可愛いのが悪いのよ!




















「あー!もう、なんで今日に限って当番だなんて!!!!」


持っていた包帯を全部投げ出しては叫んだ。
今日はハロウィンだというのに、は運悪く保健委員会の当番に当たっていたので、みんなが仮装をして「トリックオアトリート」と騒ぎまわっているというのに、保健室から出ることすらかなわなかった。
保健委員なんてさぼって自分も行こうかと思ったのだが、律儀な性格のためそこまでに踏み切れず、結局保健室をぐるぐると歩きまわっては散らかして、片づけてを繰り返していた。


「わーん…私だって、かわいい格好して、みんなと一緒にお菓子食べたいよぉ…」


先ほど投げた包帯が、ころころと足もとに転がってきた。
あ、と、の口が開いた。


「そうだ…新野先生が前に言ってたのは……えっと」


ごそごそと、押入れをあさりだしたは、さっきの不平顔とは違って、にっこりとほほ笑んでいた。




































「あった!!」


は早速見つけたものを羽織ってみて、くるりと回ってみる。
すると、白い布がふわりと広がっての後を追った。


「ふふふふ、気分だけでもハロウィンだぁ」


は袖がだぶついている白衣を着こんで、込みあげてくる嬉しさを隠すように袖で隠れてしまった両手で口元を押さえた。
まるで、お医者さんになったみたいだと、一人の世界に浸っていたせいかはいつの間にかあいていた戸に気づいていなかった。
そして、背後に迫っている影にすら気づいていなかったのだ。


〜〜〜〜」
「わっ!!!?」


情けない声と共にがばりと後ろから抱きつかれ、突然背中にぎゅうぎゅうと顔を押しつけられは驚いたし、戸惑ったが、その声の主が誰だかわかるとほっと息をついた。


「なによ、三木……びっくりしたじゃない」
「う〜〜…」
「ん?三木、どうしたの?」
〜」


まるで、ぐずる子供のようにぐりぐりと背中に顔をこすりつけて、そのまま無言になってしまった三木。は、どうしたのかと首をひねったが、不意に香った香りのおかげで原因が分かった。


「三木、お酒飲んだ?」
「んーん」
「じゃあ、何か食べた?」
「んー」


すりすりしながら、三木はもごもごと口を動かして


「ちょこれーとを、食べたぞ」


これと、舌っ足らずな言葉づかいで後ろから差し出されたのは銀色の紙に包まれたまあるいチョコレート。


「ん?」


くんと、受け取ったそれを嗅いでみると香ってきたのは強い酒の香。
ああ、なるほどウィスキーボンボンだ。
どれくらいの量を食べたのか分からないが、これでどうも三木エ門はほろ酔い気分のようなのだ。


〜〜」
「あーん、もう!」


は三木エ門を離そうと四苦八苦したが、三木エ門は三木エ門でのことを離そうとはせずにぴったりと張り付いている。
そして、離れてという声に微かに反応してぐずぐずといやだーと返事を返してくる。


「わわっ!!」
「んん〜〜」
「……もう」
〜」


結局三木エ門が離れることはなく、の肩口に顔を押しつけて彼女の胴に腕を巻きつける形になってしまった。


「別にいいけどさ……」
「ん〜」


顔をうっすらと赤らめて幸せそうに目を閉じている三木があまりにもかわいかった。


「三木エ門さーん?」
「んー」
「お、襲っちゃい…ますよー?」


そのまま座ってみると、一緒に三木エ門も足の力を緩め、にくっついて座る。
軽く、後ろに体重をかけると大人しく三木はのことを抱きかかえるような形で背を床に預けた。


「………」


の顔がにやけているのは気のせいじゃないだろう。


「三木〜〜〜!!!!」


思わず、体を無理やり三木エ門の腕の中で反転させてこのまま三木エ門を!!!と、が思った瞬間、ばたんと保健室の戸が開いて、息も絶え絶えな伊作先輩がそこに立っていた。


「え!?あ、ちゃん!!?」
「い、伊作先輩!!!?」
「んん〜、〜」


伊作は互いを抱き合う二人に驚き、は伊作先輩の格好に驚いた!


