どっちの弱点 他愛のない会話を繰り広げていると、そもそもどうしてこんな会話へと発展していたのかもわからないほどに、話の道は逸れて逸れて、どこまでも行ってしまう。 だからこそ、いい機会だと思ってしまったんだ。 「ねえ、三郎の弱点ってなに?」 「あー?私の弱点?」 「うん」 興味津々で頷くと、それはそれはめんどくさそうに三郎は目を細めた。 なんて奴だ。 あくまでも、付き合っている相手に対してするような顔とはいえない。 「……けち!」 「まだ、何も言ってないだろ?」 「三郎の顔、うわぁ、めんどくせぇ……って顔してる」 「ああ、よくわかったね!すごーい!!」 棒読みでほめられたところで、嬉しくも何ともない。 いい機会だと思ったのは、はずれだったようだ。 「じゃあ、別にもういいよ」 「えー、私のこと知りたくないのぉ?」 にやにやとした三日月の笑みを浮かべながら、三郎の両手が肩に触れた。 座ったまま真正面から見つめあっていると、変装の奥底にある三郎の瞳がきらりと光っていた。 ああ、だめだ。 そう思ったのも最期。 一番好きな、三郎の瞳に勝手に口が動き出す。 もっとも、興味を持っていたのも本当。 だから、これは私が欲した問いかけ。 「知りたい。三郎の、弱点教えて」 いつだって、余裕ぶってる三郎の弱みが知りたい。 強さは飽きるほど見せられたからさ、弱いところも教えてよ。 さっきから、ぴたりと張り付いていた悪戯を思いついた笑みがふっと消えた。 代わりに、柔らかいぞくぞくするような、三郎の笑顔が現れた。 掠れるほど、低く甘くささやかれた言葉に、痺れてしまう。 「にキスするとき」 「んっ」 リップ音をたてて、啄む口づけ。 「余裕も何もなくて、すごいドキドキする」 自然と、唇からこぼれる笑い声。 二人で、その声を重ねるように、唇を逢わせた。 「好きでしょうがないのが弱点」 同じ弱点を重ねるように、きつくきつく抱きしめられると、息も絶え絶えになってしまった。 終 きゅんきゅん |