限られた時
































「ねえねえ、竹谷知らない?八っちゃん」
「なんだその言い方、ガキっぽいぞ


三郎のツッコミを聞いて、一斉に笑いだす五年ろ組の奴ら。
しかし、慌てず最高の笑顔で次の実習の時に無事で済むと思うなよ?くのたまにそんなにいじめられたいの?と、言ってやると途端に静かになった。
どうやら、それぞれが過去の忘れたかったはずの思い出が強制的に脳内で再現されているようだ。
しかし、そんな中でも笑顔を崩さないのが雷蔵と三郎だ。
気心知れてる中だからこそ、がそこまで本気で言っていないと分かっている。


「ねえねえ、探してるんだけどどこにもいないの。竹谷」
「んー…さっきまでここにいたけど」


雷蔵は腕組みをして、竹谷が居そうなところをうんうんと考えだしたのだが、いつの間にか眠ってしまっている。はくすくすと笑いながら、そんな雷蔵の肩を揺らして起こしてやった。


「ああ、ごめんね。うーん、どうだろう…久々知の所にでも行っちゃったかな?」
「久々知?あー…でも、今日は一緒にご飯食べようって言ってたのになぁ」
「お!遂に愛想尽かされたのか!やっぱりなぁー、竹谷にはもっとおしとやかな、三歩後ろであなたをたてます!って感じの、おしとやかな子の方が合うと思ってたんだよなぁ」
「三郎黙って」


思いっきり片手でほっぺたを掴んでやると、どうやら色々学習はしているらしい。黙ってくれた。


「まあ、私だって自分がそういうタイプの子じゃないって思うけど」
「けど?」
「竹谷の事は誰よりも好きだから」
「「きゃー!!ってばだいたーん!」」


私の手から逃げ出した三郎は雷蔵と手を取り合いながら二人できゃあきゃあ騒ぎ出す。
どこぞの女子だ。


「あー!もう!本当どこ行っちゃったの竹谷ー」


ぐてっと座り込んでしまうにもう飽きたのか、ろ組の面々はそれぞれ連れだって昼食へと教室から次々と出ていく。
結局最後まで残った雷蔵と三郎、だったが、それでも竹谷が姿を現す気配もない。
毒虫が逃げだせば、自ずとその声は聞こえてくる。それすらないのだから、竹谷が委員会で捕まっている訳もないだろう。
ぱたぱた足をばたつかせながらはぽつりとつぶやいた。


「今日の朝も、昨日の夜も、竹谷いないんだよね」


他から見ればそれは大したことではないだろうが、四六時中一緒といっても過言ではない二人だったから、そこから考えてみれば大事件なのかもしれない。


「えー、雷蔵!私愛想尽かされちゃった?」
「それはないんじゃないかなぁ?だって、竹谷がちゃんのこと好きって言うのと今すぐ会いたい今会いたいって騒いでばっかりだったし」
「本当?」
「本当本当、こっちはいい迷惑だ。お前のぬいぐるみでも造って竹谷に持たせておけよ。あっ!だめか…裁縫、私より下手だもんな!!」


ばしばしとの背中を叩いて笑う三郎は、いつもなら飛んでくるはずの怒った声が来ずにぴたりと笑うのをやめた。
はいつになく大きなため息をついた。


「竹谷八左ヱ門不足中……」
「ね、ちゃん元気だしなよ。ご飯行こう?」
「そうだよ、!別に竹谷なんかいなくったってお前の好きなおかずはお盆の上に乗ってるぞ!」


かたりと、教室の入り口に誰かが立った。
は、竹谷かと思いはっと顔を上げる。


「きっとさ、二人でいる時間全部使い切っちゃったんだよ」


久々知だった。
相変わらずひょうひょうとした顔で、唐突にものを言いだす。


「だから、もう竹谷には会えないかもね」
「へーすけ」


久々知が言うと、なんだか本当のことのようだった。




「残念。。時間切れだ。」




だから飯に行こうと、手を差しのべられてもは動けなかった。


「って!この馬鹿やろおおおおお!」


ぼかんと、入り口にいたはずの久々知がふっとんで、代わりに登場したのは竹谷だった。


「竹谷!!!!!」
「兵助!お前訳わかんないこと言っての事泣かすな!」
「いやいや、そもそもが泣くと思ってんのか竹谷」
「三郎黙って」
「はい」
「わーん!竹谷〜〜!寂しかったよオオおお!」
ごめんな!!」


がばっと、抱き合うと竹谷。
すっぽりと竹谷の胸に収まるはさながら主人を見つけた犬の様だった。


「いてててて、竹谷!お前なんで殴るんだよ!」
「兵助!」
が寂しがってるの知ってて、わざと隠れてたくせに!!」
「わ、馬鹿!」
「よし、竹谷。話を聞こうか」
「あ、わ、う」


の腕に静かにそれでも、着実に力が込められていくのが、段々と変わっていく竹谷の表情で手に取るようにわかる三人だった。


!ご、ごめん!」
「なんでか簡潔に言ってよね」
「さ、寂しがってるも可愛いなぁって思ったらついつい!!」
「か、可愛い!!?」


ばっと、竹谷から離れたの顔は真っ赤だった。


「たたたた、竹谷のバカアホ!髪の毛ボーボー!」
「あ!逃げたぞ!」


三郎の顔が嬉々としているのは気のせいじゃないだろう。
部屋を飛び出したの行く先を真っ先に確認したのは、他の誰でもない。三郎だ。


!ちょ、ちょっとまて!!」
「か、可愛いとか意味わかんない!ぎゃー!!」


ばっと、久々知と雷蔵の方を見つめる竹谷に、やれやれと雷蔵がため息をついた。
また、今日も昼ご飯は遅くなりそうだ。




















5年ぎゃいぎゃいダイスキ