レッツはろうぃん

























「せんぱ〜い!せんぱ〜い!!」
「ん?」


木陰でほのぼの日向ぼっこしていたら、遠くから私を呼ぶ声が聞こえてきた。
閉じていた目を開けてみると、一年は組の子が手を振りながらこっちに走ってくるところだった。


「ああ、喜三太としんべヱじゃない」
「「せんぱ〜い!こんにちわ〜!」」


ふにゃふにゃと笑う二人の顔に、思わずこちらまで笑顔になってしまう。
つくづくいつもこの子たちに元気とか嬉しいとかをもらうなぁとほっこりして、二人の頭をなでなでした。
きゃあきゃあ歓声をあげながら、二人は私の手を嬉しそうに受け入れてくれるし!


「も〜!かわいいなぁ!二人とも今日はどうしたの?」
「ああ!そうだった!」
「しんべヱ、せんぱいに言うんでしょ?」
「うん!せんぱい、僕ね、先輩にお知らせに来たんでーす!」
「お知らせ?」


意気込んで手を上げているしんべヱを首をかしげて見つめた。


「今日は、南蛮のはろうぃんっていう行事の日なんです!」
「はろうぃん?」


オウム返しに聞き返す私に、今度は得意そうに喜三太が話し始める。


「そうでーす!お化けの格好をしてとりっく おあ とりーとって言うんですよ〜」

「「ね〜!」」


その後、二人からこの行事の内容を聞き終わり、私は苦笑した。


「うん、でも、私はお化けの格好をするの恥ずかしいからなぁ…」
「え〜!せんぱいかわいいと思いますよ!」
「はにゃ?せんぱいお菓子嫌いですか?」
「ううん、嫌いじゃないけど、今から準備するのも大変だからね。でも、二人がお化けの格好してきたらちゃんとお菓子準備しておくからね!」
「「わぁ〜い!!!」」


それじゃあ、みんなで行きますね!と、手をふりふり遠ざかる二人の背中に私も手を振り返した。


「ああ、これはたくさんお菓子用意しておかないと」


思わず、笑みがこぼれた。








































ようやく日も暮れて、だんだんと寒い風が吹いてきた。
結局お化けの格好はせずに、いつもの忍び装束のまま。
だけど、たくさんのキャンディーを抱えて歩いていた。
じゃりじゃりと、土の感触が足袋を通して足に伝わってくる。


「ふふふ、こっちから行ったらは組の子たちびっくりするかな?」


そう、もう、こっちから忍たま長屋に押し掛けてあの子たちにお菓子を配ってあげようと思ったのだ。
しかも、塀を乗り越えて、庭の方からの侵入!
驚く顔を思い浮かべて、だんだん楽しくなってきた。


「ん?」


ふと、足を止める。
風が、ざわざわと木々を震わせた。
私は、頭巾をとった。なにか、音が聞こえた気がしたのだ。
布越しではなく、直接外気にさらされた耳はすぐに冷たくなって研ぎ澄まされる。


…………


やっぱりだ。
何か聞こえる。
くぐもった、低い、暗い音。


「な、に?」


嫌だな、なんだか怖いなと思った瞬間、突然足もとの地面がぼこりと音をたてて、そこから腕が生えてきた!!!


「ひっ!!!!!?」


思わず、息をのんだ。
その血の気のない、腕ががっちりと私の足を掴んだ!
がくがくと、顎が揺れる。
こ、怖い!!


「………」


また、くぐもった音が聞こえてくる。ああ、声だ。
この腕の声だ!
と、気付いた時には遅く、私の行く手には新たに腕がぼこりぼこりと生えてきて、土を掴んだ。


「なっ…!!」


音をたてて腕に続いて肩、頭が土の中から現れてきた。
私の足を掴んだ腕にも、ぐっと力が入りぼこりと土の中から頭が現れた。


「……
…」
「……〜」
……ちゃ、ん」
「ひぃああああああああああ!!!」


思わず、両手に持っていたキャンディーも放り出して尻もちをついた。
四つの頭があらわれて、土にまみれたままこちらに顔を向けた。
血の気がなくて、どれもこれも青白いし、ところどころ顔がく、崩れてっ!!?


「おやまあ!こんなにキャンディーが降ってきた!!」
「あははははは!!〜!お前も仲間にしてやるぅ!」
「ああっ!こんな姿になってもなお美しい私に驚いてしまったか!を驚かせるだなんて…罪深い私の美しさ……うっとり」
「やった〜。だいせぇ〜こ〜!」
「な、綾部!?三木に滝に、タカ丸まで!!?」


そう、こっちを向いた顔はどれも見知った顔だった。
同級生の四年生たち。
私の足を掴んだまま三木エ門がにやにやと笑ってる。
地面からはいずりだしてきて、こっちにほふく前進してきたタカ丸さんが私のほっぺたをなでた。


「あはは〜、ちゃん怖かったぁ?涙出てる〜」
「こ、怖いに決まってるでしょ!!あんた達何やってるのよ!」
「はろうぃんでーす」


綾部がそこらじゅうに散らばったキャンディーをせっせと集めながら答えた。


、すごいだろう!私たちはゾンビだぞぉ!」


滝がぼろぼろの装束と、皮がはがれたり、つなぎ目が浮かんでいる腕などを自慢げに私に見せてきた。
確かに、パッと見は完全に本物に見える。


「すご!これ誰がやったの?」
「ん?綾部とタカ丸さんだ!」


なるほど、作法委員と髪結いの技術の総力といったところか……
ほめてほめてと、ニコニコしているタカ丸の顔にも斜めにつなぎ目が走っている。


「す、すごいけど、なんだか本当に痛そうに見えるよ〜」


そっと、タカ丸の顔をのつなぎ目をなぞると、指にぼこぼこした感触まで伝わってきた。


「それに、みんな髪の毛もぐちゃぐちゃじゃない」


今度は、未だ私の足を掴んでいる三木の髪の毛を手ですいた。
わざとだろうが、みんな髪の毛がぐちゃぐちゃになって、土の中に隠れていたせいで中にまで土が入り込んでしまっている。


「ああ、これはあとでタカ丸さんがシャンプーしてくれるからいいんだ」
「そう!きちっとお手入れしますからね!!」


にこにこ笑顔でそう言われると、じゃあ平気なのかな?と思ったその時。


「さあって!!それでは私たちの仲間になってもらおうか」
「え?滝仲間って?」
「ゾンビ〜〜〜」
「ええ!?な、なんで私が!!」


がしっと肩を滝に掴まれる。足は…やばい!三木だ!
横に立ちあがったタカ丸さんの手には櫛とはさみ。
斜め前方にはいつの間にか化粧道具を手にした綾部。
ふ、筆に青白い色を用意してるってことは……あの色に顔塗るつもりだ!!
というか、死化粧!!?


「え!や、やだ!放してよ!!」


すると、四人は顔を見合わせて、それはそれは息の合った返事をゾンビのくせに元気良くしてくれた。


「「「「とりっく おあ とりーと!!!!」」」」


残念ながらあんなにたくさん用意しておいた私のキャンディーは綾部の懐をぱんぱんに膨らませていて、私の手元には一つもなかった。


「いやぁあああ!!あっ!綾部!くすぐったいから!!ぎゃあ!タカ丸さん髪の毛ぐちゃぐちゃにしないでぇええ!滝!三木!放しなさいよぉおお!!」














































アイドルなのに顔が崩れてるゾンビーズで!
mzさんの「四年で『え!?お前がそれなの!?』で突撃!」でした!
コメントありがとうございました!
さんも立派なゾンビメイクをしてレッツハロウィンに参加です!