ドキッ!忍たまだらけのハロウィン大会!


































いろんな顔をみんなでくりぬいたかぼちゃの提灯の中に、灯りを入れると、思わず息をのむほどの美しい光景になった。
グラウンドいっぱいに積み重ねられたかぼちゃや、ところどころに突き立てられた案山子の頭が時折吹き抜ける風でゆらゆらと揺れている。
は頭にかぶった魔女の帽子のつばをつかむと、ぐいっと一段と深く帽子をかぶりなおした。
大ぶりな帽子で目もとまで隠れたの口もとはにっこりと緩んでいる。
太ももが大胆に露わになった魔女のワンピース。この日のために作ったのだ。


「う〜〜…ハロウィン!ハロウィンがきた」


人知れずそう呟いた。
ぞくぞくと肌が粟立って、楽しくてしょうがない。
うずうずと、体が「楽しい」という空気で満ち満ちて今にも破裂してしまいそうな気がする。
思わず、人の間をすり抜けて駈け出した。
さすが忍者の卵たち。互いにぶつからないようにほんの僅か体をひねるだけで、が近くを通ってもぶつからずに済んでいる。
そう、は逃げているのだ。
逃げるという状況を楽しみながら、逃亡している。






























、ハロウィンの日に鬼ごっこしようぜ?」
「鬼ごっこ?」
「鬼ごっこ」
「いいけど、捕まえるのはそっち?」
「こっち。こっちのみんな」
「みんな?」
「そう、鬼ごっこするのを何人かに伝えて、それでを追いかける」
「追いかけて、どうするの?」
「どうしようか」
「お菓子、たくさん私持ってるよ?」
「お菓子はなぁ……」
「じゃあ、何がいいの?」



にいっと、唇の端が上がって、耳元に囁かれる言葉。



のこと自由にできる」



そのままれろりと舐め上げられて、思わずその横顔に手のひらをお見舞いした。
だけど、至極楽しそうな上、挑戦的な目を見た瞬間、頷いていた。



「いいよ、捕まえられるならね」



悪戯っぽく笑えば、それは勝負の始まりだった。





































捕まらない自信はある。
それに、この仮装なら顔もちゃんと見えないから、誰か分からないはずだ。
グランドに設置された大きな机の上には、目にも鮮やかな飲み物や食べ物が所狭しと並んでいた。


「ん、おいし」


ごくりと、カップの中身を飲み干せば、かぼちゃの味が口の中に広がった。
さあさあ、誰が私のことを追いかけているのだろう。
くふふと、笑いがこみあげてくるのを押さえられない。
どうにもこうやって、追いかけられるという状況は嫌いじゃないのだ。
何とも言えない緊張感と、昂揚感。
と、その時突然足を引っ張られた。


「ぉわっ!!!?」


そこかしこで上がる笑い声に紛れてしまい、誰も私が倒れた上、机の下に引き込まれたことに気付く事はなかった。
思いっきり引っ張られ、仰向けのまま机の下で対面したのは


「こ、小平太先輩……」
!」


視界いっぱいの小平太先輩。
ほっぺたに泥がついてる。
なんの仮装だろう、すっぽりと体を長いローブで身を包んでいた。


「わははは〜、その様子だと、まだ誰にもつかまってないな?」
「捕まるって…ま、まさか先輩も?」
「鬼ごっこに参加してる」


その言葉とともに、急接近してきた小平太先輩の顔。
思わず目を閉じると、瞼の上にひとつ。
口付けを落とされた。


「ぅ、え?」
「じゃあ、のこと最初に食べれるのは私かな?」


にいっと、真っ白な歯がむき出しにされて笑われる。
不覚にも、私はそんな先輩の笑顔にときめいてしまった。
でも……


「まだ!捕まるわけにはいかないんです〜〜!!!」


思わず逃げようと、手に触れた先輩の長いローブを掴んで暴れた。


「なはは!ってば大胆!そんなに早く私と交わりたいか!!」


知らず知らずのうちにローブをまくり上げてしまい、先輩の下半身が褌一丁になっていた!!


