一枚上手!

























今日は、前々から楽しみにしていた「はろうぃん」!!
なんでも、しんべヱによると、お化けの仮装をしてお菓子をもらうか悪戯をしていいそうだ!
これは、願ってもないいい機会だとばかりに、日頃馬鹿にされている恨みと、甘いお菓子への期待で胸を膨らませて忍たま長屋に走った。
三郎と雷蔵の部屋の前に行くと、中からいつもの四人の笑う声が聞こえてきた!
私、ついてる!と、ばかりには戸を思いっきり開け、一年は組の子たちから教えてもらった言葉を叫びながら中へと突入した。


「とりっく おあ とりーと!!!」


「「「「………」」」」


「あ…れ?」


が入った瞬間に静まり返る部屋。
さっきまでの笑い声が嘘のように冷たい目でこっちを見てくる四人。
な、なんだ、これ……。
私、なにか間違ったことした?
と、が滝のように汗をかきながら頭の中で自問自答をしているというのに、依然向こうも動く気配がない。


「と、とりっく…お、あ……と、とりーと」


もう一度は繰り返して見たが、どう聞いてもの声は今にも泣き出しそうだった。


「……ぷっ!」
「あ!馬鹿!竹谷笑うな!」
「そ、そうだよ…笑っちゃ…」
「あはははははは〜!本当に来た〜〜!!」


状況が理解できず、戸惑いながらは四人に近づいて行った。四人とももう我慢ができないとばかりに大笑いしている。


「な、なんなのよ!なんで笑ってるのよ!!」
「あ、だってさっき一年生の子たちが先輩が私たちの所に来るからちゃんと準備しておいた方がいいですよって。まさか、本当に来ると思ってなかったのに、ちゃん本当にちゃんとくるんだもん」


目尻の涙を拭きながら雷蔵がようやく笑っている理由を教えてくれた。
まさか、完全にばれていたとは思いもしなかった。の顔が急に赤くなる。


「し、しかも…!なんだよその恰好!!」


三郎が腹を抱えながらのことを指さした。
そう、一応ちゃんとしんべヱに教えてもらったとおりにお化けの仮装をしてみたのだ。


「ば、馬鹿三郎!これ作るのすごい大変だったんだからね!!」


三角帽子に、かわいいフリフリのスカート。
魔女の扮装をはしていた。
自分では、うまく作れたし、かわいいと思ったのに…まさか笑われるとは。


「も〜!あんた達なんか知らない!馬鹿!あほ!豆腐!!」
「あ〜、ごめんごめん。怒るなって。あんまりにもお前が単純すぎて笑っちゃったんだよ。それに、豆腐は久々知だけだぞ」
「な、竹谷!豆腐っていうのはな、最上級のほめ言葉だから、ありがたく受け取れよ」
「いやいや、ほめ言葉じゃないから」


腕を組んで怒ってしまったをなだめて、竹谷はを座らせた。


「それで、
「なによ!」
「ほら、怒るなよ。俺たちになんかしてほしいんじゃなかったのか?」


竹谷がそう言ってくれたが、まだ拗ねているはしぶしぶ竹谷にもう一度「とりっくおあとりーと」と、ぶっきらぼうに言った。
すると、竹谷は苦笑いしながらも懐から綺麗な紙の包みを出した。


「これだろ?ほい、お菓子!」
「え!!?た、竹谷お菓子くれるの!?」
「おう!せっかくが来るって聞いたから準備しておいたんだ」
「きゃ〜!ありがとう竹谷!!」


竹谷からそれを受け取ると、は急にご機嫌になってにこにこと笑顔になった。
そして、今度は久々知に向かっては手を差し出して「とりっくおあとりーと」と言う。


「ふふふ〜、私からはこれだ!」
「………」
「あ、あれ??い、嫌だったか?」
「……まともだ」
「え?」
「さ、三郎!?あんた、三郎が変装した久々知!?」
「え!?いやいや、三郎はお前の横にいるだろう!?なんだよ、ほ、ほしくなかったのか!?」


久々知が差し出したのは、両手いっぱいのキャンディーだった。


「いや、どうせ久々知のことだから杏仁豆腐か豆腐が出てくると思ったのに……あまりにまともすぎて。偽物かと」
「な、なんだよ!私だって豆腐ばっかりじゃないんだぞ!!」
「あ、久々知ごめんね?やだ、拗ねないでよ!すごい嬉しい!」


口尖らせて、長い睫毛を伏せた久々知に笑いながら謝り、そのキャンディーを受け取った。


「はい、今度は私から、ちゃんに」
「え!!?雷蔵もくれるの!?」
「うん、ちゃんがせっかく私たちのためにこんな可愛い格好してくれたんだから!」


にっこりと、微笑む雷蔵の笑顔にのほほが染まる。


「うう……雷蔵〜〜!雷蔵だけだよ!私のことちゃんとほめてくれるのぉ!」


思わず、嬉しくて雷蔵に抱きついてしまうと、彼は困ったように「お菓子渡せないよ?」と苦笑する。
ああ、雷蔵の娘になりたいと、は思わず思ってしまうのだ。


「わ〜い!雷蔵もありがとう!!お菓子こんなにいっぱいになった!!」
「よかったねちゃん」
「うん!!!」
「いやぁ、こんなにお菓子食べて太りすぎるなよ?」
「竹谷、それって太る前提で言ってるね!」
「まあな!」


いじいじ


〜、リベンジでその恰好のまま後で豆腐食いに行こうぜ〜。久々知特製豆腐!」
「え?久々知特製豆腐って?」
「私ブレンドな大豆で作った豆腐!」
「……なんか、遠慮しておく。どうせ、食べ方とかうるさそうだし」
「なっ!?お前、その豆腐はな、口もとに必ず豆腐をこびりつかせるのがポイントなんだぞ!」
「ただの変態だね!断る!」
「うっ!!!のばかぁ!」



いじいじいじ



「……あ〜、三郎?」
「………」
「三郎さーん?三郎さん」
「………なんですか」
「怒っていらっしゃいますか?」
「………別に」


あえて、三郎に「とりっくおあとりーと」と聞かなかったら、三郎が拗ねてしまった。
確実に嫌な予感がするから聞かなかったが、ここまでいじけられていると、もしかしたら他の三人同様ちゃんとお菓子を用意していてくれたのかもしれない。
いじけている三郎の後ろ姿を見ていて、はなんだか申し訳なくなってきた。


「ご、ごめんね!三郎!ほら、三郎にも言うから!」
「……」
「ね、三郎、とりっく おあ とりーと!」


が元気よく言うと、ゆっくりと三郎が振り返った。


「トリック!!!!!!」
「ぎゃぁああああああああ!!!!」


振りかえった三郎の右目が飛び出していた。
でろーんと飛び出た目玉に驚いては叫びながら尻もちをついてしまった。


「わわわわわわ……目がぁ!!目がぁあああ!!!」
「あははははははは!!!」


顔を真っ青にさせて涙目になったを見て、三郎に限らず他の三人も大笑いしている。
心臓がバクバク言ったが、は四人を見回して半泣きでようやく騙されたことに気づいた。


「わーん!四人のバカ!」
「あははははは、ほら、これあげるから!」
「ひぃ!ちょ、目玉投げないでよ!」
「それお菓子だから、お菓子!」
「食べたくないわっ!」














































悪戯に関しては向こうが完全に上手でした!
真さんコメントの「学年どたばた」でした!
コメントありがとうございました!
ぎゃあぎゃあ言っている五年生が大好きですv