知恵の輪 3




























絡んでしまって、そのまま解けなくて
ぎちりと、鉄の擦れる音がした








































しばらく、強く抱きしめられていたと思った後、不意に離れた三木ヱ門の体を追いかけて、は目を動かした。
緩やかに見えるその動きだけで、どうしてこんなにも切なくなるのかにはわからない。


「み、」


唇に押し当てられた指先に言葉を飲み込んだ。
何も言わずにいると、涙でぬれた目元を愛おしげに撫でられる。
苦しい。
苦しくて、仕方がない。





穏やかな声とは裏腹に、空を鋭く切る音がしたかと思うと、頬を痛みが打つ。


「あ」


その瞬間、がくりと、体の力が抜けた。


の、うそつき」


しゅるりと、三木ヱ門の手が乱暴に衣服を剥ごうとしているのもどうでもいい。
頬が、痛い。
痛い、痛い痛い痛い。


「そうやって、今までたくさん嘘ついて、私のこともだまそうとして、裏では滝夜叉丸と楽しくやってたんだろ?」


腹部にぞわぞわと感触を残しながら、動きまわる三木ヱ門の両手。


「それとも、こうして誰にでも触らせてるのか?」


つうっと、衣服の中を登る両手は、男の手をしていた。


「つぅっ、アッ!!」
「答えろよ」


瘧の様に震える体が、いうことを聞かない。
硬く、握りしめるマットだけがこの身を守る壁。
はたはたと、零れ落ちる涙をそのままに、は天井を仰ぐ。
もう、三木ヱ門の姿も見えない。


「はぁ、はぁ、はぁ」
「ぐっ、あぅ、アッ、はぁう」


眉間にしわがより、余計に零れていく涙。
円を描くように捏ねくりまわされ、徐々に膨らむ蕾。
じんじんと、痛みが広がる中を執拗に掻き廻す三木ヱ門の唇は、愉悦に歪んでいた。


「感じてんだろ?」


首筋にねっとりと這わされた舌に、背骨が震え立つ。


、キモチイイって言えよ」
「あ、あ、あ、あ」


眩暈が


ー!どこだー?」


まさに、この空気を打つかのような、不意に外から聞こえてきたのは、あまりにも聞きなれた声だった。


「……やっぱり」


三木ヱ門の双眸が暗い光をともして、を睨みつける。
足音は、迷うことなく「ここ」「へと近づいてくる。
は、なにもできない。
すると、さっきとは打って変わって三木ヱ門はに優しい愛撫を始めた。
じんじんと痛さを感じていた胸に、甘い痺れが広がる。


「あっ、わぅ、」
「呼べよ、滝夜叉丸を」


さっと青ざめるの顔を見降ろしながら、悠然と三木ヱ門は笑った。


「大好きなんだろ?あいつのこと」
「み、き」


息も詰まりそうなのにでてきた名前が、三木ヱ門の名前だったと言うのに白々しく通り過ぎただけだった。


ー!どこにい」
「……よぉ」
「っっ……」


硬く、噛みしめた唇が、じんじんと痛い。後ろを優越感に見た顔で振り返った三木ヱ門の、首筋を下から仰ぐことしかできない。
の両手はただ、動くことなく硬くマットを掴んでいた。


「……たむら、三木、えもん」
「なんだよ滝夜叉丸」
……」
「みな、いでぇ」


くにゅりと、指先が先端を挟みこんで刺激すると、の開いた口からはあられもない声が飛び出してしまった。


「うらやましいだろ?滝夜叉丸、お前のもんだと思ってたは、私のものだったってわけだ」
「……」
「ほら、みろよ。すっごい嬉しそうだろ?、私の指に感じてるんだよなー?」
「アッ、や、ぅ、ひぃやあああ!」


更に赤みが増したの頬。その両膝が三木ヱ門の下で、擦り合わされているのを滝は見詰めた。
そして、後ろ手に戸を閉めた。カタリと音を立てて棒が棒が咥えこまされた。
だれも、入れないように。


