言の輪






























まさか、こんな目にあうと思ってなかったって顔をしているちゃんを上から見下すと、すがるような眼で僕のことを見上げてきた。


「らい、ぞ」


おびえた声すら愛おしいんだ。
両手で、そっと僕の目の前にひざまづくちゃんの首を包み込むとどくどくと血が流れる感触がこの手のひらに伝わってきた。
ああ、怖いんだね。
かわいそうに。
もっと、おびえて。


ちゃん、ちゃんは誰が好き?」
「ひぅ……ぐっ」
ちゃんは三郎が好きなの?あれは、私の顔だねぇ」
「ぎ……うっ」
「見た目がいいのなら、きっとちゃんは私が好きなんだろうね」


おっと、危ない。
あまりの可愛さに力が入りすぎて、いつの間にかちゃんの唇の端から唾液が垂れて私の手を汚していた。
そして、ちゃんの目は焦点を捉えずきりきりと不可解な動きをしていた。
そんな、壊れた感じが愛おしいんだよ。
もったいないけど、手を放してあげると、崩れ落ちるように地に伏したあと、間があいてからようやく激しくせき込み始めた。
ああ、僕の手で一瞬でも逝ってくれたんだと分かった。
べろりと、手についた彼女の唾液を舐め上げて手を清める。
ほんのわずかでも逃がしたくないと思っている僕は、相当おかしいのだろうか。
もしできることなら、ちゃんを殺して、砕いて全部食べてあげたい。
この体の中に置いておけば、余所見もしないし、どこかに行かないし、心も変わらないはずだろう?
だけど、こうして、触れ合いたいと思うからこそ、殺すことができない。


「死体は、硬いからね」


柔らかいちゃんが好きだよ。
温かいちゃんが好きだよ。
いい匂いのするちゃんが好きだよ。
涙が、味が、手ざわりが、今のままが好きだよ。
だから、手に入れたいけど手にはいらないんだ。


ちゃん、こっち見て?」
「うっ……はぁ……」


荒い息と、定まらない視界を苦心して僕を見上げてくれたちゃんのほっぺたを首にしたように優しく包み込む。
冷たいけど、すべやかなちゃんのほっぺたが、熱っぽい僕の手の体温とまじりあってそのまま溶け合っていきそうな気がした。


「ねえ、知ってる?みんなちゃんのことなんか嫌いなんだよ」
「うっ…やめ、て」
ちゃんそんなかわいくないし、素敵でもないし、うるさいし、うざいし、気持ち悪いし、みんな嫌いだって言ってるのに」
「や…め…」
「これで、私までちゃんのこと嫌いになったらちゃんは生きている意味もないね」
「っ!!」


にっこりとほほ笑んだ。


「生きてる価値もないのに、私がちゃんのことを見てあげてるからちゃんは生きててもいいんだよ?」
「ら、い……ぞ」


来世も前世もいらない。
現世で君だけが欲しい。


「だから、せいぜい私に嫌われないようにしないとね」
「き、き、嫌い……に、」
「なあに?」
「嫌いに、ならない……で」


だから、幾つもの輪をかけて縛ってあげよう。
私から離れられないように。


「いいよ。今はちゃんが好きだから」
























































病んでる。