それなのに、耳元で囁かれた私の名前は確かに、私の名前だった。
平穏無事な私の日常が壊れる予感がした。






























(竹谷)



ぼちぼちいい所がないか探していると、突然後ろから誰かがぶつかってきた。


「おわっ……って、竹谷か」
「……」


自分の腰のあたりを見てみると、見慣れた頭がそこにあった。
ごわごわの髪の毛は、やっぱりごわごわしていて、木の葉がくっついてしまっていた。


「竹谷ー?どうしたの?」


いつになく反応のない竹谷を不審に思って、胴に回された腕をつねってみる。
痛がる声もなく、動かない。
どうしたものかと考えて始めた矢先、突然竹谷が顔を上げた。
そして、満面の笑みで


「お前が、俺の彼女か!」
「え?ごめん。意味わかんない」
「俺の、か・の・じょ!」


親切にも、ゆっくりと区切りながら言ってくれた。
いやいや、そういう意味じゃなかったんだけど。
不審な目を向けている私を気にもせずに、竹谷は困ったような表情を浮かべた。


「俺の……彼女」
「は?え!?ぎゃ、ぎゃあ!!」


気がつくと、竹谷はむにむにと私の胸をもんでいた。
驚いて、咄嗟に反抗するのを忘れていた私に向かって竹谷は再び笑顔を向けてくる。


「まかせろ!俺は胸で彼女決めないからな!」


何をまかせたのか、一切私には分からなかったが、どうやら私の日常が音を立てて崩れていくのは決まったようだった。































(三木ヱ門)




「おい」
「げ」


うろうろとしすぎたせいか、偶然授業に行く途中であろう三木ヱ門に出会ってしまった。
なんというか、苦手な相手。
あんなに火器に夢中になる理由が私にはわからない。


「田村、三木ヱ門」
「……」


なんとなく、苦手意識のせいで露骨に嫌そうな顔をしてしまう自分。
そんな私を、あの瞳でまっすぐと捕えている。
下手したら、自分の姿が映り込んでいるのが見えてしまうんじゃないかってほど、こちらを凝視している三木ヱ門。


「な、なによ」
「君が、私の彼女か」
「は?」


意味が、わから


「彼女、せっくすしよう」


ない!


「しねーよ。ばか」
「私の彼女なら、するしかないだろ!」
「は?意味わかんないんですけど!」


呆れたように首を振った後、ため息をひとつ吐いた三木ヱ門。
なにやら、それすら様になっているのは伊達に自らアイドルを名乗っていないということか。


「何を言っている」
「え?」


さらりと、前髪を触れた三木ヱ門。


「私は、お前の理想の恋人なんだろう」


断定形で言われたその言葉に、くらりとめまいを覚えた。
どうして、私の真赤な顔が三木ヱ門の瞳の中に見えるんだろう。
指が掠めた額が熱い。


「じゃあ、しようか?」


私の、平穏無事な日常がぐらりと揺らぎ始めた気がした。


「私の、彼女」






















拍手ありがとうございます!
某ドラママンガ?のパロチック。