触らないで 急に、そう、あまりにも突然の事すぎて俺はどうしていいのかここ数日悩みに悩んでいた。 なにがあれって、俺の恋人ののことだ。 自他共に認める恋人同士………だよな? 思わず小さなため息が出てしまう。ああ、こんな時は笑いながら幸せ逃げてくぞ―って言ってくれるのに。なのに。なのに。 「……あ〜、どうしよ」 もうこうしての部屋の前に立ち尽くしてどれぐらいたっただろう。 が俺にあんまり会いたくないって言われてからどんくらいたったんだよ。 たし、たし、たしと、つま先が意味もなく床を踏みしめる。一歩も動くことないこの場所から、どうしたもんかとただ不安やら焦燥感で体が軋む。 「触ってほしく、ない……か」 の衝撃的発言によって俺の心はぼっきぼきに折れた。 固まってしまった俺に「ごめん!」と、一言残して走り去るの髪が揺れるのを見ているうちに、その日は日が暮れていた。 一日、の言葉が頭の中を回っていた。そのあと、一日の困った顔ばっかり浮かんでは消えた。一日、の言葉の意味を考えて、ようやく気付いた。 なんで触ってほしくないのか、わかんね―じゃないかと。 そして、今。こうして通いなれたの部屋の前に来てみたが、どうしても戸に手をかけれない。 「〜〜」 絶対中に聞こえない程小さな声で、の名前を呼ぶしかできない俺は、非常に男らしくない。 うん、断じて男らしくない。 「……おし」 そうだ。竹谷八左ヱ門。 俺は、男だ!そして、のことが好きなんだ!好きなんだよ! 好きな奴の所に行けなくてどうする! 心を奮わせても、やっぱり戸にかけた指先は微かに震えていた。 初めて実戦に行った時も、こんな感じだったっけな。どうだろう。今の方が、断然苦しくなるほど勇気振り絞ってるだなんておかしいのかな、俺。 「ごめん!いるか!」 がらりと、戸を開くと、背中越しにこちらを振り返ったと目があった。 「あ、た、竹谷!?」 「ーーー!!ごめん!!」 目があっただけの一瞬で、顔を真っ赤にさせたにいてもたってもいられなくて、思わずに飛び込むように抱きついた。 久しぶりに抱きしめたの体は、俺のこの体となんか比べ物にならないくらいにちさっくて、細くって、今までこらえていた筈の寂しさがはけ口を見つけて叫び出す。 「ほんっと、俺が悪かった!のいやなことしちゃってたらごめん!でも、俺に触るなって言われてからどうしていいのかわかんなくて、もう、やばいくらいにが大好きで!」 「あわわわ!ちょ、もぉ!た、竹谷あああ!!落ち着いて!!」 腕の中にすぽんとおさまったの頭に頬を擦りつけ、ぎゅうぎゅうと抱きしめる。 久々ののぬくもりと、柔らかさにどんどん頭は熱に滾っていく。 逃げようとがもがくせいで、俺の腕とか、腰とかにのお尻や、おっぱいが押し付けられて、たまらない柔らかさに熱ばかりが加速していく。 「あ、も、っ」 「あ、んんっ!!?やぁ、ちょ、た、たけぇ!」 思わず鷲掴みにした胸が手のひらでむにゅむにゅと形を変える。 くらりと、の匂いに包まれていく。 「、大好きだ、すげぇ、好きで、馬鹿になりそう」 柔らかくて、あったかくて、大好きなのおっぱい。 「はぁ、やっべぇ、すごい気持ちい」 「あ、ふぁぅ……」 もう、無我夢中に手を動かしていると、不意にの声に気付いた。 「……ぅ、やっだ…さわっちゃ、やだ」 「え?」 ぱたぱたと、の瞳から大粒の涙が落ちていた。 顔を真っ赤にさせて、は唇を震わせた。 「こ、これ以上揉んだら、もっとおっきくなっちゃうから、だめ」 「………」 「ひゃっ!?あ、う、ぬぅあうっ、た、たけぇ!?」 「俺に触らないでって言ったのってそれのせい?」 「あ、だ、だってぇ、アッ!ぅ、お、おっぱいが」 「絶対触るのやめない!!!!」 終 馬鹿じゃないよ、大好きなんだよ |