(こわいこわーい)
















はーち






































雷蔵









画面に映し出された少女たちが、一様に恐怖に怯えた表情で互いの携帯電話を覗き込んでいる。


「きゃあああ!」
「ふぁああああ!!!」


突然鳴り響いた着信音に驚いてしまって、思わずお互いに抱きついてしまった!


「ああ!ごめん!!!」
「わ、私もごめん!!」


ぱっと離れて、口数も少なく再び画面に目を戻す。
突然アップになる不気味な顔!
ああああ!こ、怖いけど…また抱きついちゃったら…


「こ、こわあああああ!!!」
「わっ!?」


画面なんて気にならないくらいに驚いた。
突然君の体が僕の体に抱きついてきて、腕にぴったりと触れるその柔らかさ!
だんだん、ビデオになんてどうでもよくなってきてしまって。


「ら、雷蔵〜」


眉毛を下げて、今にも泣きそうな顔をしている君はとんでもなく怖がりの癖に、一緒にこんなビデオ見ようだなんて、本当にお馬鹿さんなんだから。


「一緒にはいろっか?」


大きなブランケットを広げて、まるで抱きしめるように君を引き寄せる。


「ね?少しは怖くないでしょ?」
「う、うん」


なぜだか、今度は首筋まで真っ赤になった君の横顔から、目を離せなくなっちゃった。























三郎



画面に映し出された少女たちが、一様に恐怖に怯えた表情で互いの携帯電話を覗き込んでいる。


「わっ!!」
「ぎゃああああ!!」
「あははは!お前、色気ない叫び声だなぁー!」
「う、うるさい!ちょっと三郎おとなしく見てなさいよ!」


あんたが見たいって言ったんでしょ!と、ぷりぷり怒りながらも、俺なんかよりも真剣に画面に見入ってしまっているお前。
ビデオなんかよりもよっぽどお前の方が面白いって知ってるか?
隣をちらちらと見ていると、青くなったり、ほっとしたり、小さく叫び声なんて上げちゃって。
やっぱり一緒に見ようって言って正解だった。


「ひゃあ!!」
「うわぁ〜、こわぁ」
「……怖いって思ってない人は、怖いって言わないぎゃあ!!」
「はははは!」


悔しそうにこっちを睨んでくるけど、涙目で睨まれても全然怖くない。
むしろ、そそる……


「なあ、怖くないようにしてやろうか?」
「え?……う、うん」


表情から察するに、背は腹に変えられぬって所だろうか。
まるで、マントのように大きめのブランケットを広げて後ろから抱きつくと、お前は一瞬嫌そうな顔をしてこちらを振り返ったが、おとなしく画面に目を戻した。
ああ、そんなに怖いんだ。


「大丈夫、あんなの来たって守ってやるから」
「信用がないので、遠慮します」
「またまたー、あ、ほら!」
「ひぃやああああ!!」


………。
足の間でもぞもぞ動くもんだから……ね?


「ちょ!ちょっと!三郎!?」
「え?なんでしょう?」
「わ、やぁ!お、押し付けないでぇ!」
「何のことでしょう?」


ああ、もう本当いい反応!




























留三郎







画面に映し出された少女たちが、一様に恐怖に怯えた表情で互いの携帯電話を覗き込んでいる。


「わっ!!」
「うぉ!!?」
「ははは〜、留驚きすぎー!」
「う、うるせぇ!お前ちゃんと見ろよな!お前が見たいって言ったんだからな!」
「はいはーい」


急にお前が大声出すから俺は驚いて変な声上げちまった。
だけど、ようやくおとなしく見る気になったのか、ポップコーンを片手に画面に集中している横顔。
全く、定番をどこまでも行く女だな。
今時がっちりポップコーンとコーラ用意してホラー映画見てるとか、どこぞのアメリカンだ!と、心の中で突っ込みを入れたが、俺も右にならってコーラを一口。


「と、とめ」
「あ?」


段々とクライマックスへと向かっていく中、何度かの恐怖シーンを乗り越えた頃に突然情けない声を上げたお前。
ふと、横を見るとなにやらさっきとは打って変わって青い顔をしてる。


「どうしたんだよ?」
「は、はは……こ、怖くなっちゃった」


どうしましょうと、情けない笑顔を浮かべるお前の顔をまじまじと見つめて、俺は大きくため息をついた。


「おーし、いっこ貸しな」
「う」


ぐいっと、肩を抱き寄せて抱きしめてやる。
あー、こいつ本当細いな。でも、柔らかい。
よっぽど怖かったのか、おとなしくされるままになっているままのお前。
なんだよ、いつもだったらさんざん抵抗するのに、やっぱりこういうときは女なんだなぁ、なんて思ってしまう。
つか、すげぇなんだ…いい匂いするなぁ。


「ととととと、とめぇ……な、なんかはぁはぁ聞こえない?なに?呪い?私死ぬの?」
「はぁはぁはぁ」
「あ」


好きなやつの隣にいて我慢できるかっつーの!























文次郎








画面に映し出された少女たちが、一様に恐怖に怯えた表情で互いの携帯電話を覗き込んでいる。


「なぁ、これ面白いのか?」
「……ん」


いわゆる、話題のホラー映画。
それを持って嬉々としてやってきた癖にこいつは、さっきからおびえた表情で黙ったきり。
俺にはさっぱりどこが面白いんだかわからねぇ。
怖いって言うか……気味が悪い?
しかも、時折小さな悲鳴をあげながらも目を離せなくなっているこいつを見てる方が面白かったりする。


「ね、文次郎」
「ん?」
「あ、あのくっついていい?」
「は!?」


了承も取らずにすすすっと、隣に座っていたこいつは胸にビーズクッションを抱えながらぴったりと俺にくっつく。
ぎゅうっと、腕を絡めてきた。
な、なんだこれ。


「ふぁ!!」
「おっ!!!?」


画面に突然アップになった白い顔の少女。
驚いたこいつはぎゅうっと俺の腕に思いっきり抱きついた。
って、や、柔らかいものが!!!
な、なんておいしい!
これは……もしかすると。


「な、なぁ」
「ひっ!!!…ん?もんじ、なに?」


こっちを見上げたこいつの顔は、なかなか見ることが出来ない上目づかいの上、うっすら涙がにじんでる。
しかも、よっぽど怖いのか眉根をひそめてなんていうか、たまらねぇ。


「こ、こうしたほうが見やすいだろ?」
「う…ん」


どっこいしょと、俺がこいつの体を後ろから抱きかかえるように体勢を変えたというのに、映画に集中しているこいつは特に気にするでもなくされるがまま。
おおおおお!なんだ、この猛烈に恋人っぽい感じは!
と、その瞬間、机の下から女が突然這い出して来るシーンになった。


「ふぎゃあああ!!!」
「うお!!」


思いっきり後ずさりしたこいつの体が思いっきり俺の体に密着した。


「ひぃいいい!も、もんじ!こわいよおおお!なんか、はぁはぁ聞こえない!!?」
「はぁはぁ」
「あ」


お前を抱きしめてるのに、我慢なんて出来るわけない!



































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