計算しつくされた愛




























こんなに走っていても、息が切れないのは日頃の鍛錬のおかげか。
先ほどから見慣れた学園の風景が目まぐるしく、後ろへ後ろへと飛び去っていく。
そんな中、後ろを振り返って見ると必死の形相を浮かべたが追いかけてきている。


「さっぶろおおおお!!待ちなさいよー!!!」
「えー!待つわけないだろ!」
「じゃあ!止まれ!!!」
「止まったら…優しくしてくれる?」


一瞬、の顔が曇る。
それもそうだ、雷蔵の顔で、雷蔵の声色で言ったんだから。
だけど、すぐに元通りの表情になり眉間にしわが寄る。
ちょっと、セクシーな表情だよな。あれって。


「するわけないでしょ!今日こそ許さないから!!!」
「あーん!の意地悪!ちょっとぐらい借りたっていいだろ!!」
「い、いいわけないでしょ!!」


懐をぎゅうっと押さえる。
だんだん自分の体温が移りつつあるそれは………ちょっとの妄想を加えるだけでがたった今脱いでくれた物とさえ思えてしまう。
やば…は、鼻血が。


「と、ともかく早く返してよ!!!!」
「変なことしないから〜!のパンツ大事に扱うからー!」
「ぎゃああああ!!!!大声で、言うなっ!!!!!!」


ひゅうっと、風を切る音が耳元をかすめるが、さすがは私。
華麗によける。
そして、立てつづけに飛んでくる得物をよけながら目の端に、事前につけておいた目印が掠めた。
ぐんっと、を引き離すように走る速さを一気に上げると、慌てたは私を見失い様に追いかけることに必死になったのか、途端になにも飛んでこなくなった。
今から自分の仕掛けた罠が成功するのかと考えると、昂揚感で自然と足取りも軽くなる。


「それじゃあ、借りるからな!!!」
「ダメだって言ってるで…ぶわっ!!?」


びたん!と、盛大に大きな音が後方から聞こえてきて、走っている速さのまま方向転換を決める。
華麗にターンを決めた私の視界に入ったのは、見事に私が仕掛けた退き縄に引っ掛かって地面に顔面をぶつけたの姿。
そのまま、の元へと駈けよってが起き上がってしまう前に、その体の上に飛び込んだ。
と、言っても、が痛くないようにそっと…大胆に思いきり抱きついた。


「ぎゃああああ!!!?ちょ、ちょっと!さぶ・・・ろぉ!!?」
はやっわらかいなぁ〜〜〜…」
「や、やだ!ちょっと!背中撫でないで!」
「撫でてないもーん、顔を擦り擦りしてるんだもーん」
「も、もっとやめて!!」


じたじたと、暴れるの柔らかい肢体がむくむくと腕の中で動き回り、余計にその柔らかさを直接伝えてくる。
あったかい。
気持ちいい。
柔らかい。
いい匂い。
本当に…のこと、大好き。


「……〜」
「うー…さぶ、ろお!本当今度こそは、許さないんだからね!」

「も、もう一緒に、ご飯も食べてやらないんだから!」
「……
「一緒に宿題だって……お使いだって…」
、本当大好き」
「………」


の背にあてた耳からトクントクンと、の鼓動が頭蓋骨の中へと響き渡っていく。
私の中で時を刻むように、必要不可欠のこの鼓動。
早くなっても、遅くなっても、なんだっていい。の鼓動なら。


「そんなこと言っても、必ず私と一緒にご飯食べてくれたり、宿題やってくれたり、お使いわざわざついてきてくれたりするが……だぁいすき」
「…卑怯だよ、馬鹿三郎」


にんまりと微笑むと、真赤なのうなじと耳が見えた。


「もっと、私のこといっぱい追いかけてよ」
「……馬鹿」
































寂しがり屋の大好きな人。
すぐに調子に乗るから、困ったものです。