「ぎゃああ!!?せ、先輩なんで袴とかはいてないんですか!!?」


思わず、顔を赤らめてばっと、まくり上げていたローブを直そうとしたのに、先輩は体をそのまま私のからだに押し付けてきて、それを阻止した。


「あ、わ……や、その……ってます」
「ん〜?、なんだぁ?」
「あ、の……せ、先輩の……そ、その……」


すりっと、小平太先輩の腰が動く。
まだ固くはないが、先輩の下半身が私の太ももに擦りつけられて……


「ひっ!!せ、先輩の……当たってますってば!!!!」


ことさら、その感触が強くなって、思わず叫んでしまった瞬間、突如として、頭上の方から何かが這いずるような音が聞こえてきた。
二人して、そちらの方を見ると……


〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!見つけたギンギーン!!!!!」
「も、文次郎先輩!!!?」


猛烈な勢いで匍匐前進してくる文次郎先輩がいた。
頭には例の如く苦無をつけてギンギン鳴きながらこちらに向かってくる。


「ひっ!!!?」


文次郎先輩はよくよく見れば、唇を突き出してこっちに突っ込んできていた。
か、確実に私のことを狙い撃ちにする気だ!!!
非常な危険を察知した私は、思いきり小平太先輩の体を掴んで、そのまま腕の力で小平太先輩を頭上の方へと押しやった。
文次郎先輩のせいで、油断していた小平太先輩は私の思惑通り体が前方に行き、私はそれと入れ違いに後方へと体が滑る。


「小平太先輩!御免!!」


鈍い音と、なにやら断末魔が聞こえた気がしたが、聞こえなかったふりをして、そのまま机の下から脱出した。


「ふ、ふう……危なかった。特に文次郎先輩が」


額の汗をぬぐって、また私は走り始めた。
すると、その途中で妖怪の豆腐小僧に化けている久々知を見かけた。
あっちは、私には気づいていないが、どうやら私のことを探しているようだ。
きょろきょろと、隙なくあたりを見回している。
………久々知の格好に思わず私の頭に血が上った。
気配を消して久々知の後ろに回り込んで、思い切り、その両肩の部分の着物を掴む。


「うわっ!!!!?!!!?」
「何度言わせる!!!豆腐小僧はまだいないのぉおお!!!!それに、持ってる豆腐は木綿でも絹でも杏仁でもない〜〜!!!!!!」
「わっ!!?な、なんだよ!!!?捕まえるのは俺だろ!!!?」
「紅葉だ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」


その叫びと共に両手を下に引く!心おきなく思う存分下に引く!
久々知の着物を剥いてやった!!
あられもない声を上げて、思わずその場にしゃがみこんだ久々知がこちらを涙目で見上げてくる。覚悟!!とばかりに、思いきり手を振り上げて、そのまま久々知の背中に振り下ろした。


パァン!!


「ひゃうっ!!!!!」


真っ白な久々知の背中には見事に真っ赤な紅葉が一つ。


「よかったね、久々知。これで紅葉豆腐だね!」


にっこりとほほ笑んでやって、私はそれじゃあと手を上げた。
よかった!これで紅葉になった。


「ふぁ、っ!!ま、待って!!」


追いすがろうとする久々知を足蹴にして、私はまた走り出した。






























急に、大きな網が視界を覆った。


「わっ!!!?」


身動きとれずに、その場に倒れ込んでしまう。
その上に、すぐさまにのしかかってくるからだ。


「やった!大物ゲット!」
「た、竹谷!!!?」
「そ、捕まえた」


にかっと、笑顔を浮かべた竹谷が上から私を見下ろしていた。
肩から小ぶりの虫籠を下げている。
なるほど、これは、虫取り網か……


「はは、ようやく邪魔のはいらない場所までが迷い込んでくれたから捕まえられた」
「え?」


ふと、自分がどこに来てしまったのかとあたりを見回すと、かぼちゃのランプも案山子もお菓子も何もない、さみしい場所だった。
ああ、ここは用具倉庫の裏?
ぼうっと、考えていると、肩を押さえつけられて竹谷の顔がぐっと近づいてくる。


「それじゃあ、のこと捕まえたし?」
「ん……」


網越しに、唇が重ねられる。


「約束通り、のこと自由にしていいか?」


そんなこと聞かなくたって分かってるくせに。
最初にこのお遊びを持ちかけてきたのも自分のくせに。
網が、ひどくゆっくりと取り払われた。


、トリックオアトリート」


答えずに、竹谷の首に腕を回して、自分から口付けてやった。


「いでっ」
「ふふっ、痛くしてやったの」


最後に下唇に噛みついてやった。
すると、お返しとばかりに竹谷も私の耳に噛みついてきた。
痛いのに、愛おしいだなんて思ってしまうのは、竹谷だからだよ。


「それじゃあ、いただきます!!」


短い魔女のスカートの中に思いっきり手を入れてきてそのまま悪戯をしようとする竹谷はどうやら着たままするらしい。
なんだか、恥ずかしいやら可笑しいやらで、私は酔ったみたいに笑い声を上げて竹谷の愛撫に身悶えた。


「私なんかで、食中毒起こしたって知らないんだから!」
「本望だ!」



















































ふう、どたばた?かな!
でとろさんの「ドキッ!忍たまだらけのハロウィン大会!」のコメントからでした!
大会というか、謎の鬼ごっこと言いますか…
コメントありがとうございました!
もっと、腕を磨かネば!!