「三木ヱ門」
「……」


にたりと、滝夜叉丸の唇が歪んだ。


「その程度で、が満足しているとでも思ってるのか?」
「は?」


































後ろから三木ヱ門が抱え上げたの白い太ももがしっとりと汗ばみ、震えている。
肩口に顎を乗せて、覗き込んだ先では、滝夜叉丸の指が淫らな音を立てて蠢いている。


「あ、ぅ、や、ヤダぁぁ!!やめっ、う、ふぁ!!?」
「ここか?の気持ちいい所は」
、嘘だよな?私にしてもらった方がいいよな?」


浅く抜き差しを激しく繰り返されて、時折その指が曲げられる度に予測できない快感が秘部に生み出されてしまい、情けないくらいに声を上げて震える
だらだらと下の口から零れだす涎はいうことも聞かずに、滝夜叉丸の指を汚していく。


「う、あぅ、や、や、やぁぁ!」
「そうだよな?は私にされたいよな?」


ぐりぐりと、三木ヱ門は後ろからの腰に自分の股間を擦りつけ、主張する。そして、今さら甘く柔らかい口付けをの首筋に、頬に、耳に落としていった。
それにすら感じてしまい、は余計に体を跳ねさせる。


「なにを言っている、座学も……実技もナンバーワンの、この滝夜叉丸の愛撫に感じているに決まっているだろ?」


悠然と微笑みながら滝夜叉丸は己の袴を手早く脱ぐと、褌の脇から既に猛っている雄を取りだして突き立てた。
ぐずりと、重い音を立てて腰を進めるとは目を白黒させながら体を震わせた。
ぴったりと腰を押し付けると目の前に三木ヱ門の顔が来る。


「どうだ?私ので、が嬉しくて震えているのが解るだろ?」
「……ちがう!お前のでが喜ぶわけないだろう!?」
「あ、ひぃやぁ!?」


ぞわりとした感触。くすぐったいよりも、背筋が震える感触。
三木ヱ門の指が滝夜叉丸との結合部を滑り、そのまま後ろへ下がった。


、いいよな?私のだったら食べれるよな?」
「あ、や、め、くっあっ!?」
「ほら、これだけ濡れてればいけるよ」


だらだらと垂らし続ける愛液を絡めて、絡めて、三木ヱ門は自身の熱を宛がった。


「お前に出来るのか?」


滝夜叉丸の一言に、余裕の表情で三木ヱ門は笑った。


「私のをが欲しいんだってさ」
「ああああっ、ううぁうううううう・・・・・」


徐々に愛液を伴いながら腰を進めて、いく。


「くっ、あ、きっつ」
「あ!あ!やあああ!や!やああん!!!」
「……っ、は、すごい絞め、るな」


がっちりと暴れようとするの体を滝は押さえつける。


「は、ぁ……」


腰をぴったりと、の尻に押し当てる三木ヱ門。


「はは、動くぞ?」
「や、やぅあああ、あ、あ、ああ、」
、どうした?」
「い、痛い、のに、」
「なんだ?」


微かに滝夜叉丸が動くだけで、頭がおかしくなりそうだ。
後ろからの圧迫感と痛みが、異常なる快感へと変貌を遂げる。


「きもち、いい」


歓楽の、陥落の声だった。


「あっ、あ、あ、あ、」
「ふふっ、ふ、はは、はは」
「あぅ、くぁっ、う…


滝夜叉丸と、三木ヱ門も互いに動くたびにの体内を蠢く互いを感じ、狭さときつさを増した悦びが体を蕩かせる。


「お互いの擦りつけているようだな」
「きっしょく悪い」
「同感だ」


ぎらりと三木ヱ門は滝夜叉丸を睨みつけ、腰を打ちつける早さを上げた。
同じように滝夜叉丸も堪え切れず腰を激しく打ち付ける。


「あああ!!も、や、ああ、お、おかし、く、なるっ!!!」
「私も、イク…」
「く、あっ」


甘ったるい声を上げながら、三木ヱ門はの中へと精をびゅるびゅると放った。
絞り取られるようにきつく吸い上げられるような感触に、眩暈さえ感じそうだ。
滝夜叉丸も、びくびくと自身を震わせながら達した。
熱い熱が前から後ろから放たれ、頭がおかしくなりそうなくらいに気持ちいい。
真っ白に体が飛んでいく。
あるのは、狂った快楽だけだ。

















気を失ったの体がマットの上に横たえられている。


「今度は、私が前だ」
「好きにしろ」
「私が、一番なんだの、一番なんだ」
「………」


無言のまま、滝夜叉丸は迷うことなく棚にしまわれている縄を取りだした。
おかしくなってしまうほど、病みつきにしてやろう。
そうすれば、は私のものだ。
私の物。


「「、愛してる」」

























解けない。解きたくない。
そう思うほどに、狂わせろ。