闇夜を裂くように、バタバタと翼の音を立てて飛び回る蝙蝠はきり丸がアルバイトの一環で捕まえてきたそうだ。
それを豪快に空へと放って、お祭りが始まった。
辺りは、橙色のランプの明かりに照らされ、陽気な怪物たちの顔が浮かび上がる。
私も、定番と言えば定番な黒猫の扮装をしてさっき床下まで来てくれたあいつらの姿を探す。
思い切ったとびきり短い黒いワンピースが、歩くたびにひらひらして気恥ずかしいが、そもそも異様な恰好を学園中がしているから、誰も気にしていなかった。
慣れた闇が見知らぬ空気をまとっている。
楽しくてしょうがない。
と、その時視界の端にちらりと飛び込んだ黒い髪。


「あ、久々知!」


確かにあの髪の毛は久々知だ。
どんな扮装をしているのかわからないけれど、見間違うはずがない。
きっと久々知の所に行けばみんながいるに違いない。
そう思った私は、人ごみの中に紛れていく彼の後ろ姿を慌てて追いかけた。
まるでからかっているかのように、何度声を上げても立ち止りも振り向きもせずにひらりひらりと髪は揺れながら遠ざかっていく。
見失わないように。頭の中でその言葉だけがぐるぐると回って満たされていく。


「久々知、兵助!」


何度目になるかわからない幾度目かの叫び。
ついに、ぴたりと後ろ姿が止まった。
肩で息をしながら、ようやく追いついた。


「あ、んた…何回も呼んでるんだからさっさと止まってよね!」

「は?」


久々知が名を呼ぶ声がしたかと思うと、四方八方から響き渡るように声が湧き起こった。
追いかけることに夢中で気付かなかったが、辺りに人影もなく、うっそうとした木々が声を上げて笑っていた。


『とりっく おあ とり〜と』
「あ!」


返事をする間もなく、体が縄に絡め取られた。
窮屈さと、浮遊感。
何度か味わったことのある手の罠。


「ぎゃっ!!」


色気もない声を上げた頃には、ぶらんぶらんと縄の網で宙づりにされていた。
そんなに高くもないが、完全に身動きできない。


「な、な、なにこ、れ!!!?」


ざわりと、生ぬるい風が吹く。
もう、秋も終わるのに。
そろりと、肌を舐めまわすような気配がにじり寄ってくる。
くるりと、振り向いた兵助は血の気の引いた顔をしていた。
青さを通り越して紙のように白い頬をゆがませて笑った。


「とりっく」


囁くような声を紡いだ口から、真っ白な犬歯が零れる。
額のあたりには、黒い髪の中から、乳白色の角がにゅうっと伸びていた。


「たっぷり悪戯させて頂きます」


不覚にも、そう言った声に背筋が震えた。


「はは、のやらしいパンツ丸見え」
「なっ!!?」


慌てて、声をした方へと必死に首をひねると、三郎がニヤニヤと笑みを浮かべながら私の体を見ていた。
まるで胎児のように体を丸めた状態で、縄に捕えられた私の足もばっちり曲がっている訳で、スカートなんて何の意味をなさない布と同じだった。


「でも、かわい。見て、尻尾が垂れてる」


きゅうっと、お尻のあたりが引っ張られる感触。
つぷっと、お尻を指でつつかれた。信じたくないが、声からしてそれは三郎ではなく雷蔵。
確かめる間もなく、縄の間から手が入れられ、無理やり顎をひねられる。
小さく声を上げた私の視界に入りこんだのは、悠然と微笑む久々知だった。
くちゅりと、唇が重ねられる。


「ん、むっ……」
「がおー」


べろりと、太ももが舐めあげられる。
驚いて、逃げようとしても宙づりの縄の中では逃げることもかなわない。
温い息が腿にかかり、歯が立てられる。
目で犯人を負えば、狼の扮装をしている竹谷だった。
こちらの視線に気づくと、にっと歯を見せて笑う。


