衝動 私の曝け出した喉元は、無防備だろ? なあ、喰らいつてくれたっていいんだぜ? 「ぅあっ……はっ、」 胸に走る痛みに、顔をしかめて見降ろすとの頭がそこで揺れていた。 イヤらしい水音をぴちゃぴちゃとたてながら、私の胸を吸い上げたり、歯を立てたりしているその表情は、うっとりとしている。 敏感になった自分の体が、の与えてくる刺激に面白いほど反応してしまう。 体を反らせると、上で括られた両手へと縄が食い込みぎしりと音をたてた。 痛みと快感とが混じり合いながら、この身を苛む。 「さぶろぉ」 甘ったるく、笑みを浮かべながらも目がぎらついている。 ぞくりと、背筋に寒気が走った。 「……まさか、そんな程度か?」 「冗談」 口元をぬぐいながら立ちあがるを今度は、見上げる形になる。 体のどこかしらが、動かすたびにひどく傷む。 それなのに、これ以上を求めあう私たち。 突然、空を切る音がしたかと思うと、首が弾かれる。 痛みが訪れてから、頬を殴られたのだと気がついた。 じりっと、口の中に血の味が広がる。 「三郎、ね、楽しい?」 返事を求める癖に、頬を掴み上げてそのまま乱暴に口付けをする。 と私の舌の上で血の味が広がる。 段々興に乗ってきて、これほどでもかってくらいに、唯一自由の利く舌での弱い所を擦ると、甘く鼻から声が漏れるのが聞こえた。 いつからだ。私たちの関係がこんな風になってしまったのは。 は暴力をぶつけ、私は受け止める。 「」 たっぷりと間を持たせて、唇を名残惜しく離される刹那小さく、の名を呼ぶと泣きそうな顔をするんだ。 「愛してる」 一呼吸もおかずに、体を殴られ痛みに息を吐き出す。 だから、がどう思っていようと私はが好きだとは伝えられなかった。 降りそそぐ拳と、縄と、愛撫と、涙に、私はどうしようもなく切なくなった。 終 どうしようもないんだ。 |