「な、ナース!!!!!!!!?」


伊作は白さが眩しいくらいのナース服にその身を包んでいた。


「い、伊作先輩か、かわいいいいいい!!!」










































とりあえず、三木エ門を背中にくっつけたまま白衣のと、ナース服に身を包み、なれないスカートの短さにもじもじと裾を気にしている伊作が対面して座っていた。
ある意味、正しいようで、間違った光景だ。


「で、それで伊作先輩は逃げてきたわけですか」
「う、うん……そうなんだ。部屋に戻っても絶対見つかっちゃうし…ここが一番勝手知ってるし」


伊作がどうしてこんな恰好をしていたかの経緯について話していたのだ。
彼の話によると、いつもの六年生の仲間でどんな仮装をするのか、くじで決めたらしい。
そこは我らが不運委員長。
ぴったり一番の貧乏くじを引いてしまったのだ。
大当たりの「ナース服」。
嫌だと抵抗したのだが、そこは多勢に無勢。あっという間に着替えさせられてしまったのだ。
それを面白がって、追いかけまわされるのがいやでここまで逃げてきたらしい。


「本当……恥ずかしいよ」


ぐすんと、涙をにじませている伊作先輩にの理性もいっぱいいっぱいだった。
背中にはまるでこどものような三木エ門に、前には白いふとももをあらわにしているナース服の伊作先輩。
そして、自身は白衣を着ている。
うん、さらには丁度包帯もこんなところに転げている。


「い、伊作先輩!ごめんなさい!!!!!」
「え?」


火事場のバカヂカラと言おうか、は三木エ門をくっつけたままだというのに、さっと身を翻し、包帯で伊作先輩の両手を頭の上で縛り上げてしまった。


「あっ!!?ちゃん!!?」


伊作も逃げようとしたのだが、スカートが邪魔をして倒れ込んでしまったため、の突然の襲撃も防ぐことができなかったのだ。


「い、伊作先輩かわいすぎますっ!!」
「うわっ!!?」


そのまま、は仰向けに倒れてしまった伊作の上にのしかかり、伊作が抵抗できないことをいいことに先ほど三木エ門から取り上げたウィスキーボンボンを包みから取り出した。


「伊作先輩」
「な、なに?」
「ハロウィンの呪文……知ってますか?」
「え、えっと……」


足の間にの体が割り込んでくる。
短いスカートのせいで、きわどいところまでせり上がってきてあと少しで、見えそうなのが気になってしょうがない。
そして、自分のからだの上で、妖艶な笑みを浮かべているの柔らかさにもめまいがしてしまいそうだ。


「と、とりっく……おあ、とりーと?」
「せいかい」
「んっ……」


は伊作先輩の唇にボンボンを押しつけた。
甘い香りと、普段とはかけ離れたの様子に戸惑いながらも思わずそれを口にしてしまう伊作。
口の中で、甘いチョコレートが崩れ、強い酒が舌を痺れさせた。


「ふぁ、こ、これ」
「おいしいですか?」
「あ、のどが…」
「どうしたんです?」
「熱い」


にっこりと笑みを浮かべての手が伊作の頬に添えられた。


「そうしたら、口開けてください。看護婦さん……私が診てあげます」
「あ、」


の手がそのまま滑り、伊作の唇を滑り、細い指が歯に触れて彼の口をこじ開けた。


「ふふ、チョコレートがついてますね」
「ふぁ……や、ら」
「ん〜〜!〜〜……私も〜」
「あっ!!!?」


かまってもらえずに、三木エ門がぐいっと後ろからのことを押した。
はそのまま伊作の上に倒れ込み、体を伊作に押し付けてしまう。
と、その瞬間保健室の戸が再度思いきり開かれた。


「伊作〜〜!!!ここか!!!?」
「伊作!いいかげんにあきらめろ!!!」
「って……ああああああああ!!!?」


保健室に六年の委員長たちがなだれ込んできた。
そして……


「し、失礼しましたー」


そっと、戸を閉めて出ていった。


「あ、や、こ、これは!!!別にまだ何もしてないですから!!!」
「んん〜……〜私にも〜」
「や、み、みんな待ってよ!!!!!」
「だぁあああ!!!待ってぇええ!!!」





















































待つも何も、ナニする気満々だったくせに!って言わないでください。
なんていうか、書いていてめちゃくちゃ楽しかったです^^
趣味全開。
匿名さんの「可愛い三木とか伊作見たいですw」のコメントからでした!
コメントありがとうございました!
よくばって二人にしてよかったと思います!