「さっき、が俺の顔におま●こ押しつけるから、もう我慢できなくてしょうがないんだ。だって、俺のが欲しくてしたんだろ?」


さらりと、言い放って縄の中へと手を入れてきた。
露わになったパンツが喰いこんでいるそこを、指でなぞりながら太ももを嬲られる。
しかし、久々知の舌が歯列をなぞり、快感をほじくり出す。
声を久々知に飲み込まれるせいで、びくびくと体を揺らすことしかできない。


「おい、竹谷手が邪魔だ邪魔」
「ああ、三郎悪い悪い」
「うわぁ、すっごい喰い込んでるよちゃん。やらしいなぁ」


朗らかに、いつもの調子で言い放つ雷蔵の声にびくりと反応してしまう。


「私だって、のおま●このいい匂いいっぱい嗅ぎたいんだ!」


どんな宣言だと、ツッコむ間もなく、ぐりっと縄が押し付けられ、三郎の顔が押し付けられる。
とんでもなく恥ずかしく、暴れてみるが効果は一切ない。


「ん、ふぅ、んくっ」


それどころか、久々知が唾液を送りこんできて呼吸すらままならい私は大人しくその唾液を飲み下さなくてはいけない。
飲み切れない分が、唇から溢れて顎を伝う。


「ん……はぁ…、顔やらしい」
「ひゃっぁん!!ふあぁ、や、やめ、てぇっ」


はあはあと、荒い息を上げた竹谷と三郎が夢中になっての体を舐めまわす。
ぴたりと、布が体に張り付く感触が気持ち悪い。


ちゃん」


ぼうっとする頭で、口の中に押し込まれた。
雷蔵の指を口に含むと、甘い味がじんわりと口内に拡がる。


「飲んで。おいしいよ」


ぞろりと、口内を指で掻き回され何が何だかわからないうちに固形物の飲み下していた。


「ふぁ…なに、これ」
「もう少ししたら、教えてあげるよ」


にこりと微笑んだ雷蔵の唇からも長い犬歯が覗いた。
ぐっと、今度は首を掴まれるとチクリとした痛みと共に雷蔵に噛みつかれた。
じーんと、体が熱くなる。


「はは、だんだん私の唾液だけじゃないのでここベチャベチャになってきたぞ」


三郎の声にまた羞恥心があおられる。
じりじりと痛むように下半身に痺れを感じた。


「あっ、あ、やら」
「ん、ふ、おいし」


体のあちこちを、吊るされたまま舐めまわされる。
くすぐったさに、微細な快感の尻尾に体をくねらせるのに逃げられない。
久々知の唇が肩先に吸いつき、胸をいじりまわす。
竹谷の舌が熱い唾液を塗りつけながら、私の肉を味わう。
三郎が楽しそうにイヤラシイ言葉をぶつけながら、肉芽を布の上から押しつぶす。
雷蔵は、恍惚と首筋に歯をたて、キスをする。
頭がおかしくなってしまいそうだ。


「んっ、はぁあ、あっ、ああ、あああ!!」


くちゅりと、糸を引いて唇が離れた。
雷蔵の囁き声が頭の中を埋め尽くして、奥底に眠っているスイッチを入れられるような感覚。


「さっきのは、特別製の媚薬。ちゃんがものすごいエッチになるくすり」


不意に腹の中で生まれた熱。
カッと、体が熱くなっていく。
こちらの変化に気付いたのか、それぞれ笑みを浮かべてそっと離れた。
ぐらりと動いてから浮遊感がなくなり、体が平たい岩の上に降ろされた。
体をあれほどに戒めていた縄もなくなった。
しかし、私の体はそれどころじゃなかった。
じりじりと熱が腹に広がり、汗が出る。
もどかしい快感の波がじりじりとひいては返す。
仰向けになって、自らの微かに血がにじむ喉元をさらけ出すように、息を吸う。


「あ、うぅ、熱い、熱いよ……」


浅く息を繰り返し、熱を冷ます方法ばかり頭の中に…


「違うよな、が欲しいのはこっちだろ?」


頭の中を見透かしたように、すかさず久々知の声が飛んだ。
切なげに眉をよせながら、そちらを見ると、思い思いの怪物の恰好をした彼らが、私が欲しいものを露わにしていた。


