仮装の名人 があがあと、カラスがうるさく泣き喚いて、空へと帰って行った。 赤く染まりつつある天を見つめながら、は唇を吊り上げる。 ああ、これから夜が来る。 もう、あっという間に闇が迫る。 胸が湧き立つのは、前々から楽しみにしていたはろうぃんがやってくるからだろうか。 は満面の笑みで頷くと足早に長屋へと戻っていった。 今日は本当に楽しかった。 みんな思い思いの仮装をして、学園中がお祭り騒ぎだった。 食堂ではおばちゃんのかぼちゃ料理に舌鼓を打ち、グラウンドでは皆で提灯に明かりを入れ、 お化けの仮装をしてお菓子を食べて、踊りを踊った。 みんなが、怖いお化けの格好なのにけらけら笑いあって、本当に楽しかった。 ああ、楽しかった。 はもうほとんど人がいなくなったグラウンドの隅っこで、塀に背を預けて祭りの余韻に浸っていた。 ほう、と息をついて頭にかぶっていた布をとった。 南蛮の幽霊の格好を自分なりにしてみたが、すっぽりと布をかぶっていたせいではじめはみんな私だと分からなかったなぁ。 知らず知らずのうちに笑いがこみあげてきた。 「三郎、変装大好きだもんなぁ」 ふと、思い出したのはいつも変装している三郎のことだった。 「恋人」同士の三郎も、こんな風にいつも感じていたのかな? くすくすと、笑っていると上から声が降ってきた。 「、何笑ってんの?」 「ん〜?三郎ってこんな気持ちだったのかな〜って思ったらなんだか面白くって」 「なに?の仮装のこと?」 察しのいい三郎は足りないの言葉をすぐに理解してにやりと笑った。 塀の上から、の横に降りてくると、まだの体を包んでいる布ごと体を抱きしめた。 「あれ?三郎は仮装しなかったの?」 「ん〜?」 もぞもぞと体を動かしながら三郎は笑った。 「もともとこの格好が仮装みたいなもんだから」 ぱっと、の顔と向き合ったのはよく見なれてしまった雷蔵の顔をした「三郎」だった。 「ねえ、それよりも」 「なに?」 天使みたいな「雷蔵」の顔で「三郎」はまるで悪魔みたいに笑った。 「トリックおあトリート」 「トリート」 すぐさま、懐から小さなチョコレートを出して三郎の口に押し込んだ。 不満げに眉間にしわを寄せた三郎がもごもごと口を動かして、すぐにそれを食べてしまった。 「甘……」 「だって、食べたかったんでしょ?お菓子」 くすくす笑うに突然三郎が唇を押しつけた。 チョコレートが香る甘い口付け。 くちゅりと、唇を離して三郎が甘ったるく囁いた。 「私は、トリックがいい」 倒れ込むように、口付けをかわしながら三郎に押し倒された。 ようやく唇が離れたと思ったら、その顔が「雷蔵」の顔じゃなくて「竹谷」の顔になっていた。 「え!?あ、さ、三郎!?」 驚いて声をあげたに楽しそうに微笑む三郎が、竹谷の声色で返事をする。 「〜、楽しいトリック!トリック!!」 するりと、懐に潜り込んできた彼の手は確かに三郎だというのに、顔も声色竹谷のものだから、変な気分になってくる。 「やだ!ちょ、ちょっと竹谷の顔やめてよ!」 「、俺、のこと前から好きだったんだ」 「気持ち悪いから!竹谷そんなこと言わないし!」 真面目くさった顔で嘘っぱちの告白をしてくる三郎に、なんだか怒りが込み上げてきた。 大体、竹谷に告白されたって嬉しくないんだってば。 「」 それなのに、調子に乗った三郎が竹谷の声色で名前を呼んで首筋に舌を這わせてくる。 いつもと違う声に怖いとすら思ってしまう。 「い、悪戯でも、こんなのやだよ、三郎!」 「ん〜」 「ふぁっ!!?」 くりっと、胸の先をつまみ上げられては思わず声を上げてしまう。 おもちゃを見つけた子供のように感じてしまうを楽しそうに見つめる三郎。 「なになに?竹谷に感じちゃう?」 「ちがっ!!?んんっ…ぃぁ」 「でもさ〜、かわいい声出しちゃってるじゃん?」 竹谷はそんな風に笑わない。 ちらりと垣間見える三郎の仕草や表情に、やっぱりこれは三郎なんだと思うのだが、顔が完全に竹谷のせいでまるで…… 「いい加減に、して、よ」 余裕のない声で答えるのが、ますます笑いを深めていく三郎。 「ひゃっ!!?」 「濡れてる」 秘密を打ち明けられるように、囁かれて、指を這わされて、濡れたそこに指を這わされて、その顔は竹谷で、恥ずかしくて恥ずかしくて、死んでしまうかと思った。 くちと、音をたてて三郎の指が中に入り込んでくる感触にはぎゅうっと目を閉じた。 「の中あったかい」 余裕ぶってる三郎の声が、体を撫であげていく。 でも、それでも声が三郎の声に戻ったことに安堵して目をあけてしまった。 「ふ…あ、ばか、さぶろ」 「、私もが好きだよ?」 「ない、から……んんっ!」 目を閉じた隙に、竹谷の顔から今度は久々知の顔に変っていた。 長い睫毛を伏せて、三郎はの下へと視線を注ぐ。 「なんで、こんなに濡らしてるの?三郎じゃないのに?」 指を前後させ、浅い挿入を繰り返す。 水音と久々知の声色がを追い詰め、知らず知らずのうちに涙がこぼれていた。 「ばか……じゃないの」 「ん?」 「三郎だもん……」 顔を真っ赤にさせては精一杯微笑んだ。 「どん、な顔でも、三郎だから、濡れ、ちゃうの」 「……っっ!!〜!!!」 すぐさまに、いつものように雷蔵の顔に戻して三郎はの頬や鼻筋に唇を落とした。 「うぁ、熱い……」 ずっぷりと中に入り込んできた三郎の熱に、腰をくねらせて快感を逃がそうと必死になる。 もう、二人とも余裕も何もなかった。 「んっ、ふぁ…ぅんあ…さ、ぶろ」 「っ!!」 もっともっと、奥へ、深くへいつまでも一緒につながっていたいと、三郎は痛いほどに腰を突き上げる。 昇り詰めて、上り詰めて、のぼりつめて……… 「っ、中に、シテいい?」 「ひゃぅ…い、いいっ!して、いいよ……ふぁっ!!!」 ミルク色に果てる。 荒い息をつきながら、は三郎の頬を両手で包んだ。 「トリート」 ちゅうっと、重ね合わせられた唇。 にっこりと三郎が微笑んだ。 終 しっとりと悪戯してみましたv どちらかといえば、甘ったるい。 ろこさんの「三郎に悪戯 オールキャラ えろす」のコメントからでした! コメントありがとうございました!! |