想い寄せ























なんてことない、鳩の死骸だった。
森の中を歩いているときにたまたま見つけたそれ。
もうすっかりこと切れているはずのそれの瞳は、まるで椎の実の様にきらきらしていた。
ただ、風が吹いて上からの光が入らなくなると濁った色になった。
乾燥した赤がちぎれた翼にこびりついて、白い羽が黒ずんでしまっている。
きっと、自分よりも大きい動物に捕食されてしまったのだろう。
弱ければ死ぬしかない。
何の感情もなく、私はそれを蹴った。


「あ」


思った以上に重かったそれはあまり動かずに、まだ私の足元にあった。


「おい」


咎めるような声が後ろから飛んできたが、振り返ることもなく、まじまじとそれを見つめていた。
すると、軽いため息が聞こえて彼が近付いてきた。


「はち……なにしてるの?」


竹谷は両手でそっとごわごわと汚れたそれを包み込むと持ち上げた。
何をしているのだろう。
まったくもって理解できない。
竹谷はそれを近くの木の根元まで持っていくと、まるで労わるかのようにそれを地面に下ろした。
そして、そのまま両手で土を掻く。
真新しい土のにおいが、鼻につく。


「ねえ、なにしてるの?」


私は竹谷の後ろ姿をただ、見て疑問を投げかけるだけ。


「きっと、山犬とか猫とかが獲ったんだよ。どうして埋めるの」


黙々と手を動かすばかりの竹谷。
ああ、もしかしたら彼は怒ってるのかもしれない。私が蹴ったから。
そうすると、急に不安になってくる。
竹谷、怒ってるのかな。


「ね、怒ってる」
「……怒ってねーよ」


穏やかな声だった。
それでも、不安で、竹谷の隣に私も膝をついてしゃがみこむ。


「ねえ、どうして埋めるの」
「うん……どうしてだろうな」
「それ、置いておいたらきっと他の動物が食べるよ」
「食べちゃうだろうな」
「それ、埋めちゃって、他の動物がおなかすかせて死んじゃうかもよ」
「そうしたら」
「そうしたら?」
「また、俺はそいつを埋めてやるんだろうな」


こうやってと、竹谷が掘り終わった穴の中に鳩の死骸を横たえて、静かに土をかぶせた。
みるみる穴の中に埋まってしまった。
横を見ると、間近に竹谷の横顔があった。
ひどく、悲しそうな顔だった。


「ねえ、はち」
「ん?」


触れた、頬は暖かった。きっと、さっきの死骸は冷たかっただろう。


「泣かないでよ」


竹谷は優しすぎるんだよ。
ねえ、そうでしょう?


「泣いてねーよ」


私の手をとって、いつもの様に笑顔を作る竹谷があんまりにも悲しそうだったから思わず口付けをした。
唇が離れると、竹谷はいつもの様に困ったように笑う。


「大丈夫だって」


頭に置かれたその大きな手が、こんなにも頼りないと思ったのはこの時ばかりだった。




















(なんてことはない。俺たちはいつ死地に赴いたっておかしくない)
(ただただ、お前が大切なんだ)












































意味不明ですね。
そして、名前変換なしですね。