「はぁ、う……ほし……よ」


悪趣味にも、顔のところどころが溶けかけて骨が見えている三郎がずんずんと近づいてきた。
青い唇が弧を描く。

「ほら、自分で足持ってみ?」



三郎の指がすっと伸びて、自らの唾液とイヤラシイ液体でびしょびしょになった布をじらすように下ろした。
そして、促されるままに、両手で自分のひざ裏に手を回す。


「丸見えー」
「あぅ、く……」


恥ずかしさから下唇を噛むが、それすら三郎をあおるのか、ごくりと喉が上下していた。
視線を外せば、ずくりと起ち上がった雄が涎を垂らしていた。
あれが、ここに欲しい。
キュンと、疼くのを見てとったのか、すっと三郎が立ちあがった。
頭をくしゃりとひと撫でされるのにすら切なくなる。


「それじゃあ、準備できました―」
「おお!」
「じゃあ、最初は雷蔵から?」
「うん」


痺れるような、期待感を持った私が見たのは、楽しげに目隠しをした雷蔵を取り囲む三人の姿だった。
ぐるぐると、雷蔵の体を回転させると、楽しげに声をかけ始める。
まっすぐまっすぐ!ちょっと、右!
左だ!
おお!すごい!も少しだ!
その声に導かれる様に、慎重に雷蔵は、こちらへと近づいてくる。
何かに似ていると、考える前にすぐ傍に雷蔵がやってくる。
黒いマントが温い風に揺らぐ。
隆々とした雄がぴょこんと頭を揺らしながらこちらに狙いをつけている。


「「「いけっ!」」」


ずっと、突き出された雄が、孔を目がけてちゅくりと滑る。
粘液と粘膜が擦れて、にゅるりと滑る。
じゅくりと、音と共に快感が走り抜ける。


「あ、ここだ!」


無邪気な声を上げて、雷蔵は不意に腰を使った。


「ひゃぅあっんっ!!」
「あ、ん、すごい」


ずくずくと遠慮知らずで突き進んでくる雄の硬さに眩暈すら感じ、快感がほじくり返される。
あられもない声を上げながら、悦びできゅうきゅう締めあげてしまう。


「すっご、さすが雷蔵!一発で決めた!」
「ぎゃああ!すげえええ!ドラキュラつえええ!」
「だーーー!雷蔵早く早く!俺も、我慢できないから!」


腰を打ちつけながら、雷蔵は覆いかぶさってきた。
片手で目隠しをしゅるりと取ると、愛おしげに細められた目が現れた。


「は、うぁ…うっ、らいぞぉ」
ちゃんかわいいよ」


悪戯っぽく囁いて、腰をギリギリまで引いて、一気に突き入れた。
自分の知らない部分が押し拓かれる感じに気持ちよさが伴い、頭の中が真っ白になる。
腹の中に、今度は雷蔵の熱が放たれたようだった。
熱い。キモチイイ。


「もっとしてあげたいけど、またあとでね?」
「ふぁっ…」


ずるりと、引き抜かれると今度は、三郎が目隠しをしていた。
快感の余韻に浸っている間もなく、再び掛け声が始まる。
見えているんじゃないかと思うほどの速さで三郎の雄が目の前に掲げられた。


「ここだ!!」
「あー!」


竹谷の大声が後ろで聞こえるのも気にせず、三郎は腰を突き出した。
唇の端にぐりっと雄が押し付けられる。
青臭い匂いが、鼻につく。
しかし、それすらたまらなく欲しくなり、は唇を緩めた。
みんなに聞こえないほどの声で三郎が話しかけてきた。


、早く私のあつあつのちん●咥えて?」
「あ、ん…むぅ……ん、く」


じゅるじゅると音を立てて吸い上げて見せれば、ドクドクと脈打ちながら雄が硬さをさらに増していく。


「そんなにがっついてしゃぶらなくても、私たちのちん●なくならないからな?」


苦笑交じりで、三郎が楽しげに声を上げる。
その言葉通りに、まだお祭り騒ぎの夜始まったばかりだし、まだ序の口の余興にすぎない。
ごくりと、苦い蜜を飲みだしながらは、眼を閉じた。






























カボチャ割がしたかったんです。
あ、スイカ割り?