エゴイストの大好き





































しゃらりと音を鳴らして簪が揺れた。
それを見て、満足げに頬を緩ませたタカ丸はもう一度、飾りを掬い音を鳴らした。


「うん、上手にできたよー」
「あ、ありがとう」


どこか浮かない顔をしているはタカ丸の方を振り向きもせずに、揺れる自分のつま先ばかり見ていた。
タカ丸はそんなをにこにこと笑みながら見つめ、しゃらんと更にもう一回指を動かす。


「どうしたの、ちゃん」
「別に、なんでもないよ」


うーんと、わざとらしくうなって見せて、タカ丸は首をかしげる。
くるりと櫛と鋏が手の中で回転し、前掛けの中にしまわれていく。
音もなくしまわれるその手つきに感心することもなく、小さくため息をついたは一向に自分から何か話そうとするそぶりもない。


「どうしちゃったのかなー?」


後ろからのその両肩をそっと抱きしめるタカ丸に、ぴくりと体を僅かだが強張らせた
自分の結いあげた髪や、首筋や、耳や頬にすりすりと頬を擦りつけるタカ丸は、まるで本当の猫か何かの様だ。


「んー、昨日の実習疲れちゃった?」
「……」


無言で微かに首を振る


「じゃあ、どうしちゃったんだろうね」
「そういう言い方嫌い」


まるで子どもを扱うように言わないで。


「うん、ごめんね」
「……うん……わっ!?」
「あはは、柔らかいね」


ぺろりと舐められて思わず顔が熱くなる。
慌てて舐められた所を擦り、タカ丸の腕の中から逃げようとするのだが、逃げられない。


「あ、もう!タカ丸離して」
「やぁだ」
「私も、やだもん」
「俺もヤダもん」


くすくすと、笑われてしまうとなんだか恥ずかしさがこみあげてくる。


「ねえ、ちゃん気付いてる?ここには俺たちだけしかいないんだよ?」
「え?」


とんっと、ほんの僅かな力がにかけられただけというのに、あっという間にの体はぐらりとバランスを失い、そのまま床へと柔らかくタカ丸に押しつぶされる。


「な、なに」
ちゃんが、元気になってくれないかなぁ〜」
「げ、んきだよ」
「元気じゃないね」


腕の中に閉じ込められたの視界はタカ丸の胸で埋め尽くされて、それどころか肺の中までタカ丸の匂いが充満していく。
くらりと、溺れてしまう様な感覚をいつだって覚えているのに、こうされてしまうと余計に、苦しい。


「ん、ん、ん」
「わ、ひゃ、ちょ、ちょっと!タカ丸!」
「ん、かわいい、大好き」


ついばむ様な口付けを額や髪の毛、頬や目のふちに落としていくタカ丸。
の顔にタカ丸の髪が柔らかく触れて、くすぐったいのにキスが止むことはない。
間近でにっこりとほほ笑むタカ丸。


「ね、ちゃんからもちゅうして?」
「え?」
「お願い。俺、ちゃんからちゅうしてほしい」


へにゃりと眉を下げたタカ丸にお願いされてしまうと、言葉がつかえてしまって、は仕方がなくそっと触れるだけの口付けを自分からした。
ぱっと口を離すと、心底うれしそうな顔をしたタカ丸が目に飛び込んできた。


「じゃあ、俺もちゃんにサービス」
「え?」
































「あ、や、やめてよ」
「やーだ」


床に横たわったの足をタカ丸が掴んで離さない。
それどころか、素足になったの足に口付けしていくタカ丸。
ふくらはぎに紅い痕がつき、べろりと舐めあげられるたびに、は体を震わせる。


「あ、うぅ…や、も、や」
「つま先から、頭の先まで俺でいっぱいにしてやりたいよ、本当」


がじり、と、甘く噛みつかれてびくりと反応してしまう。


「ね、ちゃん言って?どうしたの?」
「……」
「ね、」
「わわっ!」


ぐいっと、太ももを掴んだまま体を寄せられ、胸に太ももが付きそうなくらいに体を折り曲げられる。
微かに、擦れる場所に、硬さを感じての顔は余計に赤くなっていく。


「言って」


すり、すりすり、


「あ、んん……」
「言えるでしょ?ちゃん」
「あ、」


腰が、離れる。
既に充分と言えるほどの両足への愛撫のせいで、の下半身はじんじんと疼いているのをタカ丸は重々承知で、耳にかみついた。


「俺、言って欲しい」
「………さ、」
「うん」
「さみ、し、かったの」


ぎゅうっと目をつぶって、真赤なうなじを曝しては首をひねった。
嫌でも知っている。タカ丸の周りにはいつだって女の子たちの垣根が出来ていて、その中に自分は入れない。
みんなにいうことだってできない。
解らない。どうしていいかわからない。
どうして、こんな関係になっているのかもわからない。
ただわかるのは、タカ丸がみんなの髪を触っているのを目にしてしまえば、言いようのない寂しさが募ってしまうと言うことだけ。
だけど、そんなことをタカ丸にいった所で、どう仕様もできないのも解っているからいいたくなのに。


ちゃん」
「え?」


ぎゅううううっと強く強く抱きしめられた。


「本当、かわいい。大好き、好きで頭爆発しちゃいそうなくらいスキ」
「え、あ、」
ちゃん教えてあげる」
「え?」


耳に届いた返事は、衣擦れの音。


「俺が、ちゃんのことを好きすぎて、遂にやっと口説き落としてこんな関係になったんだよ」
「あっ、んんん」
「もう、そういういじらしいトコ、たまんない」


ぞくぞくするような、圧迫感と、擦れる感触。
体の奥を拓かれていくのにいっぱいにされる、矛盾した快感。
痛い様な気持ちよさ。


「だから、もう手加減したくないほど我慢できなくなるんだ」
「ふぅあ、あ、あん、ぅあ、た、かまる」
「愛してる」


自分で整えたの髪を、自分の手で乱れさせて、がむしゃらに腰を打ちつけた。
ただただ、満たされる互いの体と心に、どこか一つになっていく感覚をゆだねて、気持ちよさを追いかけていった。

























わざとだよ、なんて言ったら君はどんな顔をするかな